陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

ボーダーラインは3秒差の明暗! 杜の都駅伝出場をかけた関東予選を取材しました!

シード校を除いた4枚の切符をかけて16校がしのぎを削りました(写真提供:帝京科学大学女子駅伝チーム)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、杜の都駅伝(全日本大学女子駅伝)の関東地区からの出場権をかけた全日本大学女子駅伝対抗選手権大会関東学生陸上競技連盟推薦校選考会のお話です。

関東大学女子駅伝が中止、タイムレース選考に

9月25日(土)。会場となったのは相模原ギオンスタジアム。原当麻(はらたいま)駅からギオンスタジアムに向かう途中「山の神坂下」というなんとも駅伝に縁起の良さそうなバス停を過ぎ、競技場へ向かう坂道へと歩を進めます。

関東地区からは前年の全日本大学女子駅伝のシード校(上位8校)である大東文化大学、日本体育大学、城西大学の3校以外で、選考会上位4校までが杜の都駅伝に出場することができます。

全日本大学女子駅伝関東学連推薦校選考会の取材に伺ってきました!(提供記載のない写真はM高史撮影)

例年は関東大学女子駅伝として開催されていましたが、コロナ禍により駅伝は中止となり、昨年に続いて今年もトラックでの選考会となりました。無観客での開催。私、M高史は4years.より報道としてうかがうことになりました。応援に行きたかった選手のご家族や関係者・人数制限のため寮に残っていたチームメート・駅伝ファンの皆さんに少しでも当日の熱気がお届けできるように、そして、杜の都駅伝に向けてのエールとして少しでも弾みがつくように心を込めてレポートいたします。

勢いをつけるスタートの第1組

5000m3組。各校1組2名、合計6名の選手が出場し、合計タイムで順位を競います。男子の全日本大学駅伝の推薦校選考会は10000m、各校2名×4組、計8名の合計タイムで争うので、形式は似ていますね。

監督、コーチ、マネージャーも声かけができず、ホワイトボードでの指示、拍手でしか応援ができません。主催者による動画ライブ配信も始まり、静かに熱戦の火蓋が切られました。普段選手を指導されていて、選手の嬉(うれ)しかったことも辛さを乗り越えてきたことも見てきた監督、コーチ、マネージャーさん、きっと祈る思いでレースの行方を見守っていたことでしょう。

号砲を待つ第1組の選手の皆さん(写真提供:帝京科学大学女子駅伝チーム)

17時スタートとなった第1組。序盤から拓殖大学の山下花音選手(2年、佐賀清和)、梅木優子選手(2年、湘南台)が積極的に引っ張ります。3000mを10分02秒(以下、途中計時は手元の計測)で通過した後は中央大学の髙野美穂選手(1年、長野日大)がペースを上げます。ラスト勝負を制して16分46秒97で1着となったのは筑波大学・澤井柚葉選手(2年、星稜)。澤井選手は高校時代に国体少年共通800mで優勝経験のあるスピードランナー。2着は中大の髙野美穂選手で16分50秒40。3着は拓大の山下花音選手が16分51秒40で入りました。

第1組では13番の筑波大・澤井選手が1着。21番の中大・髙野選手が2着。1番の拓大・山下選手が3着となりました(写真提供:亜細亜大学女子陸上競技部)

1組終了時上位10校
1 拓殖大学 33分53秒76
2 東洋大学 33分57秒69
3 中央大学 33分58秒11
4 順天堂大学 34分05秒45
・・・・・・・・・・・・・・
5 亜細亜大学 34分13秒62
6 筑波大学 34分14秒18
7 玉川大学 34分33秒31
8 帝京科学大学 35分01秒81
9 東京農業大学 35分14秒50
10東京女子体育大学 35分54秒44

5000mということでそこまで大きな差がつかないこと、合計6人なのでミスがあった時に挽回するのも大変です。相当なプレッシャーの中で走られているんだなというのが伝わってきます。1位から6位まで約20秒の間にひしめき合う混戦模様の中、杜の都駅伝常連校である東京農業大学が9位と出遅れました。

順位も変動! 波乱の第2組

続く第2組では中大の大塚沙弥選手(4年、大宮)が積極的にレースを引っ張り、3分14秒で1000mを通過。1組もそうでしたが、牽制することなく積極的な走りをする選手が目立ちました。3000mを9分54秒で通過する頃には集団も縦長な展開に。この組では、1組で出遅れた東農大が力を発揮。実業団を経て大学生となった幸田萌選手(1年、東農大三〜埼玉医科大AC)が16分29秒31で1着。3着に坂口愛和選手(2年、錦城学園)が入り、東農大が順位を6位まで一気に上げてきました。

第2組は序盤から中大・大塚選手(腰ゼッケン4番)が積極的にレースを引っ張りました(写真提供:亜細亜大学女子陸上競技部)

1組に続いて好調の筑波大は高橋香澄選手(4年、福島)が16分43秒73で2着。筑波大は2組目を終えて2位に急浮上。2組目を終えてトップに立ったのは中大。この時点で2位筑波大に30秒差をつける展開でした。3位に上がってきたのは亜細亜大学。今年は富士山女子駅伝出場を目指してトラックの5000mに向けて強化してきたという亜大が、出場圏内まで浮上してきました。

拓殖大学は2組で伸びず、圏外の7位まで順位を落とすことに。最終組に日本インカレ5000m優勝のスーパールーキー不破聖衣来選手(1年、健大高崎)が控えているとはいえ、最後まで勝負はわからない展開になってきました。

