陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

駒澤大学の赤津勇進選手が、地元レースで優勝! かすみがうらマラソン10マイルの部

駒澤大学にとってもご縁のあるかすみがうらマラソン。写真右から宮城珠良選手、大八木弘明総監督、赤津勇進選手、M高史(撮影・M高史)

「第33回かすみがうらマラソン兼国際ブラインドマラソン2023」が4月16日、茨城県土浦市からかすみがうら市にかけて開催されました。スタートとフィニッシュが土浦市、コース途中がかすみがうら市と二つの市にまたがって開催される大会に、全国各地から1万4000人を超えるランナーの皆さんがエントリーされました。

私、M高史は大会MCを務めさせていただき、スタート地点から選手の皆さん、参加ランナーの皆さんにアナウンスと全力応援をさせていただきました。

駒澤大学・大八木弘明総監督がエール

フルマラソン、10マイル、5kmと同時開催の「かすみがうらウォーキング」では、記録や順位を狙うアスリートから、健康のために歩こうという方まで老若男女が汗を流しました。

かすみがうらマラソンといえば毎年、10マイルの部に大学生選手が多く出場します。この大会から世界の舞台に羽ばたいた選手も多く、ハーフマラソンの適正を見極めたり、関東インカレのハーフマラソンに向けた選考だったり、これから伸びそうな新星が出てくる大会でもあります。

かすみがうらマラソン10マイルの部には大学生が多数出場(提供・かすみがうらマラソン大会事務局)

大学生では駒澤大学、順天堂大学、國學院大學、東京国際大学、帝京大学、専修大学、筑波大学、上武大学、流通経済大学、石巻専修大学、拓殖大学、城西国際大学、東北福祉大学、東洋大学から、男女ともに多くの学生選手が集結しました。

駒澤大の大八木弘明監督改め、大八木総監督が、スタート地点のステージにサプライズゲストとしてご登壇くださり、スタートを控えた選手の皆さんに激励のメッセージをかけてくださいました。学生選手や多くの市民ランナーさんに向けて、まるで運営管理車から声をかけられているようなパワーを与えてくださり、スタート前も拍手と歓声が沸いて熱気に包まれました。

スタート前、選手の皆さんに大八木総監督から熱いエールが!(提供・かすみがうらマラソン大会事務局)

赤津勇進選手は、前夜祭で選手宣誓も

10マイルの部では、ラスト1.5kmで仕掛けた駒澤大の赤津勇進選手(4年、日立工業)が48分07秒で優勝。2位には現状打破を体現し続ける百戦錬磨のプロランナー・川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)で48分22秒、3位にはハーフマラソンで1時間01分01秒の記録を持つ佐藤諒太選手(警視庁)で48分29秒、4位には駒澤大の宮城珠良選手(3年、花咲徳栄)が48分45秒で続きました。

優勝を飾った赤津選手は、前夜祭の選手宣誓も務めました。「初めてで緊張しました。レースの方が気楽なくらいでした(笑)」と前夜祭は緊張したそうですが、レースでは自信あふれる攻めの走りを見せました。

前夜祭で選手宣誓をする赤津選手。翌日の10マイルでは優勝を飾りました。左は大会会長・安藤真理子土浦市長(提供・齋藤零司さん)

赤津選手は「大八木監督からも『順位』と言われていたので、取るべき順位は1位しかないと思っていました。集団の人数が絞られてきてラスト2kmで周りを見たら3人で、ラスト1.5kmで自分から勝負を仕掛けていきました。抜かれたらどうしようという不安もありましたが、ラスト1kmで後ろの選手が離れていたのでこれはいけるだろうと思いました」

地元・茨城県のレースに出場したことについては「『勝つんだ!』という気概で臨みました。自分たちが最上級生になり、自分たちが引っ張っていくんだという気持ち、チームを引っ張っていく一員だという気概を下級生に見せないといけないです」。今後の目標については「前期は5000m、10000mで自己ベストを出したいです。夏を過ぎて、駅伝に絡んでいきたいです」と優勝の喜びよりも、選手層の厚い駒澤大での激しいメンバー争いへの意気込み、そして最上級生としての覚悟やチームへの思いが伝わってきました。

宮城珠良選手「山登りの対策を」

4位に入った宮城選手は、学生の中では赤津選手に続いて2番目でフィニッシュしました。

「優勝争いを目標にしていたので、4番ということですごく悔しいというのが一番の気持ちです。大会前に調子も上がってきていたのでチャンスはあるかなと思っていました。実際に終盤まで余裕があったので、場合によっては前に出られそうと思っていたのですが、自分よりも赤津さんや川内さんは、全体的な力が上だったと思いました」。今後については「今回、優勝できなかったのは悔しいですが、調子が戻ってきたり、長い距離もそんなに悪い印象ではなかったので、夏に向けてトラックで自己ベスト更新していきたいです。夏頃から年末に向けて山登りの対策をやっていこうと思うので、イチから練習をしっかりやっていきたいと思います」。

昨年の激坂最速王決定戦で3位に入り、上り坂の強さも発揮した宮城選手。ロードでの強さにも注目です。

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大八木総監督にもお話を伺いました。

「(優勝した赤津選手について)調整練習でも余裕を持っていい調整をやっていました。その前の距離走もしっかりやれていて、距離走とスピードのバランスも良かったと思います。駅伝メンバーに入ってくるためには『安定性』と『夏にしっかり走ってくれること』。そうすれば箱根あたりもしっかり走れるようになるのかなと思います。やはりスタミナをしっかり作ることが大事と考えてやってほしいなと思います。勝ちは本人にとってものすごくうれしいのと、自分の中で少しずつ自信に変わってきたんじゃないかなと思います」

4位となった宮城選手については「もうちょっとスタミナ的なところと、暑さにもうちょっと強くなってくれれば。スタミナがちょっと足りなかったかな」。両選手への期待をお話されました。

大八木総監督は両選手への期待をお話くださいました(撮影・M高史)

実は大八木総監督の方がタイムは上だった!

