北京オリンピック代表・竹澤健介さんが指導する大阪経済大で走ってきました!
「M高史の走ってみました」です。大阪経済大学陸上部の練習に参加してきました。大経大の長距離を指導されているのは、北京オリンピック代表の竹澤健介ヘッドコーチ(33)。かつては報徳学園高校(兵庫)を何度も全国高校駅伝優勝に導いてきた鶴谷邦弘監督が指導されていましたが、2018年1月に亡くなられました。
竹澤さんは鶴谷監督の報徳学園時代の教え子。19年4月に、亡き恩師からの指導の襷(たすき)を受けました。
「鶴谷先生は亡くなる直前まで現場にいらっしゃいました。先生の跡を継いでキャリアスタートできたのは、本当によかったと思います。ちゃんと頑張らなきゃと思いますし、思いを受け継いで続けていきたいですね」と竹澤ヘッドコーチ。
現在はヘッドコーチとして指導にあたりながら、スポーツ文化センターに所属して、若吉浩二先生と九鬼靖太先生のもとで研究活動に当たっているそうです。豊富な競技経験や知識に加えて理論も深く学び、選手に練習の意図を話したり、モチベーションの向上にもつなげています。
社会で活躍するために
竹澤ヘッドコーチの就任1年目にして、選手たちは早くも好成果を出し始めました。とくに成長の目立ったのが富田遼太郎選手(3年、大阪)です。昨年の春まで10000mのタイムが30分50秒台だったのが、秋には28分56秒41まで伸ばしました。
「富田の場合、誰が指導してもあそこまで行きましたよ(笑)」と、竹澤ヘッドコーチは謙遜しますが、10000m29分台の選手が4人に増え、チームは着実に実力をつけています。選手の記録が伸びていくこと、結果が出ることについて「うれしいですね! 現役時代に自身が結果を出したときよりもうれしいです」と、さわやかな笑顔で話しました。
さらにこう続けます。「大学は4年間で終わります。競技や勉強をやりきった経験は、社会人になって必ず生きてきます。卒業してから社会で活躍できるようになってほしいですね」
ご自身の現役時代については「抱え込みすぎていたかもしれない」と振り返りました。オリンピック出場や駅伝での華やかな活躍の裏に、度重なるけがで走れない日々も多々ありました。現役引退を経て「陸上だけがすべてじゃない」と、改めて気付いたそうです。
また、市民ランナーの方への指導やアドバイスもしています。長野県の快足市民ランナーである桃澤大祐選手(サン工業)からも、定期的にトレーニングについて相談されるそうです。
限られた環境の中でベストを尽くす
大経大陸上部に寮はありません。そのため、朝練習は家が近い選手同士が集まって各自で取り組んでいます。
ミーティングでは陸上以外にも時事ネタを取り入れたり、感じたことを話したり、陸上だけにならないように時間をかけてチーム作りにあたっています。
合宿は限られた期間の中、広島県の道後山や倉橋島でやっています。トレーニングの合間には登山をしたり、海で泳いだりと気分転換もするそうです。キツい合宿もなんだか楽しくなりそうですね(笑)。
「栄養を勉強している学生さんに来てもらって、話をしてもらうこともありますよ。やり方次第、工夫次第で強くなれます。やれる環境で、いまできるベストを尽くすことが大切ですね」
練習にも参加しました!
長距離の部員は30人ですが、授業が終わる時間に合わせて3限組と4限組に分かれます。取材の日、3限組は大阪府豊中市の緑地公園、4限組は大学近くの河川敷での練習でした。
緑地公園内にある1周約560mのロード。大経大には250mの土のトラックはありますが、長く走り続けるにはカーブがキツすぎるため、基本的には緑地公園や大学近くの河川敷で練習しています。競技場が使えるときはトラックも走るそうですが、緑地公園での練習がメインとなります。
名前の通り緑が豊かな公園なのですが、日が沈むと真っ暗に(笑)。そのため4限組は緑地公園には行きません。
授業を終えて徐々に選手たちが到着し、各自でウォーミングアップ。その間にマネージャーさんが距離を測ります。1周560mちょっとなので、1km地点、2km地点と、距離のポイントがずれていくんです。マネージャーさんが慣れた様子でテキパキと準備。「こちらが指示しなくても、サッと動いてくれます」と、竹澤ヘッドコーチも信頼を寄せています。
取材の日の練習は、5000m×3というメニューでした。
「この時期、本当は20km走とか25km走とか関東の強豪校のようなメニューができればと思いますが、まだそこまでの力はありません。距離を分割して、いいフォームで走りきれるようにするのが目的です」と、練習の狙いを教えてくれました。
指導の際、選手のフォームでとくに意識しているポイントを竹澤ヘッドコーチに尋ねると「姿勢ですね」と即答されました。練習中もペースのことよりも、フォームについてや「リラックス」といった声かけをしていたのが印象でした。
僕も練習に参加させていただきました。いつもより「姿勢」を意識して走ってみました!
