陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

特集:第98回箱根駅伝

箱根駅伝6年連続50回目出場の国士舘大学 上級生中心にシード権獲得に挑む!

国士舘大にとって節目となる50回目の出場でシード権獲得に挑みます!(写真提供:国士舘大学陸上競技部)※提供写真以外、M高史撮影

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、箱根駅伝予選会をボーダーラインの10位で通過し、6年連続50回目の本戦出場を決めた国士舘大学の皆さんに取材させていただきました。

添田監督に聞いた今年のチーム状況

コロナ禍の影響で昨年に続いて自衛隊駐屯地の周回コース、無観客、声を出しての応援・指示が禁止という中で行われた箱根駅伝予選会。昨年は絶好のコンディションで好記録が続出しましたが、今年は風もあり明暗が分かれました。

「レース前は3位通過が目標」というくらいチームの仕上がりも上々でした!(写真提供:国士舘大学陸上競技部)

前半から10km地点までは3位に位置していた国士舘大学でしたが、15kmで8位、20kmで10位と終盤に順位を落とし、ボーダーラインギリギリとなる10位で本戦出場を決めました。

レース前、予選会では3位を目標にしていたという添田正美監督。「予選会に向けて強いチームができていました。予選会は突破するだけでなくある程度勝負しようと1年間やってきました。(予選会当日)風が強く、攻めに行ったのが裏目に出ましたね。終わった時は落ちたかもと思ったくらいでした」。走る戦略は選手に任せていた部分もあったそうです。

「やはり走るのは選手なので、こちらから一方的に言うのではなく、学生の感覚を大切にしたいと思っています。2年前の予選会でも『国士舘が落ちるのでは』と言われていた中で、暑さを考慮して選手たちが設定タイムよりもペースを落としてレースを進めた結果、(後半に順位を上げて)通過することができました。ただ、いま思えば前半抑えていくように言っておけばよかったかなと思います」

国士舘大学OBで福島県出身の添田正美監督。箱根に向けて4年生を中心にシード権獲得に挑みます

大学駅伝界には福島県出身の指導者の方が多いですが、添田監督も福島県出身。さらに、同じ福島県出身の同期が東洋大学・酒井俊幸監督、そして駒澤大学・藤田敦史ヘッドコーチです。

国士舘大学OBでもある添田監督。「(添田監督の学生時代)当時の国士舘大学にはエースクラスはいましたが選手層が薄く、ずっと箱根に出られない時期でした。(指導者となってからは)チームの底上げですね。みんなでまとまってやる練習を大切にしています」。長距離部員80名という大所帯。グループ分けもしながら、指導にあたられています。

長距離部員だけでも80名という大所帯!にぎやかですね!(写真提供:国士舘大学陸上競技部)

箱根に向けては「4年生中心のチームです。山下りにも自信がありますね」と添田監督。予選会チームトップで個人4位のライモイ・ヴィンセント選手(4年、ケニア・モチョンゴイ)、チーム2位で個人30位の荻原陸斗選手(4年、西武台千葉)、チーム3位で個人41位に入った主将の木榑杏祐選手(4年、沼田)、11月23日の10000m記録挑戦競技会で28分50秒63と自己記録を大きく更新した清水拓斗選手(4年、長野日大)を中心に往路から注目です!

留学生から指導者の道へ!ムワンギコーチ

添田監督を支えるのは、小川博之助監督とジェームス・ムワンギコーチです。ムワンギコーチは青森山田高校から実業団NTNで活躍し、日本語もとても流暢。日本人選手はもちろん、ヴィンセント選手の指導にもあたられています。

高校、実業団と日本で過ごし、日本語もとても流暢。指導への面白さを感じるというムワンギコーチ

「指導するのは面白いです。(選手たちが)プログレス、ステップアップしていくのが好きです」とコーチとしてのやりがいを語られたムワンギコーチ。ヴィンセント選手には「最後の年なので、区間新や区間賞を期待しています。ラスト5km、一番キツい所にも注目してほしいです」とチームの大黒柱に期待を寄せます。

国士舘大学をけん引する4年生

選手の皆さんにもお話を伺いました。

まずはライモイ・ヴィンセント選手。添田監督が「気の利く日本人みたいなケニア人。性格も良くて、人柄の良さがでています」と評するほど優しい人柄です。

過去3度走った箱根駅伝2区は「アップダウンのコースですが、ケニアもアップダウンがあるので大丈夫です。箱根駅伝ではベストを尽くします。区間賞とりたいです」と力強く語られました。ハーフマラソンの自己ベストは59分51秒と、現役学生選手の中で唯一1時間切りを達成しています。
※日本学生記録(留学生も含む)はメクボ・モグス選手(当時:山梨学院大学)の59分48秒。

他の部員同様に寮生活を送り、好きな日本の食べ物は「鮭!」とヴィンセント選手。トラックよりロードが得意で、将来はマラソンで活躍していきたいそうです!

