陸上・駅伝

連載:M高史の走ってみました

芸術と陸上の二刀流! 大阪芸大で一緒に走ってきました!

富士山女子駅伝に向けて練習に励む大阪芸術大学女子駅伝部の練習にうかがってきました!(撮影:北川冬華選手)

大阪芸術大学女子駅伝部は、芸術と陸上の二刀流チームです!  美術、デザイン、工芸、写真、初等教育などを専門的に学びながら、昨年の全日本大学女子駅伝で8位に入り、シード権を獲得。今年も9位と大健闘しました。12月30日の富士山女子駅伝での走りにも注目が集まる彼女たちの練習にうかがってきました!

少数精鋭で杜の都へ! 中央大女子陸上部で一緒に走ってきました

31号館まである広大なキャンパス

新大阪駅から電車を乗り継ぎ、近鉄長野線の喜志(きし)駅に到着。そこからスクールバスに乗ります。スクールバスのデザインからも芸術系の大学に来たんだなぁと実感します。

スクールバスのデザインもアーティスティック!

着いてみると、キャンパスがとにかく広い! グラウンドへ行こうとキャンパスマップを見ると、なんと31号館までありました。教室移動だけでウォーミングアップになりそうです(笑)。

アーティストのような服装やカッコイイ髪型をした学生さんが行き来する中、完全に場違いな(笑)ジャージ姿でウロウロしていると、中瀬洋一監督が迎えに来てくださいました!

名伯楽のもとでコーチングを経験、中瀬監督の指導

中瀬監督は小出義雄さんが市立船橋高校(千葉)の教諭をされていたときの教え子で、市船時代は全国高校駅伝で4区を走り全国制覇。専修大学に進学し、箱根駅伝にも3度出場されました。卒業後はいったん陸上から離れてサラリーマン生活を送りますが、ある日、恩師の小出さんからコーチ就任の誘いがあり、指導者の道を歩み始めます。

実業団の積水化学では小出監督のもと、コーチとして高橋尚子さんをはじめ数多くの日本代表選手を指導。その後、三井住友海上のコーチとなり、鈴木秀夫監督のもとで渋井陽子さんも指導されました。

マラソンで世界と戦ってきた選手を育て、マラソン界の名伯楽のもとでコーチ道を歩んできた中瀬監督。物腰の柔らかな方で、優しい表情の奥に秘めたる陸上への情熱、積み上げられてきた経験、そして陸上職人としてのオーラがある監督さんでした!

大阪芸術大学女子駅伝部の中瀬洋一監督。ご丁寧におもてなししていただき本当に感謝です。(撮影:北川冬華選手)

大阪芸大女子駅伝部は2008年10月に発足し、翌年から始動。まずは部員募集から始まりました。

「デザイン学科の学生にポスターを作ってもらって掲示したところ、舞台芸術学科、美術学科、音楽学科から陸上未経験の一般学生が3人入ってくれました。最初は1000mを走っても6分かかってました(笑)」と、中瀬監督は当時を懐かしむように話してくれました。

当初は大会に出向いて高校生や監督さんに声をかけても「え? 芸術大学?」という反応だったそうです。それでも少しずつ選手が入ってくるようになり、地道に一歩ずつ強化を進め、2012年には全日本大学女子駅伝に初出場! 昨年は8位に入りシード権を獲得。7回目の出場となった今年は9位。あと一歩でシード権に届きませんでしたが、大学女子駅伝界に新たな旋風を巻き起こすべく、年々進化を続けています。

「キツいことを楽しく、がモットーです。1、2回生で土台を作って、3回生以降で伸びていくように。大学でピークがこないような指導を心がけています」と中瀬監督。今年の4回生も実業団で競技を続ける選手が多いそうです。「実業団に進んでからも伸びてほしい」という監督の思いも、選手たちに伝わっているのでしょう。

