少数精鋭で杜の都へ! 中央大女子陸上部で一緒に走ってきました
中央大学の陸上部といえば、箱根駅伝で14度の最多優勝回数を誇る男子のイメージがあると思いますが、実は女子陸上部も全日本大学女子駅伝で2度(1989、93年)の優勝経験がある名門なんです。
ただ前回の優勝が26年前。近年は長距離部員が人数ギリギリだった年もあり、やや苦戦が続いていました。昨年は関東大学女子駅伝で11位にとどまり、全日本大学女子駅伝には出場できませんでした。
今年に入って、エースの五島(ごしま)莉乃選手(4年、星稜)がユニバーシアード10000mで銀メダルを獲得。日本インカレでも5000m、10000mの両種目で2位に入る活躍でした。そして、雪辱を誓った関東大学女子駅伝。2区終了時は16位でしたが、3区から怒涛(どとう)の追い上げ。最終的には4位まで上がって杜の都行きを決めました。
2年ぶりの全日本大学女子駅伝では19位でした。1区では五島選手がスタートから飛び出し、2位に45秒差をつける区間賞。見せ場を作りましたね。競歩選手も合わせて7名と、少数精鋭の中央大女子陸上競技部・長距離ブロックの練習にうかがってきました!
OGの鈴木智香子さんが駅伝監督に
取材にうかがったのは11月9日でした。多摩モノレールに乗って、多摩キャンパスへ。とても広い敷地で、門をくぐってから歩くこと10分。ブルータータンのトラックが見えてきました。この日は中大スポーツ新聞部の山田裕太記者が写真撮影をしてくれることになりました。道案内までしてくれて、感謝です。
長距離ブロックを指導されているのは鈴木智香子駅伝監督です。今年4月からコーチ、10月27日の全日本大学女子駅伝から駅伝監督に就かれました。鈴木駅伝監督は中大OG。卒業後は実業団のリクルートでご活躍。リクルート時代の恩師は小出義雄監督です。当時はオリンピックや世界陸上の日本代表に何人も送り込んでいて、いま考えても驚くようなハイレベルなチームだったそうです。
競技引退後はリクルートで社業に専念され、上海転勤などを経て日本に戻られました。現在は仕事も多忙な中、時間を作って母校の指導にあたられているそうです。
指導を始めるにあたって昨年11月から練習に顔を出されていたそうですが、まずは一人ひとりと面談しました。「いまの状況の確認ですね。選手の目標とのすりあわせもしました。みんなひたむきで素直、一生懸命な子ばかりです。競歩も入れて7人しかいないので、一人ひとりとコミュニケーションをとり、とにかく故障しないように気をつけていましたね」。とくにチームの柱である4年生の2人に目標を確認されたそうです。
五島莉乃選手は「ユニバーシアードに行きたい」という目標。五島選手とともにチームを引っ張る木下友梨菜選手(荏田)は「杜の都に行きたい」という目標でした。「木下は駅伝が大好き、駅伝娘なんです」と鈴木駅伝監督。目標に向かって走力を伸ばした木下選手は、今年の日本インカレ3000mSCで6位入賞を果たしました。
五島選手はダイナミックな腕振りが特徴ですが、個性を生かしてさらに推進力につながるようにアドバイス。多忙な中で指導にあたるパワーの源について聞くと「やっぱり母校愛ですね。還元したいという気持ち、そして情熱です! 故障に気をつけて練習を継続でき、毎年自己ベストを出せるような選手育成をしたいですね」と語る鈴木駅伝監督。女子選手特有の体のコンディションにも気を配られています。
練習にも参加しました!
