「駅伝戦国時代」の到来 全日本大学駅伝2日前、「5強」の監督大いに語る!
- いよいよ11月3日、第51回全日本大学駅伝が開催されます。1日には名古屋市内で監督記者会見があり、三大駅伝で優勝経験のある5大学の監督があれこれと語りました。
「私、失敗しないんで」大作戦
まずはそれぞれの目標の発表から。青山学院大の原晋監督からは、お決まりの作戦名発表がありました。
青山学院大・原晋監督(前回優勝)「私(青学大)、失敗しないんで大作戦」
「昨日ですね、夜9時からテレビ朝日を見て元気を出して、テンションを上げてここに来ました。群れを嫌い、派閥を嫌い、スキルのみで16年間頑張ってきました」と、全日本大学駅伝を中継するテレ朝の人気ドラマ「ドクターX」にかけて作戦名を発表。「いまの駅伝界は『5強』と言われてます。しかし1区間でも失敗があれば5番、あるいは6番、7番とシード圏外に弾き飛ばされます。失敗しないで優勝を目指すという意図で、この作戦名にしました」
東海大・両角速監督(前回2位)「優勝」
「とくに原監督のように作戦名はないんですけど、優勝を目指して、学生たちもそういう目標を掲げて取り組んできたので、それが実現できるように頑張りたいです」
東洋大・酒井俊幸監督(前回3位)「優勝争いに加わる」
「出雲駅伝は混戦のレースでした。今回もしっかり名前のある選手が走れば混戦になると思います。前回大会は東洋大学はミスが多く、優勝争いに加わることができませんでしたので、失敗しないで、ミスをしないで、優勝争いに加ることをテーマとして頑張っていきたいと思います」。失敗しない、が原監督の作戦名と重なり、会場の笑いを誘いました。
駒澤大・大八木弘明監督(前回4位)「3位以内」
「2014年に優勝してから3位、4位、4位、4位ときてるもんですから。やはり3位以内に入っていかないと優勝争いはできないと考えてきて、その力はついてきたと考えているので、謙虚に3位以内と書きました。出雲はいいところまでいきましたが、まだ優勝できるチームじゃないんだと思わされました。ミスなく走っていきたいです」。教え子の國學院大・前田監督について問われると「2回はやはり負けられませんので、今回はやはり勝たせてもらいたいと思ってます」と、笑顔で語ります。
國學院大・前田康弘監督(前回6位)「3位以内」
緊張した面持ちで「こういう場に呼んでいただけて大変光栄です」と切り出すと、「(三大駅伝すべての)3位以内を(今シーズンの目標に)掲げているので、しっかりそれを超えるべく頑張っていきたいです。したたかに、謙虚に、と思います」。
オーダーのポイントは?
全日本大学駅伝は、当日の朝に3人までエントリーを変更できます。最終的に誰をどの区間に配置するのか、戦いはすでに始まっています。ほぼ全チームにこのあと変更があるのは間違いありませんが、現時点での区間配置についてのポイントは? という質問が投げかけられました。
青山学院大・原監督
「出雲駅伝では後半区間の5区、6区の4年生が思いのほかブレーキになりました。全日本大学駅伝につきましては4年生の奮起が優勝に向けてキーとなるのではないかなと思っています。エントリーの補欠の中から鈴木(塁人、4年、流経大柏)、吉田祐也(4年、東農大三)は8区間の中に中に入ってきます。エース吉田圭太(3年、世羅)も入ってきます。4年生の頑張りが大学駅伝の勝敗を分けると言っても過言ではない、大学スポーツのよさだと思ってますので、彼らの奮起に監督として期待しています」。出雲駅伝後も口にしていた「4年生の奮起」について、改めて言及しました。
チーム状況や自信のほどについては「夏合宿までは誰をどの区間に配置するかまったく考えられなかったんですが、夏合宿を経て状態が上がってきました。出雲のあとも大きな故障なく上がってこられてる。それなりに恥ずかしくない走りが、前半からできるのではないかな」と、自信をのぞかせました。
東海大・両角監督
「昨年は2位でした。3区に館澤(亨次、4年、埼玉栄)を使い、後続を30秒ほど引き離して、4~6区で先行して7区で逆転されたんです。去年からコースが変わっていますが、3区、7区あたりがポイントになってくると思います」。キーマンとしては3区の塩澤稀夕(3年、伊賀白鳳)の名前を挙げ「桑名市出身で(地元の)ここに配置したので、粘り強く走ってもらいたいです」と話しました。
東洋大・酒井監督
「ポイントとなる区間は、すべてだと思ってます。混戦だなと思ってて、『超スーパーエース』という選手は少ないので、ほかの大学もつないでいくという形になると思ってます。何かあったときのためというのも含めて、相澤(晃、4年、学法石川)を(エントリーから)外してますけど、じゅうぶん調子の方はいい状態ですので、流れを変えたり加速させたり突き放したり、そういう走りを求めていきたいと思います」。26日の競歩高畠大会50kmで東洋大の川野将虎(3年、御殿場南)が日本新記録を出して優勝し、東京オリンピックの代表に内定したことに触れ、「長距離の子たちもそれに習って東洋らしい攻めの走りを目指すと言ってますので、1秒を削り出すような走りをしていきたいと思います」。
