拓殖大ルーキー・不破聖衣来、けが明けの日本インカレで初V 駅伝で狙うは区間賞
第90回日本学生陸上競技対校選手権大会 女子5000m決勝
9月19日@熊谷スポーツ文化公園陸上競技場
1位 不破聖衣来(拓殖大1年) 15分50秒32
2位 小林成美(名城大3年) 15分54秒14
3位 山﨑りさ(日体大1年) 15分59秒85
4位 保坂晴子(日体大2年) 16分01秒77
5位 村松灯(立命館大1年) 16分02秒15
6位 永長里緒(大阪学院大1年) 16分02秒74
7位 小松優衣(松山大3年)16分03秒71
8位 山本有真(名城大3年) 16分11秒82
日本インカレ最終日の9月19日に女子5000m決勝が行われ、拓殖大学のルーキー・不破聖衣来(せいら、健大高崎)が5月の関東インカレに続き、今大会でも初優勝をつかんだ。続く9月25日の全日本大学女子駅伝関東地区選考会に向け、「全日本を決めるのは第一目標。確実にいけるように、自分の走りができるように頑張りたいです」と意気込んだ。
初の日本インカレは「自分の感覚で勝負」
不破は大会2週間前に左足のアキレス腱(けん)に痛みを感じ、そこからはウォーキングをメインにした練習に切り替えた。痛みが続くようなら日本インカレは見送ろうと考えていたが、直前になって痛みが引いたため、レース3日前に1本走って刺激を入れ、大会に臨んだ。ただ不破自身、今の自分の力でどこまでいけるのか分からず、不安も大きかったという。そのため特にレースプランは考えず、自分の感覚で勝負しようと考えた。「その感覚が周りの人よりも速ければ自分が引っ張るかたちになるだろうし、遅ければついていこうという気持ちでいました」
スタートすると不破を先頭とした大きな集団となり、最初の1000mは3分14秒、続く1000mでも3分13秒というイーブンペースを守っていたが、3000mを前にして小林成美(名城大3年、長野東)が前に出ると集団がばらけた。先頭集団は小林、シェイラ・チェロティチ(明治国際医療大1年、益田東)、不破、山﨑りさ(日体大1年、成田)の4人となった。
小林が先頭になった瞬間、不破は3番手だったがすぐに小林の後ろにつき、残り1000mの前で再び先頭に立つ。先頭争いは不破、チェロティチ、小林の3人に絞られ、ラスト1周の鐘が鳴る。不破はスパートをかけたがチェロティチが食らいつき、バックストレートで不破を抜くと、チェロティチはそのままトップでゴール。しかしチェロティチは失格と見なされ、不破が繰り上げで優勝となった。
駅伝シーズンへ「戦える準備が着実にできている」
けがで出場も危ぶまれた大会ではあったが、終わってみれば不破らしい積極的な走りとなった。「2週間走れなくて不安だったんですけど、夏の練習の積み重ねがあったので走れたんだと思う」と振り返る。それでも小林に前に出られた時は「あ、やばいかな」と感じたという。小林とは6月の学生個人選手権5000mでも対戦しており、その時はラスト1周で小林に敗れての2位だった。ただ今回は周りのことよりも自分の走りに集中し、小林のペースアップにも落ち着いて対応できた。
25日の関東地区選考会は5000mでのレースで、上位4チームが10月31日開催予定の本戦に進む。拓殖大の目標は初のシード権。「インカレは関東(地区選考会)に向けて1つ置くではないですけど、走ってみようと思って挑んだレースだったので、ここで5000mを走れたことで安心できたところはあります」。駅伝シーズンを前にして、他のメンバーも調子を上げているのを不破も感じている。「戦える準備が着実にできているので、自分も貢献していい結果を残したい。任された区間で勢いのある走りをして、区間賞をとりたいです」
東京五輪での田中希実の走りに刺激
不破は拓殖大に入学した時から「目標はパリオリンピック」と言い続けている。大類中学校(群馬)時代には全中の1500mとジュニアオリンピック3000mで二冠を成し遂げているが、高崎健康福祉大学高崎高校(群馬)では長期にわたってけがに悩まされていた。その経験から「練習をある意味頑張りすぎないような、そういう抑え方を少し学べて、今はだいぶ自分をコントロールすることができるようになりました」と不破は言う。そして今年7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会女子5000mでは、学生歴代3位、U20日本歴代6位となる15分20秒68をマークしている。
東京オリンピックでは特に、自分が出場を目指している5000mや10000mを見て、イメージを膨らませた。そして1500mで日本勢として初の入賞を果たした田中希実(豊田織機TC/同志社大4年、西脇工)の走りには、「すごく刺激を受けました」と目を輝かせる。
大学1年目の今、初めての寮生活に戸惑いはあるが、料理をすることを覚え、考えながら練習と向き合い、自分で体調管理をするようになった。これまでのシーズンを振り返って、「思うようにいかないこともたくさんあったけど、いい結果を出せたシーズンだったと思います。でもここで満足せずに頑張っていきたいです」。トラックシーズンで得た自信も胸に、初の学生駅伝に挑む。