大学陸上・駅伝

連載:M高史の走ってみました

東京大学で文武両道を極めるみなさんと走ってきました!

阿部飛雄馬選手(右)とペース走!軽やかな走りでした!(すべて撮影・藤井みさ)

「M高史の走ってみました」。今回は東京大学へ伺ってきました。もちろん世間では学問の東大のイメージが強いと思いますが、実は第60回大会(1984年)に箱根駅伝に初出場しています(この年は記念大会で17位)。

それからチームとしては箱根の予選会を突破していませんが、第81回大会に松本翔さん(現・渋谷区議会議員)が関東学連選抜チームで東大生としては21年ぶりに箱根路を走り、さらに前回大会は14年ぶりに近藤秀一さん(現GMOアスリーツ)が出場しました。

今回、阿部飛雄馬選手(4年、盛岡一)が箱根駅伝予選会では1時間5分11秒で個人64位に入り、関東学生連合チームに選出。しかも主将に就任し、予選会を突破できなかった各校のエースたちが集う連合チームを引っ張ります。

文武両道を体現している東京大学陸上運動部、長距離ブロックの練習に参加しました!

芸術と陸上の二刀流! 大阪芸大で一緒に走ってきました!

学生主体で考える練習

東大の駒場キャンパスは、京王井の頭線の駒場東大前駅で下りるとすぐの場所です。電車の車窓から何度も見たことはあった校舎ですが、中に入るのは初めて。「ここが東大かぁ!」とやや緊張しながら守衛さんにあいさつ。原則、関係者以外は立ち入り禁止となっているため、事前に申請していた取材受付を済ませてから中へ入ります。

東大駒場キャンパスの第1グラウンドに到着。ホームストレートは8レーン、それ以外は7レーンまである400mタータンのグラウンドでした。今年4月に改修を終えたばかりということで、とてもキレイで真新しいトラックでした。

授業を終えた選手のみなさんが集まってきます。午後5時になると全体ミーティング。その後、各ブロックに分かれて練習内容を確認。長距離パートは全員で体操をしてから各自でウォーミングアップに入ります。

この日のメニューはペース走。男子が8000〜12000m、女子が6000〜8000mです。練習メニューはブロック長を中心に、学生同士で考えるそうです。

練習前はペースの確認。練習後は走りの課題や感想を発表します。

設定ペースによって1kmあたり5秒刻みに細かいグループに分け、走るペースは走力や体調に合わせて自己申告制。ほかの大学の学生さんや海外から留学中の大学院生も練習に参加していました。

阿部飛雄馬選手がチームの底上げに貢献

注目の阿部飛雄馬選手は週末に関東学生連合チームの練習で追い込んだばかりで、この日は軽めの練習。後ろのチームを引っ張ってくれました。

チームメイトがいい走りをすると嬉しいと語る阿部飛雄馬選手。軽やかに引っ張ります。

阿部選手は試合明けや強度の高い練習のあとの日でジョグの予定の場合、自身の練習も兼ねてペースメイクをするそうです。

「どうせ走るなら一人で走るより、チームの底上げという意味も込めて、どこかのチームを引っ張りますね。引っ張った選手がいままで出来なかったペースで走れるようになったり、記録が伸びたりするとうれしいし、楽しいんですよね!」

仲間と喜びを分かち合いたいという阿部選手。チーム愛が伝わってくる熱い方でした! 競技力、勉学の面はもちろん、人柄も素晴らしい方でした。そういった人としての魅力もあって関東学生連合の主将を任されたのかなぁと感じました。

8000mまで同じペースで進み、ラスト2000mはペースが上がりました。

阿部選手のペースメイクはとても走りやすく、ラスト2000mはほかの選手と一緒にペースアップし、無事に10000mを走りきりました。

走っているグループがかなり多いのにも関わらず、マネージャーさんが各チームのラップを読み上げてくれるのにも感謝です!

縁の下の力持ち!マネージャーさんもタイム計測、記録の集計で選手をサポートします。

「飛雄馬」なのに野球ではなく陸上の道へ

練習後、みなさんに話を聞きました。

阿部飛雄馬選手

飛雄馬という名前の由来ですが、お父さんが高校球児だったそうで「巨人の星・星飛雄馬」から名付けたそうです。しかし阿部選手は野球をやらずに陸上の道へ(笑)。「体が細かったので、バットを振ったりボールを投げたりするよりも走るのが得意でしたね。陸上は中学から始めました」

高校時代は5000m14分44秒。3000mSCで東北大会2位となり、インターハイにも出場しています。盛岡一高は進学校で、自然と東大を意識するようになったそうです。

いまは教育学部で教育哲学について勉強しています。「そもそも教育とは何か、人に教えるとはそもそもどういうことか」といった、とても深い内容です。

関東学生連合の主将に任命されたことについては「驚きました! もし去年の自分がいまの自分を見たら、信じられないと思います(笑)。光栄ですし、箱根の歴史に名を刻む走りをしたいです。松本翔さんから14年空いて、前回は近藤さん、今年が自分と2年続けて走ることで、『東大=箱根』というイメージがつけばうれしいです」と、いい笑顔で話します。

阿部飛雄馬選手は学業、競技、人間性とも素晴らしく、思わず応援したくなる方でした!

