12年ぶり全日本大学女子駅伝出場の城西国際大 「マラソン博士」森岡芳彦監督の下で
今回の「M高史の陸上まるかじり」では、12年ぶりに全日本大学女子駅伝出場を決めた城西国際大学女子駅伝部さんに取材させていただきました。2005年には全日本大学女子駅伝で3位にもなった城西国際大ですが、2012年以降、その舞台から遠ざかっていました。一昨年11月に森岡芳彦監督、松井(旧姓・橋本)康子コーチが就任し、今年ついに12年ぶりの全日本行きを決めました。
練習メニューを1年分まとめて渡す
森岡芳彦監督は実業団の監督時代に橋本康子コーチや小崎まりさんといった数多くの選手をご指導、育成されてきました。
今まで指導してきた選手たちのラップタイムといったデータをすべて保管されていて、監督部屋はファイルに囲まれています。「マラソン博士」の異名をとり、マラソン解説の声がかかることも多く、先日のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)でもU-NEXTの配信で横田真人さんと解説を務められました。
森岡監督が就任してちょうど2年。昨年4月に取材で伺った時から1年半ぶりでしたが、見違えるほどチーム力が進化していました。
練習メニューを1年分まとめて渡すのが森岡監督流。「目的がぶれてくるので1年分作るんです。大きな目標に向けてそこから逆算して作っていきます。そうするとぶれないんですよね。練習メニューはほとんど変わっていません。設定タイムの現実値と期待値の波長が、この1年でかみ合ってきました」と手応えを感じていらっしゃいました。
今シーズン、U20日本選手権5000mでは長島奈南選手(1年、成田)が16分23秒39で8位入賞。昨年の全国高校駅伝優勝メンバーである仁科玲美選手(1年、長野東)も加入し、チームを盛り上げてきました。
9月の関東大学女子駅伝で出場権は獲得できませんでしたが、全国の大学の中から5000m6人のシーズンベスト上位チームがアディショナル枠で選出されます。城西国際大学はこのアディショナル枠で全国の切符をつかみ取り、12年ぶりの全日本に挑みます。
朝練からインターバル! 練習に参加しました
練習に伺った日は、朝6時スタートで1000m×3のインターバル。授業の関係でなかなかそろってポイント練習ができないため、早朝に行うことが多いそうです。
朝5時過ぎには寮で体操などを行い、ウォーミングアップを兼ねてグラウンドへ走って向かいます。各自トラックで流しなどを行い、集合してから6時にポイント練習が始まりました。
城西国際大には全天候型の300mトラックがあります。ここを3周と100mすると1000mになります。通常の400mトラックですと、2周半で1000mなので、この3周と100mという感覚が新鮮です。
1本目、2本目、3本目と僕が引っ張らせていただくことに。全日本前の大事なポイント練習ということで自分の試合以上に緊張しましたが、走る前に設定ペースと同じタイムで300mを1本走って現状把握。400mトラックと300mトラックの微妙な感覚の違いをつかんでからポイント練習がスタートしました。
おかげさまで3本とも設定タイムで走ることができました。森岡監督が細かくラップを読んでくださり、50mごとにコーンも置かれており、すごく走りやすかったです。400mトラックでの練習だと200mごとにコーンがあるのはよく見ますが、50mごとは珍しいですね。順天堂大学の名将・澤木啓祐先生が50mごとにコーンを置かれていたのを参考にされているそうです。
ちなみに、ラスト1本はエリザベス・ジェリ選手(4年、青森山田)がスーッと上がってきまして、それにともなって他の選手たちも上がってきて、自然と設定ペースよりも速いタイムで練習を終えました!
「力の差がある選手も距離を分割して一緒に走ります。全部は走りきれなくても分割して参加することで、チームの一体感が伝わってきますね」と森岡監督。
ちなみに森岡監督は、3本目にペースが上がってくることまで事前に想定して、設定タイムを決めていたそうです。
「最後を3分05秒に近づいてほしいなと思っていましたが、もともとを3分05秒に設定すると、もっと速く走ろうと力んでしまいます。でも、3分10秒と言っておけば最後に自然と上がってそのくらいになるんですよ。そのさじ加減を少しつかんできました」。選手の心理にも気を配りながら、長年の指導経験と現在のチームや選手の性格なども考慮した上での絶妙なタイム設定。途中で距離を分割した選手も加わって、最後は全員でしっかりと走りきりました。
「学生たちの気持ちが乗ってきています」と森岡監督もチームの勢いを感じていらっしゃいます。
欲張らず、身の丈に合わせて少しずつ
ポイント練習のあとはダウンジョグ。寮で朝食をとって皆さんすぐに大学の授業へ向かいます。中には英語や保健体育の教員免許を取得予定の選手もいて、その分、授業数も多いようです。この日は朝練後に介護体験の実習に行く選手もいました。選手の皆さんとお話をしていても、明るく真面目で一生懸命なチームの雰囲気が伝わってきました。
「今後の目標は、三段構えで考えています。まずは全日本に出場する。次は全日本で12位以内に入って富士山女子駅伝の出場権をとる。その次は全日本の8番が見えてきたらいいなと思っています。まず出場したことを喜んで走ってほしいなと思います。欲張らず身の丈に合わせて少しずつ上がっていけたらと思います」と森岡監督は言います。
森岡監督、松井コーチを含むチーム全員が初めての全日本大学女子駅伝。全国から集まる強豪校に挑み、襷(たすき)をつなぎます。現状打破!