あえて勝負の区間をあげるなら? と問われると、苦笑いして少し困った様子を見せた酒井監督。「あえていうなら相澤が走る区間ですね。全日本では2度、1区と8区で区間賞を取ってます。先日の出雲駅伝でも区間賞を取ったけど、先頭に出られない区間賞でした。ただ区間賞を取ればいい、ではなく、エースらしく、足跡として残る区間賞を取ってほしいです」と、キャプテンへの期待を口にしました。
駒澤大・大八木監督
「前半をきちっとしのいで、後半につなげたいなと思ってます。全部の区間が重要だと思ってますので、とにかくミスをしないで後半につなげていきたいという考えはあります」。出雲でアンカーとして残り700mで抜かれた中村大聖(4年、埼玉栄)や出雲で快走した田澤廉(1年、青森山田)が補欠に入っていることについては「中村は(腰も)順調に回復してるし、田澤は順調に走れてます。このふたりにはやはりチームに貢献してほしいし、レースの流れを変えられる選手になってほしい」と、期待を寄せました。
國學院大・前田監督
「私どもは『4強』に比べたら選手層が薄いです。(全日本は出雲から)2区間増えるので、エース力を十分に生かしていかないと勝てないと思います。そういう考えから土方(英和、4年、埼玉栄)は(最終)8区に配置しましたが、エースの浦野(雄平、4年、富山商)をどこに置くか。全区間大事な駅伝かなと思います。ほかの大学の出方を見ながらというところですが、浦野、藤木(宏太、2年、北海道栄)、茂原(大悟、4年、高崎)を使う予定ではあります」。どんな考えで配置するのですか? と問われ、「前半の流れ、後半の締め、どちらを重要視するかで決めていきたいです」と返しました。
お互いが意識する大学は?
それぞれの監督に、意識する大学については?という質問。青学の原監督は「この5大学は非常に力のある選手とノウハウに優れた監督がそろっているので、どこが勝つかわからないといったところ。東洋の酒井監督は思い切った配置をするので、いまの記者会見を聞くと1区に相澤くんを配しそうだと思うんですが、いかがでしょうか?」と酒井監督に切り込み、会場から笑いが起きます。それを受けた酒井監督は「1区が出雲駅伝と同じ展開になるんだったら、(いま補員に入っている)札幌学院大学のローレンス・グレくんもあるのかなと思ってますので、集団が縦長になることも十分ありうると思います」と語りました。
さらに司会者が原監督に対して「國學院についてどう思いますか?」と質問を重ねると、「解説者じゃないんだけどな……」と言いつつ「私の予想では7区に茂原くん、エースの浦野くんはこれを見ると3区でしょうか?」と、前田監督を“直撃”。また笑いが起こりました。そして「グレくんのハイスピードについていけるのは、東洋大学の相澤くんしかいないんじゃないかなと思って、こりゃ困ったなと思ってます。1区、2区と東洋大学が独走するんじゃないかな? なんて考えたりもしますね」と語りました。
駒澤大の大八木監督は「この壇上に上がってるのは、みんな優勝できそうなチーム」と言いつつ「國學院は強いです、そう言っときます。でも負けられません」と、教え子へのリベンジの思いを口にしました。
ほかの大学の選手をもらえるなら、誰?
会場には当日、「監督車」と呼ばれるバスに乗り込む増田明美さんの姿も。増田さんからの質問は「もし、ほかの大学の選手をひとり自分のチームにもらえるとしたら?」でした。
原監督は「多分みな同じことを言うと思うんですが、やはり東洋大学の相澤くんだと思います。今回だったら酒井さん、1区でしょ?(笑)」と、相澤1区説にこだわります。両角監督は「田澤君がほしいです」と答えて会場を沸かせました。「うちのチームに合ってるんじゃないかな? スピードもありますし、すぐ転校してくれたらあと3回走れる(笑)」
相澤を擁する東洋大の酒井監督がほしいのは「(國學院大の)浦野選手ですね。相澤と動きが似てるところもあるので、そのまま箱根まで貸してほしい選手ですね」と笑わせます。大八木監督は「当然相澤君がいたら勝てるチームになると思うので、彼がほしいですよね」と言い、前田監督も「相澤選手ですね。箱根の2区と5区で相澤、浦野を使ってみたいです(笑)」と答えました。
各大学の監督の思惑が交錯した記者会見。戦いはすでに始まっています。3日、まっ先に伊勢神宮のゴールに駆け込んでくるのは、果たしてどの大学になるのでしょうか。
※青学大・吉田圭太選手の「吉」の字は本来「口」の上が「土」の「𠮷」ですが、機種依存文字のため「吉」で表記しています。