陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

箱根駅伝優勝メンバーの岡田晃監督率いる亜細亜大学、富士山女子駅伝初出場!

富士山女子駅伝初出場を決めた亜細亜大学女子陸上競技部の皆さん(写真提供全て亜細亜大学女子陸上競技部)※感染症対策の上、撮影時、走行時のみマスクを外しております

今回の「M高史の陸上まるかじり」は富士山女子駅伝初出場を決めた亜細亜大学女子陸上競技部へ取材に伺ってきました。亜細亜大学は短大時代に第1回関東大学女子駅伝の優勝校となりましたが、2003年から休部。2018年に女子陸上競技部として始動し、今年で4年目になります。初めて4学年が揃った節目の年に富士山女子駅伝初出場を決めました。

箱根優勝メンバー・岡田監督の指導

指導されているのは岡田晃監督(37)。亜細亜大学OBで第82回箱根駅伝総合優勝のメンバーで、4年次は主将も務めました。実業団(日立電線、日立物流)で競技を続けて、現役引退後は亜細亜大学に戻り男子のコーチに。2018年に女子陸上競技部立ち上げとともに監督に就任し、今年で4年目になります。

亜細亜大の箱根駅伝優勝メンバーが母校の女子陸上部監督に!

監督就任当初はまだ部員も少なく、故障者もいて「ポイント練習に1人しかいないとか、朝練習で集団走をやろうにも2〜3人しかいないことも多かったです」ということも。当時、武蔵野キャンパスの近くに寮があり、小金井公園などを拠点にしていましたが、昨年11月に日の出キャンパス近くに寮も引っ越し。「以前は天候によって練習の変更もありましたが、今はトラックも自由に使えて練習のバリエーションも増えましたね」とふりかえります。

亜大OBの岡田晃監督。男子部のコーチを経て、2018年より女子の監督に。M高史とは同い年です

そして初めて4学年が揃った今年。「今年は富士山女子駅伝一本に照準を合わせていました」という岡田監督。杜の都駅伝に出場するには関東大学女子駅伝(今年はトラックでの選考会)を突破する必要がありますが、富士山女子駅伝には杜の都12位までのチームに加えて、それ以外の全国の大学で5000m7名の合計タイムの上位10チームが出場することができます。

「杜の都出場への関東枠が狭く熾烈だったので、今年は5000mのタイムで狙える富士山に照準を合わせてきました。実際に全員でコースや会場も下見しましたし、フィニッシュとなる富士総合運動公園でポイント練習も行い『今年の12月30日にはここで1年を締め括る』と約束しました。選手たちもイメージが湧きやすかったですね」。実際に現地に行くことで、選手たちのモチベーションも高まったといいます。

富士山女子駅伝初出場を決めるまで

7月の記録会で例年よりも記録が出たことにより「夏をうまく越えたら富士山に近づくと思ったので、けがをしないように丁寧に一人ひとり練習内容やボリュームを微調整しましたね」。岡田監督は手応えを感じつつ、故障者が出ないように細心の注意を払っていました。

静岡県の須走で行われた夏合宿では周辺の競技場が一時閉鎖になってしまい「ほぼ水ヶ塚公園のクロカンコースと宿舎前の坂ダッシュ」という練習。起伏を使って脚力も強化でき、9月に入ってからは例年以上に練習ができていました。「いつもなら1人くらいしかできない練習も7人くらいこなせたんです」と選手たちは確実に力をつけていました。

それでも「練習をやらせすぎないことですね。こちらが抑えるとみんなやろうとするので(笑)。1000mや400mをフリーにすると競走になってしまうので『落としていいから』と声をかけています。練習であまりフォームを崩してほしくないので、フォームを意識して最後まで走ってほしいですね」と岡田監督がペースを抑えるほど選手たちの意欲も高まっていきました。

また、岡田監督の妻・綾さん(旧姓:五十嶺さん)は大学・実業団で活躍された元長距離選手ということもあり、時々相談することもあるそうです。

玉川大学出身・五十嶺綾さん 関東インカレ連覇、駅伝を駆け抜け、引退後は栄養士に!

9月の関東大学女子駅伝は中止となり、トラックでの選考会が代わりに開催されました。亜細亜大学は2組目まで3位につける好走を見せ、結果的には6位となり、ボーダーラインとなった4位の中央大学まで11秒52(5000m6人の合計タイムのため1人あたり1.92秒)という粘りを見せました。

ボーダーラインは3秒差の明暗! 杜の都駅伝出場をかけた関東予選を取材しました!

