陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

大学女子駅伝界のアーティスト集団・大阪芸術大学 2年越しの富士山への想い!

陸上と芸術の二刀流・大阪芸術大学女子駅伝部の皆さんにお話を伺いました※感染症対策を行った上、撮影時のみマスクを外しています

今回の「M高史の陸上まるかじり」は大阪芸術大学女子駅伝部のお話です。デザイン、工芸、写真、舞台芸術などを学びながら競技にも取り組む「陸上と芸術の二刀流」、大学女子駅伝界のアーティスト集団です。

小出義雄監督のDNAを受け継ぐ中瀬監督

大阪芸大女子駅伝部を指導されているのは中瀬洋一監督。市立船橋高校では恩師・小出義雄監督のご指導のもと、都大路優勝を経験。専修大学で箱根駅伝を走り、社会人経験を経て、小出義雄監督や鈴木秀夫監督のもとで実業団のコーチも経験。高橋尚子さん、渋井陽子さんといった日本を代表し世界に誇るアスリートにコーチとして携わり、超一流の現場を肌で実感されてきました。

2008年10月に大阪芸術大学女子駅伝部の監督に就任。最初は陸上未経験だった部員3名からスタート。そこから地道にコツコツ強化を進めていき、杜の都駅伝、富士山女子駅伝の常連校と変貌をとげていきました。

小出監督の指導を間近で見てきた中瀬監督は、選手の細かな仕草や表情から練習メニューを微調整しています。

小出監督のDNAを受け継ぐ中瀬洋一監督。おもてなし精神に溢れ、気配り心配りに感動です!

富士山女子駅伝には特別な思いがあります。昨年、チーム関係者に新型コロナ感染により出場を辞退することに。「昨年は富士山女子駅伝に出場できず、名城大学さんはうちの校章をユニホームにつけて走ってくださいました。名城大学の米田(勝朗)監督とは同級生で、今年は名城大学の夏合宿にも参加させていただいたんです」。選手たちは名城大学の強さを肌で実感したそうです。

「名城大学さんは与えられた練習メニューでは終わらないんですよ。朝練からプラスアルファで走っていましたね」。その後、選手たちの意識、行動にも変化が。練習でも自ら追加して走る選手がでてきました。

6年連続9回目の出場となった杜の都駅伝では11位。目標としていた8位入賞はならなかったものの、チーム最高記録となるタイムをマークしました。富士山女子駅伝の出場権となる12位以内にも入りました(12位以内に入れなかったチームは、5000m上位7名の記録順で10チーム選考されます)。

個性派揃い!選手インタビュー!

選手の皆さんにもお話を伺いました。

主将・古賀華実(こがはなみ)選手(3年、山梨学院)

3年生で主将を務める古賀選手。杜の都では最長区間5区を走りました

主将の古賀選手は初等芸術教育学科の3年生。小学校教諭、幼稚園教諭の資格取得の勉強をしています。「陸上を始めた小学校の頃の先生との出会いから、好きなことをやらせてあげられる先生になりたいと思いました。初等教育の勉強は、主将としてチームをまとめるのにもつながっています」と大学の学びがチーム運営にも生かされています。

「昨年、富士山に出られなかったことでチーム全体が落ち込んでいた時期もありましたが、名城大学さんとの合同合宿で変わりましたね。メニューにプラスアルファしたり、補強もイチから見直しました。お互い切磋琢磨(せっさたくま)して競い合える関係ですね」

杜の都では最長区間となる5区を区間13位で走りきった古賀選手。「昨年の杜の都では繰り上げスタートで白襷(たすき)だったので、今年は繋(つな)げる嬉(うれ)しさがありました。富士山に向けては8位入賞を目指して全員で戦いたいですね!」。主将としてチームを引っ張ります。

城谷桜子(しろたにさくらこ)選手(4年、島原)

高校時代3000m10分を切れなかった城谷選手ですが、大学4年目には全国の舞台で入賞するまでに急成長!

