陸上・駅伝

特集:第51回全日本大学駅伝

全日本で連覇逃した青山学院大 箱根こそは「失敗しないので」

苦しい表情でゴールするアンカーの飯田(撮影・藤井みさ)

第51回全日本大学駅伝

11月3日@愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
1位 東海大   5時間13分15秒
2位 青山学院大 5時間14分59秒
3位 駒澤大   5時間15分4秒

全日本大学駅伝が11月3日にあり、2連覇を狙った青山学院大は1位の東海大と1分44秒差の2位だった。「力負けですよ。東海の方が、力があったということです」。ゴールの伊勢神宮で、青学の原晋監督は淡々と語った。

「駅伝力ゼロ」の酷評を挽回した中村友哉

連覇を狙う青学は、4区終了時点でトップと1分37秒差の8位だった。「4区終了で1分離されると厳しい」。そう原監督が語っていた中で優勝の望みをつないだのは、6区(12.8km)を走った中村友哉(4年、大阪桐蔭)だった。先月の出雲駅伝が三大駅伝初出場。最終6区を走ったが、3位から5位に落としてしまった。そのレース後、原監督は中村について「駅伝力ゼロ」と酷評していた。「監督の言う通りです。出雲で痛感した」と言った中村。これまた初出場となる全日本駅伝を、リベンジのチャンスととらえていた。

中村は軽やかな走りでチームを7位から3位へと押し上げた(撮影・安本夏望)

トップと1分差で襷(たすき)を受け取ると、1km付近で、1秒差で前にいた東京国際大を軽々と抜き去る。「追う展開で、走りやすい位置でもらえた」と中村。4kmすぎに早稲田大と國學院大を抜いて4位に浮上。9kmすぎで東洋大を抜き3位に立つ。第6中継所に近づくと、手を振る吉田圭太(3年、世羅)が見えた。1位の東海大と1分3秒差の3位。「1分以内でつなぐ予定だったので、それができなくて悔しい」と表情を曇らせたが、レース後の原監督は報道陣に対して「(中村を)箱根も走らせる」と明言。中村は「4年生の意思の強さがチームを動かす。自分はすべての駅伝が最初で最後になります。箱根では区間賞をとって、チームの優勝に貢献したいです」と話した。下級生中心のチームで「4年生の奮起」が鍵だった全日本。中村友哉が4年生の意地を見せつけた。

去年の森田を意識して臨んだ吉田「力が足りない」

7区(17.6km)を走ったエース吉田圭太(3年、世羅)には、物足りなさが残った。1km手前で2位の順天堂大をかわし、前に出る。「10km以内で独走態勢に入りたい」と考えていたが、想定通りにはいかなかった。13kmすぎに東海大の松尾淳之介(4年、秋田工)をとらえ、首位に浮上。一気に突き放そうとしたが、16kmすぎに松尾に抜かされる。17kmで襷(たすき)を持つと、ラストスパートをかけた。3位から1位に押し上げる。東海大に2秒差をつけて最終8区につないだが、東海大に優勝を許した。「体が動かなくて、キツくなるのが早かった。粘ることで精一杯になってしまった」と、吉田は猛省した。

トップに立ち突き放したい吉田だったが、貯金を作れなかった(撮影・田辺拓也)

昨年の7区では主将でエースだった森田歩希(ほまれ、現・GMOアスリーツ)が走った。2位からトップの東海大を猛追。3kmで並ぶと、9km付近で振り切った。1分58秒の大差をつけ、優勝を決定づけた。吉田はこの走りを意識して臨んだ。「森田さんは強いな。まだまだ力が足りてない」と苦笑い。原監督も「吉田には30秒突き放す力がない。そのあたりが森田と比べ、真の大黒柱と呼べないところですね」と、厳しい口調で話した。「正直、(駒澤大1年生の)田澤(廉、青森山田)にも負けて悔しい。箱根では負けられない。区間賞も取りたいですし、万全の状態で臨みたいです」と吉田。次の箱根で真のエースとなれるだろうか。

箱根ではもう「失敗」しないんで

結果だけを見ると、レース前々日に原監督の掲げた「私、失敗しないんで大作戦」は“失敗”に終わった。3区で『手術』に時間がかかっちゃったなぁー。『容態』を見ながら快方に向かって全員が頑張った。(3区は)『再検査』が必要ですね」。いつもの独特な言い回しで話した。「再検査」の診断を受けた3区の神林勇太(3年、九州学院)は、残り3kmで失速し、チームを7位に後退させてしまった。「1区間のミスが全体を後手に回す」。戦国駅伝を象徴する場面となった。

3区9km地点で神林(後)に声をかける原監督

今大会で青学の区間賞はなかった。それでも総合力で2位まで持ってきた。三大駅伝の最後となる箱根に向けて、原監督は言う。「収穫はあった。箱根に向けて楽しみになってきました。やっと優勝を狙うと公言できる位置に来たんじゃないですかね」。昨シーズンの「最強世代」と呼ばれた4年生たちが抜けた今年。前評判が高くない中で、湯原慶吾(2年、水戸工)や岸本大紀(1年、三条)、飯田貴之(2年、八千代松陰)といった戦力を整えてきた。2カ月後の箱根路ではもう、「失敗」しない。

※青学大・吉田圭太選手の「吉」の字は本来「口」の上が「土」の「𠮷」ですが、機種依存文字のため「吉」で表記しています。

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