3年ぶり箱根駅伝本戦をめざす拓殖大学 新体制で「新時代」を築くチームを訪ねました
今回の「M高史の陸上まるかじり」では拓殖大学陸上競技部を取材させていただきました。過去、箱根駅伝には42度出場している拓殖大学ですが、この2年間は箱根路から遠ざかっています。4月から指導体制も変わり、ともに駒澤大学OBの井上浩監督、治郎丸健一コーチが就任。チームスローガンである「新時代」を体現するために新たなスタートを切った拓殖大学の皆さんにお話を伺いました。
大八木総監督と大学時代が重なっている井上監督
井上監督は長年、九州の名門・大分東明高校で指導されてきました。油布郁人選手(元・富士通陸上競技部)、大塚祥平選手(現・九電工陸上競技部)といった選手たちも大分東明高校と駒澤大の卒業生です。
駒澤大の大八木総監督とは選手時代に在籍時期が重なっていました。大八木総監督は社会人を経て大学に入られたこともあって、井上監督の方が学年は二つ上、年齢は4歳下という間柄です。
拓殖大の監督就任にあたり「大八木さんから激励も受けました。すごく頼りにしています」とお話された井上監督。僕にとっても駒澤大学の大先輩でもあり、大学の行事などでは声をかけていただいたり、大分東明高校への部活訪問などでも大変お世話になり、ご縁を感じています。
治郎丸コーチは、私M高史と同級生でもあります!
また、同じく駒澤大OBの治郎丸健一コーチは、実はM高史と同級生で、熱い4年間をともに過ごした同期です。
治郎丸コーチは大八木監督の熱いご指導のもと、4年生で箱根駅伝10区を走り、卒業後はいったん会社員に。そこから市民ランナーとして走り続け、2009年に大分東明高校のプレイングコーチに就任。前述した油布選手が高校3年生の時、寮に住み込んで選手たちと汗を流しながら指導にあたりました。井上監督とのタッグはそれ以来、14年ぶりとなります。
治郎丸コーチは大分東明高校プレイングコーチ時代、九州一周駅伝で出走した4度の全てで区間賞を獲得するなど、目覚ましい成績を残されました。1年後には日清食品グループで競技に復帰。その後は桜美林大学コーチ、ラフィネグループのコーチ、そして監督を経て、井上監督とともにこの春、拓殖大学のコーチに就任しました。
異色の経歴ですが、とにかく陸上が好きで、海外のトレーニングも積極的に学び、勉強熱心な方です。個人的には、卒業してからも一番よく電話をする同期で、お互い陸上の話が止まらないです(笑)
取材に伺った日、治郎丸コーチは不在でしたが「治郎丸コーチの出す練習メニューが面白いです」と選手からも好評でした!
ちなみに、昔からよく間違えられるのですが読み方は「じろまる」です!漢字もよく間違えられるのですが「治郎丸」です!ファンの皆さん、関係者の皆さん、ぜひ覚えてあげてください(笑)
「立ち上がり」の練習をご一緒しました
取材に伺ったのは、拓殖大の八王子国際キャンパス。高尾駅から近く、自然豊かで広大なキャンパスです。以前、取材に伺った時は調布の寮だったので、練習場所も別の場所でしたが、2年前に引っ越しをして、女子陸上競技部が活動している八王子国際キャンパスで男子も活動するようになりました。
以前は土のグラウンドでしたが、2020年にブルーの400m全天候型トラックと外周に1周500mのクロスカントリーコースが完成。クロカンコースには2つの大きなコブがあり、不整地でほどよい起伏も使って走ることができ、朝練習などでよく利用するそうです。内側には水濠もあるので、3000mSCに出場する選手は日頃から練習することもできますね。
この日の練習は「記録会に向けた調整練習」と故障明けなどの選手が参加する「立ち上がり」という名前の二つのグループに分かれての練習でした。
僕は立ち上がりグループの練習にご一緒させていただき、皆さんの現状打破ぶりを体を張って取材させていただきました。
立ち上がりグループの練習は、1000mごとにペースを上げ下げしていく変化走です。皆さんとの走力差は明らかで、全部はついていけないので、途中で抜けながらご一緒させていただきました。
一緒に走っていて感じるのは、選手の皆さんは軽快にポンポンポンっと前に進んでいくことですね。僕の方はといいますと、余裕もなくドタバタ走ってしまいます(汗)。改めて箱根を目指す選手の皆さんの走りに、驚きと尊敬の気持ちです。
調整練習組も集中した雰囲気の中、きっちりとペースを刻んでいきました。井上監督も就任したばかりですが、細かく選手の走りをチェック。大分東明高校を全国高校駅伝へ毎年導いてきた指導力と選手の走りを見る眼力で、拓殖大の選手たちがどう変貌(へんぼう)していくか楽しみですね!