高校時代は3000m10分01秒と、チーム内でも力がないところからのスタートとなりました。3年生から4年生にかけて一気に力を伸ばし、今年の日本学生個人選手権1500mで6位入賞! 杜の都にも初めて出場しました。迎えた杜の都では2区を走り区間11位。「緊張で全く覚えていないんです。レース終わって映像見て走っていたんだと思いましたね(笑)」。初の全国の舞台で緊張感も経験しました。

放送学科の城谷選手。メディアの勉強をしていて、卒業後は新聞社に就職します。「文章を書いたり、ラジオ実習や中継車を使った実習もありました! 競技の経験を活(い)かして陸上選手の取材もしてみたいですね!」。競技は大学まで。富士山で有終の美を飾ります!

北川星瑠(きたがわひかる)選手(2年、比叡山) 

自称・日本で唯一ミュージカルを学ぶ長距離選手こと北川星瑠選手

専門的な学科の勉強や個性的な選手が多い大阪芸術大学女子駅伝部ですが、舞台芸術学科でミュージカルを学びながら走り続けている北川選手は、メディアや駅伝ファンの皆さんの間でも注目を集めています。授業ではヴォーカル、ダンス、演技などを学び、将来は女優やタレントの道も考えています。

杜の都では1区で区間7位。「区間賞を狙っていましたし、区間5位以内では走りたいと思っていました。ペースが遅く前に出ようと思ったのですが、駅伝なので失敗できない、迷惑をかけられないと思い迷いましたね。個人としては先頭が見える位置で最低ラインの走りだったと思います」

競技にも全力、将来も見据えて動画アプリを活用したライブ配信などにも積極的。「応援されていることが頑張りにもつながっています。やりたいことに挑戦できるのも大阪芸大の魅力ですね!」とモチベーションにもなっています。

北川選手(一番右)は舞台芸術学科でヴォーカル、ダンス、演技などを学んでいます。(写真提供:北川星瑠選手)

5000mのベストは15分53秒31。11月の記録会では最初の1000mは3分18秒というスローペースから後半ビルドアップして15分59秒70と自己ベストに迫る走り、中瀬監督も太鼓判を押します。富士山に向けては「チームとして8位以内が目標です!2区で区間賞を取りたいです!」と力強く話されました!

古原夏音(こはらなつね)選手(2年、四国学院大学香川西)

安定感が強みの古原選手。杜の都ではアンカーで2つ順位を押し上げる区間6位の好走

工芸学科でテキスタイル染色コースを専攻している古原選手。布や繊維を染めて、表現する作品を作っています。「課題は大変ですが、やりがいも感じています!」。将来はオシャレな服を作ってみたいというヴィジョンも描いています。

杜の都駅伝ではアンカー6区を務め、区間6位の走りで13位から11位に2つ順位を押し上げました。「緊張せず、楽しんで走れました! 富士山でも後半ゾーンに入っていたら飛ばしていきたいですね。安定したペースを刻める走りが持ち味です」。工芸学科で個性を表現した作品づくりのように、駅伝でも安定感という強みを表現する古原選手の存在はチームにとっても心強いですね!

そして、ここではご紹介しきれませんでしたが、陸上と芸術を両立して現状打破していて、皆さんとても個性的。

杜の都駅伝で5区を走った宮永光唯選手の作品です(写真提供:宮永光唯選手)

デザイン学科の中谷妃菜乃選手(1年、姫路商業)、菊地結香選手(1年、旭川龍谷)は練習前に授業で取り組んでいる作品の写真を見せてくださいました。デザイン学科の先輩でもあり杜の都駅伝では3区を走った宮永光唯選手(4年、豊川)のように、同じ学科で学び競技でも結果を出している先輩の存在は後輩のお二人にとって心強いですね。

1年生の中谷妃菜乃選手の作品です(写真提供:中谷妃菜乃選手)
1年生の野中和佳菜選手の作品です。アイデアも斬新で欲しくなっちゃいますよね(笑)(写真提供:野中和佳菜選手)

富士山女子駅伝では昨年の分まで思いを込めて襷をつなぐ、大阪芸術大学女子駅伝部の皆さんの走りに注目です!

M高史の陸上まるかじり

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