杜の都駅伝が終わってからは、5000m7人の合計タイムの上位10校が富士山女子駅伝の出場権を得られるため、全国各地の記録会の情報が日々更新されていきました。

「杜の都で12位に入れなかったチームが急に記録会に出始めて、どんどん順位が変わってくるんです。一発勝負だとその日のコンディションで変わりますが、有効期限は今年の4月以降ですし、チーム力や層の厚さがでてきますね。自分たちがベストを出しても他の大学もベストを出してきて順位が抜かされるという、選手にとってもプレッシャーのかかる状況が続きました」

出場権獲得圏内ギリギリで迎えた12月4日の日体大長距離競技会。それまでチーム7番手の記録を持っていた広瀬はるか選手が、シーズンベスト17分09秒と、それまでの自己ベスト17分04秒も大きく上回る16分35秒33をマークします。チーム内でも2番目の記録となり、富士山女子駅伝出場権を掴む激走となりました。

富士山初出場の切符は、岡田監督の誕生日に最高のプレゼントとなりました!

主催者から富士山女子駅伝出場校の正式発表があった12月6日は岡田晃監督の誕生日。「昨年、部員たちから誕生日プレゼントをもらった時に『来年は富士山女子駅伝の出場権をお願いします』とリクエストをしていたのですが、本当に達成してくれて最高のプレゼントとなりました!」。亜細亜大学は平均16分42秒74で、10校中9番目で出場権を獲得。昨年よりも5000m平均で10秒も上がるほど激戦となったボーダーラインを突破しました。富士山初出場の切符は岡田監督への最高の誕生日プレゼントとなりました。

富士山に臨む選手たち

選手の皆さんにもお話を伺いました。

主将 石川美優選手(4年、学法石川)

「1年目から最上級生で頼れる先輩がいないのは初めての経験でしたし、苦労もありました。それでも同期と励まし合いながら、相談し合って、後輩たちとも仲良く続けてこられたのは楽しかったからですね! 主将として、練習面だけでなく一人ひとりとのコミュニケーションを大事にしていました。学年に関わらずみんなとたくさん話すように心がけてきました。富士山出場は嬉しいですが、4年生が思うように走れないメンバーが多くて後輩に頼ってしまいました。それでもこの4年間で初出場できたのは本当に良かったです」と同期や後輩に感謝する石川選手。

岡田監督も「下級生中心のチームではありますが、1期生である4年生が頑張って続けてきてくれました。1年ごとに持ちタイムの良い選手が入ってきて、プレッシャーもあったと思いますが、メンバー入りをかけて最後の最後まで4年生が頑張っている姿は本当に頭が下がります」と4年生への感謝を口にされました。

4年生の皆さん。写真右から田中優花選手、主将の石川美優選手、奥山優香選手、大島きらら選手、主務の横井さつきさん

広瀬はるか選手(3年、本庄第一)

「昨年12月に疲労骨折してしまい、春頃から走り始めて、けが明けは調子も良かったのですが、夏にまた痛みが出てしまいました」。9月に入っても調子が上がらず、関東選考会はメンバーに入れず。11月に入ってから「もうやるしかない!」とスイッチが入りました。

自己ベストを大きく更新し、富士山初出場に貢献した広瀬選手

迎えた12月4日の日体大長距離競技会では16分35秒33で大幅自己新。「自分が7番目のタイムだったので『絶対上げなきゃいけない』『いい流れを作ろう』と思って走りました。こんなに出るんだとびっくりしましたね。ずっと16分40秒で走りたいと思っていたので、やっと出せたという気持ちです。富士山に向けてしっかり練習して自信をつけて、初めてなので積極的に走りたいですね!」

金井美凪海(みなも)選手(2年、錦城学園)

11月の日体大長距離競技会で、5000mでチームトップとなる16分31秒74の自己ベストをマークした金井選手。

「関東選考会はチームとしては富士山への通過点という位置付けでしたが、個人的には狙えるんじゃないかと思っていました。自分が頑張らなきゃと思って走ってきたので、富士山出場が決まった時は嬉しかったですが、実感がなかったですね。富士山出場校の中ではまだ力は下の方だと思うので、繰り上げなくしっかり襷(たすき)をつなぎたいです。来年以降はギリギリ通過ではなく、もっと上を目指していきたいです。個人としては4年生までに日本インカレ出場、あわよくば5000m15分台も目指していきたいですね」。高校時代はなかなか駅伝の出番がなかったという金井選手ですが、亜細亜大学ではどんな駅伝力を魅せてくれるのでしょうか!