マラソンやロードレースでも力を発揮

トラックや駅伝に加えて、選手の希望があれば積極的にマラソンにも取り組ませるのが中瀬監督流。長山夢芽選手(4年、北山)が今年の「北海道マラソン」を2時間36分41秒で走って学生トップの5位!  沖縄県記録を更新しました。取材日の前々日も峠萌香選手(4年、川棚)が「仏の里くにさき・とみくじマラソン」で優勝を飾りました。国際レースから市民マラソンまで、積極的にフルマラソンやハーフマラソンにも出場しています。

以前4years.の記事でも、志村野々花選手(3年、新栄)の大阪国際女子マラソン挑戦が紹介されています。

涙、涙の初マラソン 大阪芸大・志村野々花

ユニバーシアードの代表選考会となった今年3月の日本学生女子ハーフマラソンでは、
6位 永井智里選手(4年、富里) 1時間12分54秒
7位 長濱夕海香選手 (3年、三浦学苑) 1時間13分37秒
8位 志村野々花選手(3年、新栄) 1時間14分25秒

と、3選手が入賞! ロードの強さが光りました。「マラソンのために距離を踏むというより、マラソンを走る選手たちはダウンジョグを長めにやってます。また朝練習ではキャンパス内の起伏コースも使います」。大阪芸大のキャンパス内にはところどころに激しいアップダウンがあり、体幹や脚力もじっくり鍛えられそうです。

練習日誌はとくに集めていないそうですが、選手のみなさんは日替わりでブログを書いています。ブログからも選手たちのまっすぐさ、ひたむきさが伝わってきます。(「大阪芸術大学女子駅伝部のブログ」で検索してみてください)

ミーティングで選手が自分たちで目標を立て、中瀬監督がその目標に合わせて練習メニューやスケジュールを組み立てるそうです。「やらされるのではなく、自発的に取り組む」という姿勢がここでも見受けられます。

リズムを養う練習

練習にも参加させていただきました。

1周500mのグラウンド。一般的な陸上競技場のトラックは1周400mですから、やや広く感じます。なんだか新鮮です(笑)。通常2周半で1000mのところ、2周で1000mになります。この日のメニューは6000mペース走+200m×3でした。

まずはペース走。リズムよく、一定ペースで刻んでいきます。(写真撮影:北川冬華選手)

「リズムを作る練習です。バネをためるのが目的です」とのこと。週末の記録会に向けて調子を上げていく練習ということで「同じリズムで走る」「リズムを養う」「余裕のあるペースで走って、フォームを意識する」といったアドバイスが飛びます。「繰り返していくと、ジョグのタイムが自然と上がっていくんです。そうすると調子も上がっていくんですよ」と教えていただきました。

ペース走のあとは200mを3本。シャキッといい刺激が入りました!(撮影:北川冬華選手)

競技も勉強も一生懸命

専用の寮はありません。食事も自炊です。ハード面では決して恵まれているとは言えませんが、その分、選手のみなさんは自ら考えるようになるそうです。

また、大学生ということもあって楽しみも大切ですよね! 月一回、その月に誕生日を迎えた部員を祝う誕生日会を開催したり、大学近くの回転寿司店にみんなで行ったりするのも気分転換になっているそうです。

勉強も大忙し。造形系の学科では課題提出、作品の制作などで夜遅くなることもあるそうです。初等芸術教育学科も実習があったり、課題も多かったり……。

デザイン学科・宮永光唯選手の作品です。全日本大学女子駅伝では2区を走りました。(撮影:北川冬華選手)

それでも楽しそうです! みなさんの表情が明るいんです。笑顔! そして元気(笑)。やらされているのではなく、自発的、積極的な雰囲気が伝わってくるんですよね。

練習では集中!そして練習後は、とびっきりの笑顔を見せていただきました!(撮影:北川冬華選手)

