陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

陸上も英語も現状打破! 関西外大が富士山女子駅伝に挑む!

富士山女子駅伝では8位入賞を目指す関西外大女子駅伝部に伺ってきました(※感染症対策の上、撮影時のみマスクを外しております)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は関西外国語大学女子駅伝部のお話です。陸上にも語学の勉強にも打ち込む関西外大女子駅伝部。以前「M高史の走ってみました」でも取材させていただきました。全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)では13位。12月30日の富士山女子駅伝では8位以内を目指しています。

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杜の都で入賞目標も悔しい結果

今シーズンのチームでは、エースの西出優月(にしで・ゆず)選手(4年、大塚)が日本学生個人選手権3000mSCで自身初の全国制覇。1500mでも3位に入りました。3月の日本学生女子ハーフマラソンでは強風が吹き荒れる中、矢尾桃子選手(3年、北陸)が大健闘を見せ4位入賞。

杜の都駅伝では8位入賞を目標にしていただけに、13位で悔しい結果となりました。富士山女子駅伝の出場権は杜の都12位までのチームがまず獲得。それ以外のチームは5000m上位7名の合計タイム10チームが選ばれます。

今年の杜の都駅伝では13位。富士山女子駅伝では8位入賞を目指しています(写真提供:関西外国語大学区女子駅伝部)

12月4日の日体大長距離競技会5000mでは西出選手が自身初の15分台となる15分58秒09の自己新。翌日の京都陸協記録会では前日自己新を出したばかりの西出選手がチームメートのペースメイクを買ってでて、多くの選手が自己新をマーク。チームも富士山女子駅伝出場を決めました。

昨年の富士山では最長区間(10.5km)の5区で西出選手が各校のエースを相手に区間8位と健闘、アンカー7区で矢尾選手が区間5位の好走で4人抜きを演じ、後半3区間で巻き返しての10位となりました。今年は杜の都で果たせなかった8位入賞を目指しています。

富士山を前に、それぞれの選手の思い

選手の皆さんにもお話を伺いました。

西出優月選手(4年、大塚)

3000mSC関西学生記録保持者(9分55秒01)でもある西出選手。今シーズンは日本学生記録をずっと目標にしていたそうですが「4月の織田記念で転倒してからは恐怖心があったり、調子も合わせられなかったですね。日本学生個人選手権は(3000mSCで)優勝しましたが、1500mで3位の悔しさもあったので頑張ることができました」と悔しさも残るトラックシーズンに。

3000mSC関西学生記録保持者・西出優月さんが描く世界への挑戦!
3000mSCを中心に活躍をみせるエースの西出優月選手。12月の記録会では5000mでも15分台をマーク

そして迎えた駅伝シーズン。「関西学生女子駅伝では思うような走りができず、みんなに助けてもらったので、杜の都では1区でチームにいい流れを作ろうと思いました。スタートラインに立った時は自信を持ってのぞめました。かなりスローペースで、足があたったりとかもありましたが、とにかく粘って粘ってラストスパートは1500mのスピードを活(い)かせると思っていました。レース後、動画を見たらもうちょっといけたかなと思いましたが(笑)」。チームとしては関西外大最高タイムをマークするも、目標はシード権獲得だったので全員が悔しい思いだったといいます。

富士山女子駅伝に向けては「8位以内を目指しています。昨年は前半でいい流れを作れなかったので、今年は前半からいい流れでいきたいです。個人としては昨年、最長区間の5区だったので今年も同じ区間でいきたいです。昨年は目標としたペースでいけなかったので今年は区間上位でいきたいですね。少しずつ距離も伸ばしてこれているのであと1カ月しっかり仕上げていきたいです!」 

今年の日本学生個人選手権では3000mSCで全国初タイトルを獲得しました(写真提供:関西外国語大学区女子駅伝部)

実業団でも競技を続ける西出選手。「3000mSCで世界を目指したいと思っているので、周りに影響されずにしっかりと合わせる時に合わせられるような、世界の舞台でも力を発揮できるような選手になりたいですね!」。競技の面ではもちろん、関西外大で学んだ英語力も海外遠征で大いに活かされそうですね!

矢尾桃子選手(3年、北陸)

日本学生女子ハーフで4位と大健闘した矢尾選手ですが、春先からけがの影響でインカレ、個人選手権などには出場できませんでした。夏合宿も1年前と比べると思うように消化できなかったようです。それでも「4年生の先輩方を追いかけてここまでやってこれました。これからある駅伝は全部が先輩方との最後の駅伝になるので、駅伝にしっかり合わせて、チームに貢献したいと思い、けがで辛(つら)い時期も毎日現状打破できました!」。チームメートや先輩たちへの熱い想いでけがから復活し、9月の関西学生女子駅伝ではチーム初となる区間賞を獲得。

前回の富士山では7区で4人抜きの好走。タフなコンディションにも強い矢尾桃子選手

「全国で戦うにはまだまだ力不足」としっかり走り込んで迎えた杜の都では、最長区間(9.2km)となる5区を任されました。5区では拓殖大学のスーパールーキー不破聖衣来選手(1年、健大高崎)とほぼ同じタイミングで(拓大が関西外大の1秒前)で襷(たすき)をもらう展開に!