練習後、監督・選手・マネージャーさんにインタビュー!
練習後、監督や選手、マネージャーさんにお話を伺いました。
井上浩監督
「(高校生の指導から大学生の指導ということで)新鮮な部分もありますし、高校生と変わらず純粋な部分もあります。これから改革をやる意味では活気があって、いいチームだと思いますね」
指導で大切にしていることは「一体感ですね。常に選手との距離感、会話を大事にしています。選手に寄り添った指導を心がけていますし、私自身も日々勉強と思っています。1年生に教えてもらうこともあるし、上級生に気付かされることもあるし、すごく毎日が新鮮ですね」。
治郎丸コーチについては「よくやってくれて頼れる存在です。大分東明の時に一緒にやっていましたし、駒澤OBで頼りになりますし、治郎丸との絆もしっかりしています。(今後については)大学も含めて、箱根復活を遂げようと、変わろうとしていることに魅力を感じます。チームはいいものを持っているので、今は土台作りをして、改革の一環を手がけています。純粋についてきてくれていて、チームも変わってきていて、活気づいて明るくなってきています。主将や主務を中心にしっかりやっていますし、メリハリをつけながら、頑張るところも踏ん張れています。まずは3年ぶりの箱根本戦出場に向けて、今やれることを一つひとつ、生活面や授業も含めて、充実してやっていくことですね!」
主将・菊地圭太選手(4年、那須拓陽)
「学年リーダーだったので、最上級生になる時に自分自身も主将をやりたかったですし、まわりも推薦してくれました。走力が一番あるわけではないので、その分コミュニケーションをとって、監督・コーチ、選手とのパイプになって考えを伝えたり、下からの意見を反映したり、そういった面で引っ張ることを意識しています」
「練習前後の当たり前の準備、ケアを徹底するようになりました。とにかく故障せずに練習を継続することですね。一体感、総合力でミスをしないことで、全員で予選会を戦っていきたいです。箱根予選会を突破することを一番の目標にしています。昨年の敗因は予選会前にいい練習できていましたが、1年間を通してトータルで練習できていなかったので、故障をせずに力をつけていきたいです。ラストイヤーなのでチャンスをものにしたいですし、今後の後輩たちの(飛躍の)きっかけにしたいです」
強矢愛斗(ごうや まなと)選手(3年、健大高崎)
「この2年間を振り返ると、ほぼけがでした。ずっとけがをして、治ってまたけがをしての繰り返しでした。昨年の予選会前からようやく走れるようになり、10月からはけがせず継続できています。11月、12月に自己ベスト(5000m14分12秒58、10000m29分30秒69、ハーフマラソン1時間03分39秒)も出せました。(今後の目標については)チームは箱根出場です。個人的には1区を走りたいです。まだ予選会を通っていないのですが。トラックでは10000mで28分25秒、拓大記録を狙っています。春から13分台、28分台を出したいですね」
高校時代は5000m15分01秒がベストだった強矢選手ですが、けがを乗り越えて急成長!走りでチームを引っ張ります!なお強矢選手は、4月30日に行われた早稲田大学競技会で14分00秒08。自己ベストを更新し、13分台まであと少しに迫りました。
菊地正一朗主務(4年、滋賀学園)
「高校3年生の時にマネージャーになりました。選手としてはなかなか結果が出ず、大河(亨)先生(滋賀学園高校陸上競技部監督)にマネージャーを勧められました。箱根に関わりたいと思って拓殖大学でもマネージャーになりました。1年生の箱根本戦ではマネージャーとして往路3区、復路10区の選手の付き添いでした。箱根本戦の雰囲気を味わえてよかったです」
マネージャーの仕事は「練習のサポートや試合のエントリーなどです。授業が始まって練習時間を調整することも仕事の一つです。現在のチームは選手と監督・コーチの対話が増えてきています。今年は予選会を絶対に突破して第100回箱根に出場します!一昨年11位で落ちた時も悔しさを忘れずにいましたが、昨年もうまくいかずに18位、悔しさをバネに今年は絶対に出場します」
菊地主務を中心にマネージャー9人が一丸となって選手の走りを支えます。
また、留学生のラファエル・ロンギサ選手(1年)は4月22日の日体大長距離競技会で10000m28分24秒26をマーク。ジョグの時はチームメートと一緒に走るなど、コミュニケーションも積極的に図っています。
箱根路への回帰に向けて、新体制で、新時代に向けて現状打破しています!