余談ですが、かすみがうらマラソンの前身にあたる土浦ロードレース大会の10マイルで大会記録を持っていたのが、選手時代の大八木総監督です。その時のタイムが48分06秒ということで、なんと今回の赤津選手よりも1秒早い!

大八木総監督ご自身はタイムまで覚えていらっしゃらなかったそうですが、関係者から話をお聞きになり「俺の方が1秒勝ってる!」と満面の笑みで談笑されていました。陸上への情熱、教え子への愛情、そして究極の負けず嫌い!だからこそ、指導者として長く実績を築かれてきたのだと、あらためて恩師の偉大さを感じました!

そして10マイルで全体の2位に入ったのは、川内優輝選手!4月23日のロンドンマラソンに向けて良い感覚をつかめたそうです。レース後はファンの方との写真撮影に応じ、私、M高史とも「現状打破!」と声高々にポーズまで決めさせていただきました(笑)。モノマネをさせていただいている身としては、感謝と感激の気持ちでいっぱいでした!

10マイルの部で2位となった現状打破の元祖!川内優輝選手。次戦は4月23日のロンドンマラソンです(撮影・M高史)

他の各種目でも、続々と現状打破

女子10マイルでは、拓殖大学がワンツーフィニッシュを果たしました。梅木優子選手(4年、湘南台)が58分02秒で優勝し、2位には伊井萌佑子選手(4年、八千代松陰)が58分57秒で続きました。

梅木選手は「今日は初めての10マイルという距離でした。後半から1人になってしまってキツかったのですが、周りの沿道の方がたくさん応援してくださって、キツいところで粘ることができました。今年はラストイヤーなので、トラックでも駅伝でも活躍できるような選手になりたいです」とレースの振り返りと、今後の目標をお話されました。

10マイル女子の部で優勝した拓殖大の梅木選手。トラックや駅伝でも注目です!(撮影・M高史)

フルマラソンの部では日本大学のOB・ガンドゥ・ベンジャミン選手が2時間14分56秒の独走で優勝。女子は松村幸栄選手(コモディイイダ)がそれまで大会記録を持っていた早稲田大学OG・石橋早希江さんの記録(2015年、2時間41分27秒)を上回り、2時間39分17秒の大会新記録で優勝を飾りました。

ブラインドマラソンでは東京パラリンピックで活躍した選手の皆さんが力を発揮。男子はB-1で米岡聡選手(三井住友海上)が2時間40分21秒、B-2は堀越信司選手(NTT西日本)が2時間26分21秒で優勝。女子ではB-2で道下美里選手(三井住友海上)が3時間09分00秒をマークし優勝を飾りました。

個人的な話で恐縮ですが、米岡選手のトレーニングで以前、伴走・伴泳を務めさせていただいたことがあったり、堀越選手や道下選手にも取材をさせていただいたり、皆さまと交流もあったので、MCをしながら注目して応援もしておりました。

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今大会のブラインドマラソンアンバサダーで、アテネパラ男子マラソン金メダリストの高橋勇市さんは、スタート前にランナーの皆さまにエールを送られた後、自らも10マイルの部に出場し、1時間11分55秒でB-1の部の優勝を飾られました。

インフルエンサーの方々も大会を盛り上げ

大会では、チャリティアンバサダーとして有森裕子さんがコースを走りながら応援され、コース上でランナーの方々に熱いエールを送られていました。

前夜祭にて。右から、たむじょーさん、M高史、有森裕子さん、道下美里選手、三津家貴也さん

またゲストランナーでは、インフルエンサーとして大活躍中の三津家貴也さんがフルマラソンに挑戦。「ランニング×コメディ×YouTuber」たむじょーさんも5kmを走って盛り上げていました。三津家さん、たむじょーさんともに動画投稿もされていて、大会中はもちろん、大会終了後も盛り上げていましたね!

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スペシャルサポーターを務めた2023ミス日本グランプリ・吉岡恵麻さんの応援・声援もランナーさんの背中を押していました。

レース前に雨が上がり、朝の時点では13度だった気温も昼には24度に上昇。かと思えば、午後には急に雨も降ってきて、フルマラソン6時間の関門前には再び晴れてくるという、忙しい天候でしたが、M高史も感謝の気持ちを込めてMCを務めさせていただきました。

感謝と恩返しの気持ちでMCを務めさせていただきました

思えば学生時代はマネージャーとして、選手をエントリーする側だったかすみがうらマラソン。時を経てMCを務めさせていただき、さらには恩師・大八木監督(総監督)とステージでご一緒させていただける日が来るとは……。学生時代の自分が知ったら、さぞ驚くことでしょう(笑)

僕にとっての原点ともいえる駒澤大学での4years.で培った大切な経験を生かして、これからも陸上競技やマラソンに恩返しできるように、現状打破したいです!

というわけで、かすみがうらマラソンのお話でした。

M高史の陸上まるかじり

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