「不破さんは速すぎてあっという間に見えなくなりました(笑)。それでも焦らずに自分のペースで冷静に刻んでいきました」とエースが集う5区を区間10位で乗り切りました。

富士山では昨年に続いて7区アンカーを希望しています。山本泰明監督によると「上り坂、向かい風、長い距離に強い」とのこと。矢尾選手も「日本学生女子ハーフでも暴風だったから4位になれたんですよ(笑)」と悪条件やスタミナ勝負になればなるほど強さを発揮する矢尾選手。

昨年の富士山女子駅伝では7区で4人抜きの快走。上りへの強さを披露しました(写真提供:日本学生陸上競技連合)

実は中学時代にトライアスロンで全国大会にも出場。体幹の強さやスタミナも培われたのかもしれません。高校時代のベストは3000m10分03秒でしたが、大学に入ってからメキメキと力をつけてきました。「みんな明るくて楽しくて関西外大女子駅伝部が大好き!」という矢尾選手。7区の名物・高低差169mの「魔の坂」も力強く駆け上っていきそうですね!

三輪南菜子選手(1年、錦城学園)

高校時代5000m16分05秒63をマークしていた三輪選手ですが、高校3年の2月からずっとけがに悩まされていました。入学してからもけがが治らず「7月の1カ月間だけポイント練習に入ったのですが、またけがの繰り返しでした。それが本当に悔しかったですね。9月中旬からようやく走れるようになりました。けがで悔しくて、絶対結果を出したいと思えることで目標をしっかり持つことができ、陸上に真剣に正面から向き合えるようになったんです。けがをして良かったとは思っていないですが、プラスに捉えることができました」

「絶対に強くなる!」という三輪南菜子選手。富士山でも注目の選手です!

関西外大に入ったのも駅伝で力になりたかったからという、熱い駅伝への想(おも)いから。杜の都では「練習も積めていなくて不安でしたし、緊張していましたがチームメイトの優しい言葉に救われました。(3区を走った山岸)みなみ先輩が(中継所で)見えたときは今までにないくらい興奮しましたし、(5区の矢尾)桃子先輩が見えた時は嬉(うれ)しかったです」

杜の都が大きな転機となりました。「富士山ではチームで入賞したいと思いましたし、初めてレースを楽しむことができました。杜の都は自分の陸上人生において大きかったです」。杜の都では4区・区間6位で4人抜きを演じながらも悔しいと語る三輪選手。

「絶対に強くなります! 上級生になる頃には入賞はもちろん、上位争いできるようなチームになりたいです」と1年生ながら強い覚悟と決意が伝わってきました。

山本泰明監督の想い

関西外大女子駅伝部を指導されているのは山本泰明監督。筑波大学で箱根駅伝に出場し、実業団時代はマラソン2時間10分44秒。監督をしている現在でも走られていて、時には選手を引っ張ったり、タイムトライアルで一緒に走ることも。

選手の皆さん、卒業生の皆さんも「優しい」と口を揃える山本監督。穏やかで優しさ溢(あふ)れる中にも、選手たちを想う気持ちは熱い方です。

山本泰明監督。選手の自主性を大切にし、将来も考えて指導されています

競技の面では卒業後の競技継続のあるなしで、微調整しながら指導されているそうです。例えば西出優月選手のように実業団でも競技を続ける選手は、伸びしろを残して実業団でも伸びるように指導をしています。「西出も実力的には15分中盤くらいも狙えたのかもしれませんが、そこまで記録を追い求めませんでした。逆に大学で競技をやめる選手は、在学中に納得いく結果を出させてあげたいですね」

普段は明るく元気でにぎやか!練習では真剣に!関西外大女子駅伝部の魅力です!(写真提供:関西外国語大学区女子駅伝部)

関西外大はこのコロナ禍で2年ほどは行くことができていませんが、例年、選手たちの多くが留学も経験します。「駅伝の強化、チームのことだけを考えると選手たちが数カ月チームを離れるのは痛いのですが、留学を経験して視野も広がりますし、人間的にも成長できます。社会に出た時に出た時に役立ちますし、人生を豊かにしますからね」

競技だけではなく社会人になってからも羽ばたいてほしいという思いもあって「関西外大まるっと図鑑」という選手同士がお互いにインタビューをするという取り組みも行いました。

選手同士がインタビューし合うことで、お互いに再発見もあり、チームワークもさらに深まりました(写真提供:関西外国語大学区女子駅伝部)

競技も学業も現状打破し続ける関西外大女子駅伝部の皆さん、まずは12月30日にせまった富士山女子駅伝での走りに注目ですね!

M高史の陸上まるかじり

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