練習にも参加しました。トラックでまず5000mの変化走。そのあと1000mを2本。さらに400mを5本という練習でした。変化走は全員そろって取り組みます。交代でペースを引っ張り、途中でペースが上がります。
五島選手がキツそうな選手にすかさず声をかけ、設定ペースを守りながらも集団でまとまって走れるような絶妙なペースメイク。後輩への思いやり、チーム愛を感じました。
鈴木駅伝監督によると変化走は「リズムの切り替えで自然と調子が上がってくる練習」という位置づけで、たしかに後半になるにつれて動きがよくなっていく不思議な感覚がありました! 普段の練習でも取り入れてみようかなと思いましたね(笑)。
変化走のあとはリカバリーをはさんで、インターバルトレーニングです。選手の走力に合わせて細かくペース設定が分かれています。
少人数のため、ペース設定によっては1人になることもありますが、駅伝ではきっちり1人でペースを作っていけるかどうかも重要になりますよね。実際に関東大学女子駅伝では3区以降の中央大の追い上げを見て、1人でもペースを作れる強さを感じていました。
走りを支える体つくり
走る練習が終わったあとは中大ならではの体作りのトレーニングです。
トーイングでは自分が出せる以上のスピードを体験し、神経系にも刺激が入り、スピード強化などの効果が期待できるそうです。
スパイダーマンと呼ばれる体幹トレーニング。見ているだけでもキツそうです(笑)。
懸垂や倒立は苦手としている女子の選手が多い種目だと思いますが、みなさんスムーズにこなしていきます。「1年生で入ってきたときは全然できなかった」という選手も少なくなく、継続することでできるようになり、走りにもつながっているようです。
短距離、跳躍、投擲(とうてき)の各部門が近くでトレーニングしていることもあり、長距離ブロックでは珍しいようなトレーニングも導入していました。そして、選手のみなさんが、キツそうなトレーニングを笑顔で前向きに取り組んでいるのが印象的でした! 「せっかく好きでやってる陸上なので、楽しんでほしい」という鈴木駅伝監督の思いが伝わっているのかもしれません。
長距離ブロックにはLINEグループがあって、練習の目的、メニューを共有します。鈴木駅伝監督が練習メニューを投稿すると「メニューありがとうございます。よろしくお願いします。」と律儀に全員が投稿するそうです(笑)。グループLINEのみなさんの反応に「みんな、かわいいでしょ(笑)」と、鈴木駅伝監督。家族のようなあったかさを感じました。
選手の皆さんにお話を聞きました!
せっかくなので、全員に話をうかがいました!
まずはユニバーシアード銀メダリストの五島莉乃選手。「(中大の4年間は)充実してました。世界が変わりました。長距離だけじゃなくいろんなブロックがあって、違う競技の話もできるのが魅力です。今シーズンは日本インカレでは(5000m、10000mとも2位という結果に)悔しかったけど自分で仕掛けていけたので悔いはないです」
また今年のユニバーシアードや昨年の世界大学クロカンでの海外遠征の話を聞くと「食生活や環境が変わっても大丈夫なんです!」と、明るく返してくれました。どんな環境でも力を発揮できるメンタルも強さの秘訣(ひけつ)なのかもしれません。1区で独走して区間賞を獲得した全日本大学女子駅伝では「最初からいこうと思ってました」と、スタート前からの作戦だったと教えてくれました。
卒業後は資生堂ランニングクラブで競技を続けます。「実業団ではもっと厳しくなると思いますが、どんな環境であってもその場所でもっと上のレベルを目指したいです。日本代表になって世界でも戦っていけるような選手になりたいですね」と、目標も語ってくれました。
後輩たちへは「ずっと中大を応援していたいです。みんなの活躍を見て頑張ろうと思います。走る場所は違うけど、仲間だと思ってます」というメッセージもいただきました。
古田朱里選手(3年、本庄東)
「けがをしているときは、智香子さんや周りの選手がアドバイスしてくれました。手紙で励ましてくれた選手もいました。(来年は)チームとして、関東大学女子駅伝で今年以上の結果を出して、また杜の都へ行きたいです!」
臼井優選手(3年、中大附属横浜)
「競歩が専門ですが、関東インカレまでは競歩に取り組み、夏から駅伝にシフトしています。来年は歩きも走りも頑張りたいです!」
大塚沙弥選手(2年、大宮)
「冬場にけがしていた影響もあって、関東インカレでは納得のいかない結果でした。夏は練習を積めたこともあり、関東大学女子駅伝ではアンカーで納得のいく走りができました。来年はチーム全体で成長していけるように、走りでも引っ張っていきたいですね。目標は関東インカレと日本インカレの入賞です。駅伝では杜の都で入賞したいです!」
渡邉美優選手(2年、秦野)
「1年生のとき体重が増えてしまって……。食生活にも気をつけて減量しました。来年は強い1年生も入ってくる予定ですが、メンバーを勝ち取りたいです。個人では関東インカレ、日本インカレの参加標準記録の突破。チームでは杜の都に行きたいです」
石原七海選手(1年、本庄東)
「杜の都では6区でした。起伏があって距離も長く、関東大学女子駅伝よりは走れたのですが、悔しさが残りました。杜の都をまた走りたいので、長い距離もやりたいですし、自己ベストを出して、日本インカレも目指したいです。」
少数精鋭の中央大。「どんな選手に入ってきてほしいですか?」とみなさんにうかがったところ「頑張りたい人、やる気がある人、笑顔な人」と、明るく元気に教えてくれました! ちなみにマネージャーも大・大・大募集とのことです!
来年以降また、どんなチームになっていくのか楽しみです!