関西の雄・立命館の強さの理由は? 一緒に走ってきました!
立命館大学へ行ってきました! 立命館は今年の出雲駅伝で6位と過去最高順位タイ。関東の強豪校や箱根駅伝の常連校を上回る走りを見せました。全日本大学駅伝では目標だったシード権獲得とはなりませんでしたが、12位。また先週の丹後大学駅伝(関西大学駅伝)では2連覇を果たしました。8区間中、7区間で区間賞を獲得して2位の関西学院大に10分13秒差をつける圧倒的な勝利でした。
「打倒関東」を掲げ、快走を続ける立命館の強さに迫るため、練習にうかがってきました!
高尾憲司コーチの指導哲学
訪問したのは丹後駅伝前の11月12日。滋賀県草津市のびわこ・くさつキャンパスです。チームを指導されているのは高尾憲司コーチ。就任7年目です。
高尾さんといえば、宇治高校(現・立命館宇治高校)卒業後、実業団の名門・旭化成に進み、10000mでアジア大会の金メダル! 世界陸上にも2度出場した実力の持ち主です。高尾コーチは「旭化成では相当練習してましたね。ニューイヤー駅伝前の調整練習で、10km28分20秒台で10人が走ってました」と振り返ります。ニューイヤー駅伝も4度走り、旭化成の優勝に貢献されました。
その後、けがにも悩まされて現役引退。引退後は大阪産業大に進学し、スポーツや健康について勉強したそうです。2013年に立命館の長距離コーチに就任、翌年からは指導と並行して立命館の大学院にてスポーツ健康科学の研究もされています。チームのテーマである「勉強と陸上の両立」を高尾コーチ自身が体現されています。「学業優先で限られた時間の中、なるべく効率的に練習するように心がけてます」と話してくれました。
チームの雰囲気が明るく、選手のみなさんも自発的に動いている印象でした。もっとも7年前、就任当初はまったく違ったようです。「最初は競技者としてオンとオフのメリハリを教えることが大変でしたね(笑)」と高尾コーチ。チームは一歩一歩成長し、力をつけてきました。
キャンパス内の「根性コース」
さあ、練習です。この日はキャンパス内の往復2.5kmのコース。「根性コース」と呼ばれるロードでの距離走でした。行きはダラダラとした上り坂が続き、折り返すと帰りは下り基調のコースです。周回を重ねると徐々に効いてくるコース。高尾コーチが「根性コース」と話されていた理由を、走ってみて実感しました!
上り、下りの走り方、技術も自然と身につきますね。とくに下りではみなさん、スムーズな体重移動、ムダのない軽快な走り。自然とペースも上がります。この日のメニューは20km走。記録会が終わったばかりということで、高尾コーチ曰く「タメをつくる練習」とのこと。みなさんにとっては余裕のあるメニューなのですが、僕にとっては全力走です(笑)。
2.5kmのコースを8周して20km。僕は後半離れてしまい、5周したあとラスト1周に合流して、計15kmを走りました(汗)。
福島主務も自転車で並走。授業を終えてからのトレーニングなので、もう暗くなっています。選手がけがをしないよう、自転車のライトを照らしながら伴走します。
女子マネージャーの岡本さん、吉田さんはスタート地点でタイム測定や給水をして、選手の走りをサポートします。
出雲駅伝メンバーに取材しました
練習後、出雲駅伝6位に入ったメンバーのみなさんに、出雲の感想を中心に聞きました。
高畑祐樹選手(4年、水口東)出雲1区 区間6位
「(出雲は)札幌学院大学のグレ選手(2年、札幌山の手)が飛び出して難しいレースでした。集団でスパート合戦に備える対応はできましたけど、ラスト1kmで駒澤大学の山下一貴選手(4年、瓊浦)につけなかったのは悔しかったですね。高尾コーチは、練習の目的や意味をみんなに共有してくれたり、一人ひとりに真摯に向き合ってくれたりする方です」
前川紘導選手(3年、網野)出雲2区 区間12位
「出雲では申し訳ない走りでした。今井さんと山田が流れを変えてくれたんですけど、個人の走りは悔しかったです。来年は1区をやりたいです。高尾コーチは学生を信用してくれて、自分の体調に合わせて自分で考えて練習するので、けが人が少ないのが特徴です」
今井崇人選手(4年、宝塚北)出雲3区 区間8位