チーム最速タイムを持つ金井選手。日本インカレ出場も目標にしています

黒江彩聖(さき)選手(1年、学法石川)

「普段は笑顔で仲が良くて、練習では集中していてメリハリのあるチームです。入学してからも楽しくて、陸上をもっと好きになりました!」。関東選考会では1組目で8着と好スタートを切り、10月の東海大記録会では16分43秒60の自己新をマーク。

亜細亜大に入ってから陸上をもっと好きになったという黒江選手。高校2年次には都大路にも出場

高校2年次に都大路を経験。それ以来の全国規模の駅伝となる富士山女子駅伝に向けては「富士山ではチャレンジ精神を持って恐れずに積極的なレースをしたいです。来年以降はチームを引っ張っていきたいですし、周りを見て、悩んでいる選手にも声をかけられるような選手になりたいですね」

髙橋朱穂(しゅほ)選手(1年、本庄第一)

「オンとオフがしっかりしているチームですね。コツコツした地道な練習が多く、チームの支えや監督の励ましの言葉もあり、乗り越えてくることができました。中学・高校の恩師にも良い報告をしたくて頑張れました。関東選考会では3組目(最終組)で、一番大事なところを任されたのに応えることができませんでしたが、富士山に向けては自分らしい最後まであきらめない走りをしたいです。今後は、今まで自分が支えられてきたので常に周りを見て支えてあげられる選手になりたいです!」

亜細亜大入学後、コツコツと練習を積み重ねてきて力をつけてきた髙橋選手

黒江選手、髙橋選手には別々にお話を伺ったのですが、他の選手にも気を配れるような選手になりたいと共通してチームを思いやるコメントをいただきました。1年生とは思えない素晴らしい心構えですね!

マネージャーさんのお話

選手18名を支えるマネージャーのお二人にもお話を伺いました。

主務 横井さつきさん(4年、糸魚川)

最初は選手で入学も、1年生の秋以降プレイングマネージャーに。いったん休部期間を経て、2年生の秋からマネージャーに復帰しました。

「試合に向けた練習後の声かけでは全員になるべくポジティブな声かけを意識しています。例えば『今日めっちゃ動き良かったじゃん!』『前回より全然タイムいいんじゃない!』など一人ひとり変えています。富士山はせっかくの全国の舞台なので、物おじせず楽しんで積極的に走ってもらえたら幸せです! 亜細亜大は仲が良くて明るく元気ですが、岡田監督に似てみんな超真面目です(笑)。監督の良さが選手にも伝わっているんですよ!」と明るくチームを支えます。

マネージャー 白椛(しらかば)みずきさん(3年、不来方※こずかた)

高校まで陸上部だった白椛さんですが、亜細亜大学には一般入学。1年生の8月に同級生だった広瀬はるか選手、南舞鳥選手(現3年、仙台育英)と友人になり、マネージャー体験のため練習の見学に行ったのがきっかけでした。「緊張していましたが、終わった後に選手全員から『ありがとう』と感謝されたんです。こういうチームを支えたいと思いましたね」。そこからマネージャー生活がスタート。

「監督の考え方、練習の意図や計画性など選手一人ひとりが理解できているチームです。亜細亜大学女子陸上競技部でマネージャーしたい人も大募集です!」。SNSでもチームの魅力が伝わるように工夫して投稿をするのもマネージャーさんたちの大切な役目です。

選手18名を明るく支えるマネージャーの横井さん(右)、白椛さん(左)

また、亜細亜大OBで学生時代は主将を務め、関東学生連合チームで箱根駅伝出場も果たした田﨑聖良さん(2019年度卒業)が週末など母校に訪れて、女子部のペースメイクを務めるなど、さまざまな形で卒業生もチームを支えています。

週末のポイント練習では亜大OBの田﨑聖良さんがペースメイクを務めることも
あの歓喜よ再び!! 箱根を知る主将が亜細亜大を押し上げる

亜細亜大学女子陸上競技部のスローガンである『一人一躍』を掲げ、誰一人欠けず、速く・強く・心躍るような走りで初の富士山女子駅伝に挑みます!

M高史の陸上まるかじり

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