陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

拓殖大主将・赤﨑暁は有言実行 上尾のハーフで箱根に弾みつける日本勢トップ

右手を高く上げて日本人トップでゴールした赤﨑(撮影・藤井みさ)

上尾シティマラソン ハーフ男子大学生の部

11月17日@埼玉・上尾運動公園陸上競技場とその周辺

1位 ラジニ・レメティキ(拓殖大)1時間1分23秒
2位 赤﨑暁(同)        1時間1分48秒
3位 小野寺悠(帝京大)     1時間2分3秒

11月17日、埼玉県上尾(あげお)市で上尾シティマラソンがあり、ハーフ男子大学生の部で拓殖大のラジニ・レメティキ(1年、オファファ・ジェリショ)と主将の赤﨑暁(4年、開新)がともに61分台の好記録でワンツーフィニッシュした。

積極的な走りでレースを引っ張った

例年この大会には、箱根駅伝に出る大学の選手が数多く参加する。学校によっては箱根のメンバー選考の意味合いも持つ重要な大会だ。1カ月半後の本番に向けて、真剣勝負が繰り広げられる。スタート時は快晴、風もほぼない絶好のコンディション。3kmまで先頭は1km3分ペースで進み、「遅く感じた」という赤﨑は積極的に前に出て引っ張った。10km付近まで引っ張り、その後もレメティキらと引っ張り合いながら、赤﨑は終始先頭集団でレースを進めた。15km地点でレメティキがスパートし、トップに立つ。赤﨑はレメティキに遅れること25秒、2位でゴールテープを切った。拓殖大の日本人エースとしてレメティキに勝ちたかったと言ったが、「スパートに反応できなかったです」と、素直に後輩をたたえた。

「ラジニの存在は大きい」と赤﨑はいう(撮影・藤井みさ)

「61分台と日本人トップを目標にこのレースに臨んだので、有言実行できました」。表彰式後、赤﨑は充実した表情で語った。上尾シティマラソンの日本人大学生上位2人は、翌年3月開催のニューヨークシティハーフマラソンに招待される。昨年も「絶対にニューヨークに出る」と臨んだが、10km地点で転倒して遅れ、思いはかなわなかった。「そのときから日本人トップになって、来年は絶対(ニューヨークに)出るぞと決めてました」。強い気持ちでここに戻ってきた。しかし「海外に行くこと自体初めて」という赤﨑。パスポートもなく、「急いで実家に帰らなきゃ……」と報道陣を笑わせた。

もっと上で戦える自信がついた

この春のシーズンは、思うような結果が出なかった。しかし夏合宿では、4年間で最も練習を積めた手応えを感じ、夏合宿後すぐの9月22日にあった日体大記録会で10000m28分27秒90の自己ベストが出た。これで、もっと上で戦える自信がついたという。

11月3日の全日本大学駅伝は、エースが集まる3区で3位。区間新記録だった(撮影・藤井みさ)

駅伝シーズンに入ってからは、積極的な走りが続く。出雲駅伝は1区で区間3位、全日本大学駅伝は3区の区間3位と好走した。「いままでだったらレースの前に緊張してたんですけど、出雲や全日本は『早く走りたい』という気持ちでした。今回も『早く走って結果を出したい』と思って走りました」。実力が上がり、心も成長したことが、いまの好結果につながっている。

「お前が日本人最速」監督の言葉に背中を押され

拓殖大は今年3月、2010年からチームを率いてきた岡田正裕監督(74)が勇退し、35歳の山下拓郎監督が引き継いだ。山下監督は岡田前監督のもとでコーチを務めていたので、選手とは勝手知ったる間柄だ。赤﨑は山下監督体制になったことについて「選手と年齢も近く、みんなが相談しやすくなりました」と話す。その山下監督から夏合宿が終わったころに「亜大、拓大と見てきたけど、お前が日本人最速」との言葉をもらい、背中を押してもらったと感じている。「今日は足が痛いから練習を変えたいとか、いろいろわがままを受け入れてもらった部分もあるので、今回は結果で恩返しできてよかったです」

レメティキとのタスキリレー。箱根でもふたりはチームを引っ張る原動力となる(撮影・安本夏望)

21年ぶりに学生三大駅伝にフル出場する拓殖大だが、ここまでの成績は出雲駅伝9位、全日本大学駅伝16位と、いずれも目標としていた8位入賞には届かなかった。全日本を終えて選手全体でミーティングして「このままじゃダメだ」という意識を共有したという。結果的に上尾でワンツーとあわせ、20人ほどが自己ベストで走った。チーム全員の意識が前向きになり、好結果につながったと赤﨑は言う。

箱根駅伝でのチーム目標は3年連続のシード権獲得、そして過去最高順位の更新だ。赤﨑に個人としての目標を尋ねると「出雲、全日本で区間3位だったので、区間賞をとりたいです」と、力強い言葉が返ってきた。レメティキと2、3区のどちらかで走り、前半で勢いをつけて「あわよくばトップを取りたいですね」と笑う。充実のラストイヤーを迎えている主将は、チームをどこまで引き上げられるか。

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