4年生の阿部選手は来春から東大の大学院に進み、教育学研究科で勉強します。「競技も続けます。大学院なので関東インカレでは3部になりますが、ハーフマラソンの参加標準記録を切っているので、出場したいです。3部は2部の選手たちと同時スタートになるので、しっかり勝負したいですね!」

「将来は陸上のマスターズで世界記録を出したいです! 理想は長野の市民ランナー利根川裕雄さん(マスターズで日本記録を連発)のような存在です。究極の目標は100歳でもフルマラソンでサブ3です! レジェンドになりたいですね(笑)」と、壮大な夢を熱く語ってくれました! 本当に走るのが好きなんだなぁというのが伝わってきます。

そして、後輩やこれから東大を志すみなさんへのメッセージを口にしてくれました。「東大は学生主導です。自分で何をするか、自己管理が大切です。安定志向ではなく『現状打破』してほしいですね(笑)。夢や情熱をもってどんどん上を目指して取り組んでほしいです! 青春です!」

僕がものまねをさせていただいている川内優輝選手の座右の銘「現状打破」というキーワードも盛り込んでいただき、感謝です!

個性豊かな選手たち

阿部選手の活躍に注目が集まる東大ですが、ほかにも学業にも競技にも一生懸命な選手のみなさんがいらっしゃいます。

左から一柳里樹選手、松本郁也選手、小河弘樹選手、瀬川莉玖選手、宮田一馬選手(※駅伝主務)

松本郁也選手(3年、長野日大)
工学部の松本選手は化学系の勉強をしているそうです。実験も多く多忙なスケジュール。
高校の陸上部の先輩が東大に進んだこともあって、松本選手も東大へ。5000mの自己ベストは15分9秒56です。

「東大で陸上をやるのは面白いですよ! 効率的なフォームや動きを熱心に追求していた先輩が自己ベストを更新していたのが印象的でした。部の練習は週に3回。自立、自主性が求められます。サボろうと思えばいくらでもサボれますし、頑張ろうと思えばいくらでも頑張れる環境です」

七大戦での入賞、インカレ出場を目指している松本選手。予選会も頑張りたいと決意を語ってくれました。「将来はカーボンの勉強をしたいですね。陸上のシューズづくりにも関わったりしていきたいです」

小河弘樹選手(2年、希望ヶ丘)

「物理は面白いです!」と言うのは工学部で物理工学や量子力学を学ぶ小河選手。粒子や原子の話をしてくれましたが、僕が全然ついていけず、すみませんでした(笑)。勉強と競技の両立のために一工夫していて「課題は早め早めに提出します。早起きして効率的に時間を作るのを意識しています」。

5000mの自己ベストは15分54秒。陸上については「東大は一人ひとりがいろいろな考えや価値観を持っているのがいいです。4年生になったときに全体を支えるような存在になりたいです」。将来は物理学を生かした開発や研究に携わっていきたいそうです。

宮田一馬選手 ※駅伝主務(1年、宇都宮短大附)

「東大を出て外交官になりたい。世界で働きたい」という志を持って、東大の文科三類に合格した宮田選手。実は現在、駅伝主務を務めています。予選会が終わってから就任したそうです。近年、東大では1年生が駅伝主務になるとのこと。「大変なこともありますが、貴重な経験ですね」と、充実した表情で語ってくれました。

小学校、中学校では野球部。高校ではバスケットボール部。陸上は東大に入ってから始めた宮田選手。陸上を始めてわずか半年で、5000mの自己ベストは16分28秒。「来年は15分台を目指してます。予選会にも出場したいですね!」

将来については「興味が少し変わり、経済に関心があります。IMF(国際通貨基金)もいいなと思っています」と、目を輝かせて話してくれました。

一柳里樹選手(4年、麻布)
文学部で社会学を学ぶ一柳選手。5000mの自己ベストは16分18秒です。

中学、高校も陸上部だったそうですが、受験期間に少しブランクがありました。受験の際に散歩をしていたらふとグラウンドにたどり着いたそうです。「軽く走ってみたら気持ちよくて、大学でも陸上をやりたいと思いました。バックボーンもモチベーションも多様な部員が集まり刺激し合って、いろんな挑戦ができるのも東大の魅力です」

4年生の一柳選手、後輩に向けて「悔いなく挑戦してほしいです。東大ならではの面白さがあります。」とメッセージもいただきました。

瀬川莉玖選手(1年、仙台一)
将来の箱根ランナー候補として期待の瀬川選手は理科二類で勉強しています。中学、高校時代に少し伸び悩んでいたという瀬川選手ですが、この1年で5000mの自己記録を15分52秒から14分48秒まで1分以上も縮めてきました。

「阿部さんは背中で見せてくださる存在です。一緒にダウンジョグをするときなど、とても勉強になり刺激になります。将来は脳神経を勉強したいですね。脳神経はまだ解明されていない領域があるので」

来シーズンはまず5000m14分30秒を狙いたい、という瀬川選手の走りにも注目です。

練習後はこの笑顔!取材させていただき、ありがとうございました!

学生主体で運営し、練習も進めている東大。学業が最優先で、時間を管理して効率的に競技にも取り組む東大。学生スポーツの在り方を改めて考えさせられました。みなさんはこれからも、社会のさまざまなフィールドで活躍されるでしょう!

東京大学陸上運動部長距離パートの皆さん、ありがとうございました!

北京オリンピック代表・竹澤健介さんが指導する大阪経済大で走ってきました!

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