大学陸上・駅伝

連載:M高史の走ってみました

箱根予選会で20位まで上がってきた東京経済大、「ダイナマイ東経」な挑戦とは

箱根駅伝予選会でチーム最高順位を更新した東京経済大学の皆さん。今年はさらに上位、そして箱根本戦を目指します

「M高史の走ってみました」です! 東京経済大学陸上競技部・駅伝ブロックのみなさんと走ってきました。昨年の箱根駅伝予選会では20位とチーム最高成績を更新。新チームのスローガンは「ダイナマイ東経」!! いったいどんなチームなのか、ワクワクしながら行ってきました。

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池谷駅伝監督が語る箱根の思い出

指導するのは、就任2年目の池谷(いけがや)寛之駅伝監督(44)です。大東文化大時代はエースとして活躍。学生時代に一番印象に残っていることを聞くと、4年生の箱根駅伝を挙げられました。

「けが明けで臨んだ箱根でした。痛みはようやくとれたんですが、練習は積めていない状況です。それでも2区を任せてもらいました。チームを引っ張ってきた自負もありました。でも結果は、大ブレーキ。仲間が挽回(ばんかい)してくれて、なんとかシード権を獲得できたんです」。悔しい結果に終わりましたが、「陸上で恩返ししたい」という気持ちで実業団でも頑張れたそうです。

Honda、日清食品グループ、NTN、新電元工業と渡り歩き、ニューイヤー駅伝には計9回出場しました。Honda時代の2000年にマークした5000mの13分25秒72は、現在もHonda陸上競技部の日本人歴代最高記録です。

就任2年目の池谷寛之駅伝監督。豊富な競技経験に加えて理論も交えてご指導されています

陸上界の名将や日本代表の選手からも直接学んできた経験をお持ちです。さらにはNTNではサラリーマン生活も送りました。「そのとき市民ランナーとして走っていた時期もあったのですが、マラソンは練習していないと走れないと実感しましたね(笑)」。培ってきた経験が指導に生かされています。

その後、新電元工業で3年間の監督生活を経て、2018年から東京経済大学の駅伝監督に就任しました。

昨年の予選会で20位と過去最高

「せっかく大学に来て陸上をやってるんだから、本気で箱根を狙っていこう」。池谷監督は就任後、チームの意識改革に取り組みます。選手の背中を押すような声をかけ続けてきました。

自信をもって臨んだ一昨年の予選会では、目標を下回って27位に終わります。「調子もよく、前半から突っ込んで、5kmの通過が5000mの自己ベストより速かった選手もいました(苦笑)」。調子のよさが裏目に出て、多くの選手がオーバーペースで入り、後半失速してしまいました。

悔しさを味わった選手たちから「本気で箱根を目指したいです! どんな練習でもするのでメニューを組んでください!」という声が上がりました。練習メニューについては選手とよくコミュニケーションをとり、実力や様子を見ながら調整しているそうです。

関東学生連合チームに選出された森陽向選手。4年生となる今季、キャプテンとして走りでもチームを引っ張ります

その結果、昨年の夏前にはチームの結束も深まり、夏合宿の雰囲気も上々。予選会ではチーム史上最高の20位。森陽向選手(3年、山手学院)が関東学生連合チームに選ばれました(本戦は出場なし)。

認知科学や性格分析、脳科学も活用

「毎週、学生同士でミーティングをしています。スタッフは情報共有はしますが、基本的には学生だけで話し合うようにしてます」と池谷監督。できる限り、やらされるのではなく、自ら考えてやるという環境作りですね。さらには4年間で「競技だけでなく、社会に生きていく術を身につけてほしい」という池谷監督の思いがあります。

「挨拶(あいさつ)、礼儀、コミュニケーション、人間関係などを大切にしてほしいです」。池谷監督自身が「人に助けられて生きてきました」と言い、縁や人とのつながりを大切にされてきたからこその言葉です。

部員の前では次のように、メンタルに関する話をすることが多いそうです。

「学生のうちだから失敗できることもあります。失敗から学んでほしいですね。レースでも評価を気にしすぎないで、どんどんチャレンジしていってほしいです。チャレンジして失敗しても怒りません。走りの改善点なんかをアドバイスすることはあっても、怒ることはないですね」
「4年間、1日1日、後悔のないようにチャレンジしてほしいです。応援される人間に、そして他人を応援できる人間になってほしいですね」
「東京経済大学の精神である『進一層』を走りで具現化したいですね!」
※『進一層』困難に出合ってもひるまずに、なお一層前に進む

チームとして、まずは全日本大学駅伝の関東選考会に出場すること。そして箱根駅伝を目指すだけはなく、そこで戦えるチーム作りをしていきたいと話されました。「出ることが目標だと、出ることすら難しいですからね」

また、認知科学、性格分析、脳科学などから、理論的な指導も採り入れているそうです。「チームビルディングでも活用されるFFS(Five Factors & Stress)理論を活用して、個性、性格のタイプに合わせた指導や声かけをしています。数値でタイプがわかるので、相手を理解するのにもつながります。選手も前向きに、興味津々に取り組んでくれますね。走ることはキツいかもしれないですが、学びながら楽しんでほしいです」

クロカン練習に参加しました!