箱根駅伝では3年連続2区を務めたヴィンセント選手。ラストイヤーへの意気込みも伝わってきました!

続いて、主将の木榑杏祐選手。沼田高校時代は5000m15分27秒がベストでしたが、大学に入ってから急成長。今季、5000mで2度、10000mでは3度も自己ベストを更新。5000mでは14分08秒07、10000mでは28分52秒76をマーク。

今年の箱根予選会で3位以内を目指していましたが、終盤にチームは順位を落とし、フィニッシュ直後には「これは落ちたかも」と内心はヒヤヒヤしながらも「信じて待つしかない」と主将として仲間を鼓舞していたそうです。

10位での通過を聞いて「ホッとしましたが、素直に喜べなかったですね。ただ、厳しい戦いでしたが、逆にチャンスだと思っています。予選会後は『どんな天候でも力を出し切る』ということがチームの共通認識となっています。シード校とそこまで大差はないと思うので、シード権獲得に向けて攻めていく気持ちで、より一丸となって前進していきたいですね」と主将として言葉でも走りでもチームを引っ張ります。

右が主将の木榑杏祐選手、左が荻原陸斗選手。4年生がチームをけん引します

そして、予選会でチーム内ではヴィンセント選手に次いで2番目となった荻原陸斗選手。「設定通りに最初の5kmを入ったら、日本人先頭集団で走っていました。風が強くて前も思ったより上がっていなかったですね。(途中の順位を知らされて)自分の走りに集中するだけ、やるべきことをやるだけと思っていました」とプレッシャーのかかる状況も自身の走りに徹して、チームに貢献する力走をみせました。

箱根へ向けては「過去2回出場していてチームにあまり貢献できていないので、4年生として役割をしっかり果たしたいですね!」。粘りの走りをしたいと意気込みます。

80名の大所帯を支えるマネージャーさん

チームを支える存在として、11人のマネージャーさんがいます。女子マネージャーは長らく不在でしたが、小林美沙輝さん(4年、海老名)がその扉を開きました。高校時代は400mハードルを専門にしていた小林さんですが、直訴して陸上競技部長距離のマネージャーに。チームにとっては数年ぶりの女子マネージャーとなりました。小林さんの後に続いて今では後輩の女子マネージャーも増えてきました。

マネージャーの役割として選手のサポートはもちろん、小林さんはSNSも担当しています。「Twitterのフォロワーさんも2000人くらいだったのが5000人以上になりました。大会結果も見やすいように心がけています」ときめ細かく気を配られています。

ギリギリ10位通過となった箱根予選会。「(箱根出場が決まって)涙が止まらなかったですね」とふりかえります。毎年、出場選手に手紙を1人1人書くという小林さん。マネージャーさんたちの想(おも)いものせて、選手の皆さんは襷(たすき)をつないでいくんですね!

80名の選手を支えるマネージャーさんたち。小林美沙輝さん(後列左から2番目)に続いて女子マネージャーも入部するようになってきました

さらに、国士舘大学の男子マネージャーの皆さんは空いている時間帯を見つけて走っているそうです。選手として入ってきたものの、上級生に上がるときに学年ミーティングで2〜3人は覚悟を決めて、マネージャーに転向しているんです。

マネージャー転向後も時間を見つけては走る。添田監督に伺ったところ「チームの底上げのために走ってくれていますね。例えば、5000mで15分かかっている選手に3000mまで8分50秒で引っ張ってほしいとかですね。あとは、インカレの1500mの前にはスピードタイプのマネージャーに600mまで引っ張ってもらったりですね。マネージャーもタイムをとっているだけではなくて走りでチームに刺激を与えられて貢献していると実感できるのかもしれないですね」

マネージャーさんたちも空いている時間に練習したり、選手の引っ張りなどで現状打破しています!(写真提供:国士舘大学陸上競技部)

ちなみに、国士舘大学の800mの大学記録は昨年卒業されたマネージャーの水谷友哉さんがマークした1分50秒67です。また2018年にはマネージャーだった大川隼平さんが1500mで3分46秒87、日本インカレ6位、箱根駅伝もエントリーメンバー入り! 選手だけでなく伝統的にマネージャーさんも現状打破し続けています!

予選会ではボーダーラインとなる10位通過でしたが、国士舘大学にとって50回目となる節目の箱根本戦! シード権獲得に向けて、チーム一丸となって挑みます!

M高史の陸上まるかじり

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