コロナ禍により応援が禁止され、選手たちはスタッフが掲示するボードなど視覚からの情報を頼りにレースを進めます

2組目終了時上位10校
1 中央大学 1時間07分37秒45
2 筑波大学 1時間08分07秒78
3 亜細亜大学 1時間08分13秒23
4 東洋大学 1時間08分20秒87
・・・・・・・・・・・・・
5 順天堂大学 1時間08分22秒25
6 東京農業大学 1時間08分27秒87
7 拓殖大学 1時間08分40秒42
8 玉川大学 1時間08分50秒03
9 帝京科学大学 1時間10分09秒41
10 東京女子体育大学 1時間11分38秒10

この時点でボーダー争いはわずか1秒39の差。1秒をかけた杜の都への想いは最終3組へと受け継がれていきました。

勝負を決める運命の第3組

第3組では注目の不破選手が登場。スタート後からは最初の400mが79秒。1000mを3分19秒で通過。1000mを過ぎてから不破選手が一気に集団から抜け出しました。不破選手は3000mを9分53秒で通過。2位集団は10分04秒で続きました。この時点では11秒差でしたが、不破選手はそこからさらにビルドアップ。

1200m手前からのペースアップで不破選手が抜け出しました(写真提供:帝京科学大学女子駅伝チーム)

ラスト1000mを3分03秒でカバーし、後続に22秒差をつけて16分09秒96でトップ。16分31秒50で2着となった順大の小暮真緒選手(1年、所沢西)は先日の日本インカレ1500mで8位入賞。16分33秒53で3着となった筑波大・樫原沙紀(かたぎはらさき)選手(2年、呉三津田)も日本インカレ1500m3位と、スピードランナー同士の接戦となりました。

レース終盤、2位以下を大きく引き離す不破選手(写真提供:帝京科学大学女子駅伝チーム)

本当に大混戦となった出場権争い。正直、発表を聞くまで順位もわかりませんでした。

3組終了、最終結果
1 筑波大学 1時間41分21秒39
2 拓殖大学 1時間41分25秒36
3 順天堂大学 1時間41分32秒08
4 中央大学 1時間41分39秒02
・・・・・・・・・・・・・
5 東洋大学 1時間41分42秒41
6 亜細亜大学 1時間41分50秒54
7 東京農業大学 1時間42分21秒99
8 玉川大学 1時間42分23秒31
9 帝京科学大学 1時間43分45秒21
10 東京女子体育大学 1時間46分54秒67
11 城西国際大学 1時間47分20秒42
12 東海大学 1時間48分11秒36
13 松蔭大学 1時間48分19秒72
14 国士舘大学 1時間51分42秒19
15 立教大学 1時間52分52秒13
 日本女子体育大学 DNF

レース後、集計ののち、主催者より正式結果が発表されました

筑波大学が堂々トップ通過。他校の監督さんも「ノーマークでした」と口を揃えましたが、下馬評を覆し7年ぶり25度目の全日本大学女子駅伝へ! 過去には2度の優勝を誇る名門が復活ののろしを上げました!

2位は拓殖大学。2組終了時は7位とヒヤッとした展開でしたが、最終組でエース不破選手の独走、牛佳慧(ぎゅう・かえ)選手(3年、浜松開誠館)も5着に入って一気に挽回しました。

レース後、五十嵐利治監督は「悔しい思いをしたので、1カ月修正して、シードを取ります。力のある選手もまだいて、選手層も厚くなってきました」。トップ通過を狙っていた悔しさと杜の都への意気込みが伝わってきました。3位には順天堂大学。出場6人中4人が1年生というフレッシュなメンバーでのぞみ、出場権を勝ち取りました。2組終了時の5位から上がってきて3位通過となりました。

そして、4位中央大学と5位東洋大学との差はわずか3秒39。1人あたり約0.5秒という僅差で明暗を分けました。3組では両校とも1年生同士の出場。しかもこのプレッシャーのかかる舞台でともに自己ベストを更新する走りでした。

そして、ボーダーまで11秒52差と健闘を見せたのが亜細亜大学。元々、短大時代に亜細亜大は第1回関東大学女子駅伝の優勝校でしたが、その後2003年から休部。その後、亜細亜大OBで箱根駅伝総合優勝のメンバーでもある岡田晃さんが2018年に女子陸上部の監督に就任し、今年で4年目。「練習メニューにプラスして行う選手も増えてきて、選手たちに向上心を感じます」という岡田監督の指導のもと、新生・亜細亜大として全国の舞台を目指しています。

7位の東農大は2組で追い上げるも届かず。8位には玉川大学。9位には創部4年目の帝京科学大学。10位には全日本大学女子駅伝優勝経験のある古豪・東京女子体育大学が入りました。

つい先日、来年から杜の都駅伝出場の選考基準の変更に関する発表がありました。各地区に与えられていた基本枠8について、成績枠で枠を獲得できなかった地区に1ずつ配分、残りの枠は各地区予選会出場校の5000m6名のタイムにより決定するとのこと。このルール変更により、さらに5000mのタイムが重要視されてくることが予想されます。

今回、杜の都駅伝出場を逃したチームも富士山女子駅伝のチャンスがあります!※写真は2019年大会

10月31日(日)杜の都駅伝、大学女子駅伝日本一を懸けた熱い襷リレーに注目です! また、今回杜の都出場が叶わなかったチームも5000mの上位7名のタイムで富士山女子駅伝出場のチャンスがあるので、ぜひ現状打破してほしいですね!

M高史の陸上まるかじり

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