陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

特集:第100回箱根駅伝

元マネージャーの視点から気になったフィニッシュ時の様子 箱根駅伝予選会リポート!

14年ぶりに箱根駅伝予選会へ伺ってきました!

今週の「M高史の陸上まるかじり」は10月14日に開催されました第100回箱根駅伝予選会のお話です。記念大会ということで全国から大学が集結し、史上最多の57校が13枚の箱根路行きの切符をかけて熱い激戦を繰り広げました。

リザルトや各校のインタビューは様々なメディアに詳しく載っていると思いますので、今回は僕が感じた箱根予選会レポにお付き合いいただけたら幸いです。

予選会の現地に伺うのは、実に14年ぶりでした

僕自身、箱根駅伝予選会に伺ったのは14年ぶりでした。14年前は駒澤大学がまさかのシード落ちから、予選会新記録でトップ通過を果たした時でした。駒澤大学の高林祐介コーチが4年生の年です。僕は大学を卒業をしてM高史として活動する前、福祉の仕事をしておりました。フレックス勤務だったため、希望休を出して休みをいただき、応援に駆けつけたことが懐かしいです。その年度の箱根駅伝で駒澤大学は総合2位になりました。

それ以来、かなり久しぶりの予選会。会場はとにかく広くて、国営昭和記念公園内に入ってから出るまで、ランニングウォッチで歩数を確認したところ、1万歩以上! 複数の地点を移動しながら応援されていた方はもっと多いと思います。

昭和記念公園にはよく市民マラソン大会で伺うのですが、同じ公園でも全然空気感が違いますね。

移動中、東京陸上競技協会の審判の皆様にもお会いしました。たくさんの方の支えがあって、開催されているんだなというのを感じます。

スタート付近、みんなの原っぱ、沿道などは、とにかく人、人、人! またメディアの方の多さにも驚きました。M高史はさまざまな大会の取材にも伺わせていただき、執筆もさせていただいていますが、中でも予選会の多さには驚かされます。

さらに、今回は全国から参加ということで、応援の方もいつもより多かったのかもしれません。全国からのぼりばたが集まりました。

立川駅には各大学ののぼりばたが。今年は関東以外の大学の旗もそろいました!(撮影・M高史)

テレビやインターネット上での情報もありますが、各大学がポイントごとに分かれて情報収集し、選手に伝えていく姿は、戦国時代の合戦のようでした。

レースが終わると、力を出しきって明るい雰囲気の大学がある一方で、不安な表情が伝わってくる大学も。手応えは空気からも伝わってきますね。

知っていると便利な、ロードレースの正式タイム

以前、計測関係者の方にお話を伺ったのですが、ロードレースの場合も0.01秒単位まで計測はしているそうです。ただ、ロードレースの場合は小数点以下を繰り上げたものが正式タイムになります。例えば、1時間03分58秒99でフィニッシュすれば正式記録は1時間03分59秒。1時間03分59秒01だったら小数点以下が繰り上がって1時間04分00秒になります。この場合、差が0.02秒だとしてもロードレースの記録のルール上、正式なタイム差は1秒になるわけです。

繰り上がっても同タイムだった場合は、小数点以下のタイムを基準にして順位がつきます。例えば、今回の予選会でいうと1時間01分31秒で3人の選手が同タイムでフィニッシュしていますが、5位にカマウ・パトリック選手(上武大学)、6位にピーター・カマウ選手(国士舘大学)、7位にデイビッド・シュンゲヤ・ネイヤイ選手(麗澤大学)とわずかな差で続きました。

よく「フィニッシュで時計を押さずに駆け抜けるように」ということを指導者の方が徹底しているチームもありますよね。腕時計を止めに行く動作をせずにフィニッシュ地点をより0.01秒でも速く駆け抜けることに集中すれば、ロードの場合、結果として「1秒」の差になることがあります。100分の1秒までが正式タイムとなるトラック種目との違いですね。

さらにいえば、計測チップがアスリートビブス(ナンバーカードの正式名称)についている場合、トラック種目の短距離のように少しでも胸を突き出してフィニッシュすれば、ほんの少しでもタイムはよくなります。

箱根駅伝予選会1位でフィニッシュする日本大学のシャドラック・キップケメイ選手(右)と2位の日本薬科大のデニス・キプルト選手(撮影・吉田耕一郎)

これで1人が1秒を縮めると、10人で10秒差となります。東洋大学のスローガン「その1秒をけずりだせ」という言葉の通り、まさに1秒をめぐる争いとなりました。

今大会は記念大会ということもあり、上位13校が本戦出場となったわけですが、12位の駿河台大学、13位の山梨学院大学、14位の東京国際大学の3校は、総合タイムでわずか10秒差以内です。

12位 駿河台大学   10時間39分40秒
13位 山梨学院大学  10時間39分47秒
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14位 東京国際大学  10時間39分50秒

現在の大学駅伝界は各校の実力差が拮抗(きっこう)しています。1秒をけずりだすため、最後の最後、時計を止める動作ではなくて胸を突き出して駆け抜け、0.01秒まで絞りだすことが明暗を分けるのかもしれません。

理想は川内優輝選手のフィニッシュ!?

小数点以下を繰り上げるのは箱根予選会に限らず、全ての公認ロードレースで共通しています。選手の皆さんや市民ランナーさんで、もし1秒でも速いタイムを求めている方は、フィニッシュ地点で時計を止める動作をせずに、駆け抜けていただきたいです。わずかなタイムロスで、1秒差になる可能性があるからです。

実際、みんなの原っぱの大型モニターでフィニッシュ地点の映像を見ていましたが、フィニッシュ地点を駆け抜ける選手がいる一方、腕時計を止めながらフィニッシュしている選手も結構多いなぁというのが、今回の予選会で一番気になったことでした。マネージャー出身ということもあって、気になるポイントがマニアックですみません(笑)。

余談ですが、箱根駅伝予選会の翌日に行われたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では雨が降りしきる中、川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)が4位に入りました。スタートから独走し、35kmすぎに追いつかれましたが、座右の銘「現状打破」を体現される激走でした。川内優輝選手はフィニッシュの際、必ず胸を突き出して、駆け抜けます。ものまねさせていただく上で川内優輝選手のフィニッシュシーンは何度も拝見し、研究しています(笑)。優勝してもガッツポーズせずに勢いよく駆け抜けますし、本気のレースで腕時計を止めながらフィニッシュされる姿は見たことがありません。

箱根予選会翌日に行われたMGCで、先頭に立った川内優輝選手(代表撮影)

ボストンマラソンで優勝された時も胸を突き出してフィニッシュされた後、コースに向かって振り返ってからガッツポーズをして喜ばれていましたね!

少し話が脱線しましたが、何はともあれ、箱根駅伝予選会に出場された各大学の皆さま、関係者の皆さま、本当にお疲れ様でした。本戦に出場される各校の皆さんは今回本戦に届かなかった大学の思いも乗せて、熱く箱根路を駆け抜けていってほしいですね! 現状打破!

M高史の陸上まるかじり

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