ちなみに、大阪芸大といえばスポーツジャーナリストで、マラソン解説でもおなじみ増田明美さんが芸術学部・教養課程の教授をなさっています。選手のみなさんも増田さんの授業を履修されているそうです。どんな授業が気になりますね! 僕も受けてみたいです(笑)。

選手のみなさんにもインタビュー

選手のみなさんにも話を聞きました。

山本明日香選手(4年、神島)
全日本大学女子駅伝では1区を走りました。工芸学科でガラス工芸を勉強しています。実際に作品を見せていただいたのですが「わぁお!」と思わず声を上げてしまいました(笑)。

山本明日香選手の作品です!写真で見ると美味しそうですが、ガラス細工です!!

ガラス細工を一つひとつ丁寧に仕上げていくように、集中力と粘り強さで、きっと陸上もコツコツと練習を積み重ねてきたのでしょう。

卒業後はエディオン女子陸上競技部でマラソンに挑戦したいと目標をお話してくれた山本選手

「充実していた4年間でした。大学で学んだことを生かして、実業団では将来的にマラソンをやっていきたいです」と話してくれました。

永井智里選手(4年、富里)
高校時代はまったく目立たない存在だったそうです。大阪芸大では初等芸術教育学科で幼児教育などを勉強。教育実習もある中、競技でもコツコツと力をつけてきました。今年3月の日本学生女子ハーフマラソンでは6位入賞。ロードでの強さも示しました。

卒業後は資生堂ランニングクラブで競技を続ける永井選手

「幼稚園はピアノが必修なので、たくさん練習しました(笑)」。その笑顔から、充実した4年間だったことが伝わってきました。さらに「実業団ではマラソンをやりたいです。将来はオリンピックを目指したいです」と、力強く目標を教えてくれました。

長濱夕海香選手(3年、三浦学苑)
絵を描いたり、物を作ったり。図工が好きだったという長濱選手はデザイン学科に所属しています。空間デザイン、デジタルや3Dを活用したハイテクなものづくりにも取り組んでいるそうです。全日本大学女子駅伝では3区で5人抜きの力走でした。

富士山女子駅伝での快走も期待される長濱夕海香選手

「設定タイムはクリアしましたが、もう1人抜きたかったですね。富士山女子駅伝では個人で区間5位以内、チームで8位以内を目標にしています」。来年はチームで全日本大学女子駅伝5位以内、個人種目では5000m15分台、10000m33分以内を目標にしているそうです。

北川冬華選手(1年、滋賀学園)
写真学科に所属。今回、練習中の写真を撮ってくださいました! かっこよく撮ってくださり、本当にありがとうございました。写真学科はどんなことを学ぶか聞いてみたところ「自分で撮影したり、編集したり、来年はドローンも勉強します!」と教えてくれました。

写真学科の北川選手。撮影本当にありがとうございました!

大阪芸術大学の敷地内には、ドローンの飛行が許可されている区域があるそうです。競技での活躍ももちろん応援しつつ、陸上×写真×ドローンってすごく斬新で、イノベーティブなアイデアが生まれそうだなぁと、なんだかワクワクしました!

芸術とスポーツはかけ離れたもののように感じますが「芸術もスポーツもコツコツ続けるのが大事という点で同じなんです」という中瀬監督の言葉が印象的でした。

気配り、心配り、おもてなし。中瀬洋一監督や選手の皆さんのお人柄が伝わってくる取材でした!(撮影:北川冬華選手)

そして、中瀬監督、選手のみなさんに本当によくしていただいたので御礼をお伝えすると、中瀬監督からこんなことを教えていただきました。

「小出監督が『来てくださった方を大切に』ということを常々お話されていました」

中瀬監督はもちろん、選手の皆さんも「おもてなし」の心が浸透していました!

芸術にも陸上にも全力! 大阪芸術大学女子駅伝部のみなさんの挑戦は続きます!

東京大学で文武両道を極めるみなさんと走ってきました!

M高史の走ってみました

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