A、B、Cの3チームに分かれて走ります。僕はCチームに参加。ただCチームの皆さんも素晴らしい走りで、僕は5000mの全部についていくことができませんでした(汗)。3本のうち、3000m 、2000m 、2000mだけ走らせていただきました。Cチームのみなさん、すみませんでした。
マネージャーさん2人で手分けしながら3チームすべてのタイムを計測。「もっとチームが分かれることもありますよ(笑)」。大変な状況を楽しむようにイキイキとされている姿や、表情が印象的でした。
5000m×3のあとは 400mまたは200mを数本。タイムよりも動き、フォームを意識して走ります。竹澤ヘッドコーチも見守る中、僕のチームは200mを3本。中距離選手のようなダイナミックな走りです。
練習が終わるころには、公園もすっかり暗くなります。
暗くなるので、マネージャー4人が2人ずつ緑地公園組、河川敷組を担当し、練習が終わるとすぐに情報共有します。
エースに成長! 富田遼太郎選手
練習後、エースの富田遼太郎選手に話を聞きました。
高校から実業団に行きたいという思いもあったそうですが、鶴谷監督のご指導を受けたいと大経大へ進みます。鶴谷監督が亡くなられたあと、2回生のときは「メニューも学生で作っていて手探り状態でした」と振り返ります。竹澤ヘッドコーチ就任後は、前述の通り10000mで約2分も自己ベストを短縮!
「スルッといきました(笑)。コツコツやってたら、いつのまにか走れてました」。富田選手は「スルッと」と表現してくれました。「竹澤マジック」にかかったのでしょうか?
2019年のシーズンについては「学連選抜チームで出場した全日本大学駅伝はお祭り感覚でしたね。12月の丹後駅伝(関西学生駅伝)はチームの主力として外せないレースでした。課題も残りました」と振り返ります。
今年の目標については「関西学生記録の更新です。去年、今井さん(今井崇人選手、立命館大)が出した10000mの記録(28分31秒76)を更新したいです。28分台を出したときも『28分台を出す!』と根拠のない自信を口に出し続けて練習を積み重ねてきました。口に出すことで実現できると思うし、頑張れるんです!」と富田選手。何かやってくれそうな、期待したくなっちゃう選手です!
「将来はマラソンをやりたいです! 鶴谷監督が亡くなる前に、最後に電話で『一緒にマラソンをやろう』と声かけていただきました。ロードが得意ですし、挑戦したいですね!」。さらに「大経大に来たら、間違いなく強くなります。竹澤コーチの存在は大きいです。竹澤コーチは偉大な指導者になられると思います。最高の練習ができます!」。
亡き恩師との約束、そして竹澤ヘッドコーチへの絶大な信頼、富田選手は目を輝かせて熱く語ってくれました。
チームの元気印!マネージャーの皆さん!
チームを支えるマネージャーさんにもお話をうかがいました。今年から主務となる小田優華さん(3年、刀根山)です。スケジュール管理、連絡事項、大学との連携、練習サポートなどマネージャー業務は多岐に渡ります。
中学校では吹奏楽部、高校で陸上の短距離(200、400m)をやっていた小田さん。大学入学後、新入生キャンプでたまたま富田選手と話をしたそうです。
「バイトやサークル中心の学生生活もあるけど、学生時代にしかできないことがあるんじゃないか」と陸上への思いが強まり、陸上部のマネージャーに。マネージャー生活について聞くと「充実してます! 選手のいい顔を見たときにやりがいを感じます。とくに選手が自己ベストを出したときですね!」
鶴谷先生が亡くなられ、しばらく指導者不在で試行錯誤しながら活動していました。竹澤ヘッドコーチ就任により、選手のみなさん、マネージャーのみなさんにとって道標ができました。「もう大感謝です!!」と、小田さんは力強く感謝の気持ちを口にしました。
「私が1回生のころ、女子マネージャーは1人だったのですが、1人増え、2人増え、今年度は4人で活動してきました。入部したきっかけはそれぞれなのですが、本当に選手思いで、部の元気印! 3人は感謝すべき存在だなと日々感じます。大経自慢のマネージャーです(笑)」と、明るく元気よく話してくれました。
選手のみなさんも、マネージャーのみなさんも、イキイキと取り組む姿勢が伝わってきました。ありがとうございました!