「出雲駅伝は優勝を狙ってました。3区で法政大学の青木涼真選手(4年、春日部)と走りましたけど、できればその前の上位争いに加わりたかったです。夏合宿で練習を積めたので、日本インカレでは留学生に挑戦しました。速かったですね(笑)。でも粘って7位に入れて自信になりました。マラソン向きと周りからも言われるので、実業団ではまずトラックでスピードを磨いて、その後はマラソンに挑戦したいです」
今井選手は田畑泉教授のゼミに所属しています。田畑教授といえば多くのアスリートが実践しているあのタバタ式トレーニング(タバタ・プロトコル)でもおなじみ! 今井選手によりますと「卒論が大変です(笑)」とのことですが、勉強にも陸上にも真摯に向き合う姿勢が、インタビューからも伝わってきました。
山田真生選手(1年、中京学院大中京)出雲4区 区間6位
「(出雲は)距離が短いので突っ込んでいくイメージでした。楽しめましたけど、チームの結果は正直悔しいので、来年は出雲優勝を目指します。個人としては再来年のユニバーシアード代表になりたいです」
5000mの記録を高校時代の14分30秒37から、今年一気に13分50秒74まで伸ばした山田選手。驚異の伸び率にも「練習のメリハリが効いていると思います」と、本人は淡々と話してくれました。
岡田浩平選手(3年、洛南)出雲5区 区間8位
「山田が順位を二つ上げていい流れだったんですけど、物足りない走りになってしまいました。来年は出雲で優勝したいですね。今年は5000m14分4秒19で、約30秒タイムを縮めてきました。来年はチームで一番になりたいですし、13分40秒を切って日本選手権の参加標準を突破したいです」
吉岡遼人選手(3年、草津東)出雲6区 区間6位
「6区で並走した帝京の中村(風馬)選手(2年)は、中学、高校の後輩ということもあって負けられなかったです。今年は5000m13分台、全日本では(7区の)区間7番で走れましたが、関東との差も感じました。来年は10000m28分台、そして出雲優勝が目標です」
選手を支えるみなさんの話も
続いて、選手の走りを支えるみなさんにも聞きました。
福島奈槻主務(4年、自由ケ丘)
「大学2年の冬、マネージャーに転向しました。記録が伸びなかったことと、高尾コーチの勧めもありました。全日本大学駅伝では監督バスにも乗らせていただきましたし、貴重な経験でした」。空いている時間に、自らも走る福島主務。今年の100kmサロマ湖ウルトラマラソンではなんと7時間3分で7位入賞! 取材があったこの日も20kmを練習前に一人で走り、そのあと練習ではマネージャーとして自転車で20kmを伴走する驚異のスタミナ!
「将来はウルトラマラソンで日本代表を目指してます。12月で引退なので、そこからは部の練習に走る方で参加します!」。福島“選手”の新たな挑戦が始まります。
岡本紗弥マネージャー(2年、宝仙学園)
中学、高校時代は陸上部で長距離を走り、駅伝にも出場していた岡本さん。「みんながベスト出したとき、とくにマネージャーとしてのやりがいを感じます。確認するクセがついて、最近は心配症です(笑)。将来は陸上の現場でトレーナーとして支えたいです!」と話してくれました。
吉田遼子マネージャー(1年、吉祥女子)
高校まではバトミントンをしていた吉田さん。野球と駅伝を応援するのが好きで、大学からマネージャーに。「入ってよかったです。チームは明るい雰囲気でやりがいもあります」。将来はスポーツマネジメントやイベント企画運営をやっていきたいそうです。
大渡泰子トレーナー
諫早高校(長崎)時代に全国高校駅伝優勝など華々しい活躍をされた大渡さん。実業団に進んでからは、故障に悩まされた競技人生でした。競技引退後は鍼灸師の資格を取得。その後、縁あって高尾コーチに声かけてもらい、立命館のトレーナーをされています。
「昨年に比べて雰囲気が変わりました。意識も高く、自分たちでセルフケアもよくやってます。とくに今井選手は真面目でストイック。練習後、アイシングベルトをあらゆる箇所に巻き付けて登場したときはビックリしました(笑)」
選手も相談しやすい、お姉さん的な存在のようです!
「打倒関東」を掲げて挑み続ける立命館。これからも目が離せませんね!