練習に参加した日は、埼玉県営狭山稲荷山公園での不整地や起伏を使ってのトレーニングでした。東京経済大は武蔵村山キャンパスのグラウンドを中心に練習しているそうですが、この日は冬休み期間ということで足を伸ばしたそうです。

練習にも参加しました!この日は稲荷山公園でのクロカントレーニング

練習メニューは120分のクロカンでした。公園内には1周約2km弱のクロカンコースがあります。芝生や落ち葉でふかふかのコース。適度に起伏もあり、全身を使ってバランスよく鍛えられそうです。

「学生時代、大東文化大学では月曜日はサーキットトレーニングをしていました。そのほかけがが多かったので、不整地クロカンをなるべく走って強化していました」

監督自身の経験からも、不整地でのトレーニングに定期的に取組んでいます。

実業団、大学、高校など多くの選手が利用している公園です

僕もみなさんと一緒にじっくり走りこみました。地道なトレーニングが脚作り、体作り、スタミナ強化につながっていくんですね!

「背中で引っ張る」と新3年の樋田選手

たっぷり走ったあと、選手のみなさんにも話を聞きました!

大川歩夢選手(1年、伊豆中央)

高校時代は5000mが15分12秒でしたが、昨年14分36秒まで記録を伸ばしてきました。
「池谷監督から声をかけてもらって進学を決めました。高校では3000mSCを中心に取り組んできました。高校時代は一人で走っていたので、いまは楽しいです」。一人で練習していた高校時代の練習量に比べて、大学の練習量の多さに驚いたそうですが「最初はキツかったけど、いまはA(チーム)でも練習できるようになりました!」。

3000mSCからハーフマラソンまで活躍が期待される大川歩夢選手

昨年の予選会ではハーフマラソン1時間7分11秒の成績。「後半キツくてタイムが落ちてしまいました。年明けからハーフを3本走るので65分切りを目指したいですね」。その後、2月2日の神奈川ハーフでは1時間6分11秒と自己ベストを更新しました。

「関東インカレでは3000mSCで決勝に進みたいです。そして、箱根駅伝を走りたいですね。静岡出身の1年生がほかの大学で頑張っているので、刺激を受けてます!」

樋田侑司選手(2年、弥栄)

高校時代のベストは5000m15分59秒ということで「箱根を目指せるレベルじゃありませんでした」と振り返ります。大学でメキメキと力をつけ、5000mは14分28秒、10000mは29分31秒までベストを伸ばしてきました。

驚異の伸び率でチームのエース格に成長した樋田侑司選手

「この2年がとても濃くて、あっという間でしたね。寮生活も生きてます。自分のことを自分でやるというのは競技に生きますし、レースの強さにつながってきます。走ってるときも一人ですし、自分でどうにかするしかないので」

3年生となる来シーズンは関東インカレで爪跡を残したいという樋田選手。5000mで13分台、10000mは28分台を目標にしています。「箱根出場に向けて結果を出したいです。背中でチームを引っ張っていきたいです!」と、力強く話してくれました。

宮田共也選手(3年、長野日大)

「けがで思うようにいかないときもありましたが、箱根駅伝が目標で、やめてしまっては絶対にできないですし、恩返ししたいと思って続けてきました」。現在の自己ベストは5000m14分53秒、10000m30分32秒です。

予選会ではチーム内3位に。4年生になる今シーズンは森主将とともにチームを引っ張ります

「個人では練習を継続して、関東インカレのハーフマラソンで入賞したいです。チームでは箱根出場が目標です!」。関東学生連合チームに入った森キャプテンと一緒に走りたいという宮田選手。4年生になる次のシーズンは、走りでチームを引っ張ります。

そして選手たちの兄貴分的な存在の井村光孝コーチ(34)にも取材しました。

関東学院大学時代、当時の関東学連選抜チームで8区を走り、区間2位の快走(この年の関東学連選抜は総合4位!!)でした。卒業後は実業団の小森コーポレーションで競技を続け、その後母校の豊川工業高校(愛知)でコーチを務め、2017年より東京経済大のコーチをしています。「20位とジャンプアップしたので、次回が楽しみです。選手と年齢が近いので、話しやすい関係だと思います。常に謙虚でいたいですね」

就任3年目となる井村光孝コーチ。学生時代は関東学連選抜で8区を走り区間2位の好走

チームを勇気づけた4年生の引退レース

取材の最後に、チームを勇気づけたエピソードを教えてもらいました。

4年間けがを繰り返した高野竣也選手(4年、那須拓陽)が、予選会後も練習に参加。最後の最後の記録会で5000mを走り、14分51秒10の自己ベスト!

4年間、故障続きだった高野選手(※写真中央)が最後の記録会で自己新。チームに勢いをつける力走でした

高野選手は「4年間けがが多くて、最後の記録会前は、とにかく後悔がないように取り組んでいました。これまでの記録会では『次』がありましたが、最後の記録会では次はないので、いままで以上に気合いが入ってました。高校の同期で日本体育大の廻谷賢(めぐりや・けん)選手とはよく一緒に食事をして、競技に対する姿勢や考え方を話しました。近くに強豪大学で活躍している選手がいることは、いい刺激になりました。池谷監督からも『最後なんだから思い切り楽しんできなよ』と声をかけてもらい、全力で最後の記録会に挑めたと思います」

池谷駅伝監督も「感動しました」とたたえる力走。最後の最後まであきらめない姿勢に、後輩のみなさんも大いに刺激を受けたようです!

粘りの走りを引き継ぐ「ダイナマイ東経」から目が離せませんね!

樽本監督は元「日本最高記録」保持者 杜の都初出場の兵庫大で走ってきました!

M高史の走ってみました