大学陸上・駅伝

相澤晃とともに箱根駅伝総合優勝を 東洋大・酒井俊幸監督(下)

練習中、選手の動きに細かく目を配る(すべて撮影・佐伯航平)

東洋大陸上部長距離部門の今年のテーマは「世界への挑戦と学生駅伝の優勝」です。主将の相澤晃(4年、学法石川)は、7月のユニバーシアードのハーフマラソンで金メダル。世界への挑戦で好結果を残し、10月14日に出雲から始まる学生三大駅伝に臨みます。酒井俊幸監督(43)へのインタビュー後編では、駅伝シーズンに向けての話を聞いています。

世界を目指すことが学生駅伝のレベルアップにつながる 東洋大・酒井俊幸監督(上)

体ができてきたのに伴って走力が上がった

今年は相澤が主将になったことで、フィジカルや食育に対する取り組みを全員が強く意識するようになったと、酒井監督は感じている。「彼は非常にいい素材ではあるんですが、けがが多くて、大事な試合でも万全な状態で走れないことが多々ありました。1年生のときの関東インカレでは当日に欠場を決めたり、箱根駅伝の直前にもノロウイルスにかかってしまったり……。あのとき順調に走れてれば、また面白かったんだろうなと、いまとなっては思いますけどね。本当にコンディショニングで苦労した選手です」

食育の大切さを改めて感じるという酒井監督

そんな相澤が走れるようになり、さらに強くなれたのは、本人の意識が変わったということなのだろうか。「意識もありますが、体ができあがったというのが大きいです。大学でしっかり食べて、鍛えて。彼に関しては、体ができてきたのに伴って、走力が上がってきました」。相澤がしっかり走れるようになるのを見て、酒井監督も改めて食育の大事さを実感したという。「食事に力を入れるようになったのは今年で3年目ですが、それが実を結んだ一例が相澤です。これからも東洋大学として、食に関しては大事にしていきたいですね」。相澤の背中を見ている後輩たちにも、その姿勢は伝わっている。

東海や青学を「逃がさない」「逃さない」

「9月になってようやく足並みがそろってきたのかなと思います」。いまのチーム状況を尋ねると、酒井監督はそう答えてくれた。「相澤も前半戦やユニバの疲労なんかがあって、西山(和弥、3年、東農大二)も同じような感じでした。エース級がそういう流れで、ほかの選手にもけが人が出ていたりしたので、8月は少し出遅れた感がありました」。チームとして8月は焦らずに調整し、9月から本格的に走り込みができるようになったという。

左が94回、右が95回箱根駅伝の往路優勝のトロフィーだ

駅伝シーズンの展望について聞くと、「まずは出雲から。やるからには優勝を狙っていかないと、と思います。去年も優勝を狙いながら、アンカー勝負で負けてしまって2位。全日本も3位。箱根は最近、往路がよくても復路が勝負だと言われますから、相澤とともに総合優勝したいですね」と語った。

箱根の総合優勝のためには、何が必要だろうか。「今年の95回箱根駅伝を振り返ってみると、やはり東海大、青学大は選手層が厚い。1度遅れてしまうと、そう簡単には追いつけません。『逃がさない』『逃さない』のが、優勝のためには大前提です。いまはいわゆる『つなぎの区間』がありません。失敗してもいいから1年生に挑戦させる、といったことが難しくなってきてますね。ルーキーが挑むには、よっぽど力がないと難しいと思います。94回のときは1年生3人を使って往路優勝しましたが、まああれはちょっと賭けでしたね(笑)」

相澤には「印象に残る区間賞」を

東洋大学で今年の箱根駅伝を走ったメンバーのうち、卒業したのは3人だけ。だが酒井監督は「その中でも山本修二(現・旭化成)と小笹椋(現・小森コーポレーション)は主力中の主力だったので、やはり穴は大きいです」と話す。次なる好結果につながるように、各学年にエース格を育てていきたい、とも考えている。4年生は相澤、3年生は西山。2年生では関東インカレのハーフマラソン2位の宮下隼人(富士河口湖)、4位の蝦夷森章太(愛知)の名前を挙げた。「1年生は、まだこれからですね」とは言ったが、何人かは、出雲、全日本でも起用したいという考えはあり、実際に出雲のメンバーには児玉悠輔(東北)が入った。

鉄紺の襷。トップでゴールすることができるか

やはり、酒井監督が相澤に期待するところは大きい。「学生最後に足跡を残してほしいなと思いますね。ただの区間賞ではなく、印象に残る区間賞を。どの区間で入っても存在感を残してほしいです」。相澤選手は箱根の2区を走りたいと言っていましたが、と水を向けると「まあ、それは全体を見て(の決断)にはなりますけど、やはり今年の塩尻(和也、順天堂大~富士通)君の記録も意識してるんじゃないかな。記録を出せば(OBの)服部勇馬(トヨタ自動車)超えにもなるので、乗り越えたい先輩なんじゃないかなと思いますね」。相澤をどの区間に起用するかは明言しなかった。

純粋に競技に取り組み、さらなる高みへ

東洋大の長距離部門には競歩選手も含まれていて、池田向希(3年、浜松日体)は世界陸上の20km競歩に出場し、6位入賞。部門は異なるが、走り幅跳びで津波響樹(つは・ひびき、4年、那覇西)もドーハへ行ってきた。同じグラウンドでOBの桐生祥秀(日本生命)やウォルシュ・ジュリアン(富士通)などが練習していることもあり、トップレベルの選手を身近に感じられる環境にある。

このグラウンドから世界へと、選手たちは羽ばたいていく

「ウチの部では駅伝だけのために特別に取り組むというよりは、純粋に『陸上競技』に向き合って取り組もう、という形ができてきてると思います。世界レベルの選手の動き、練習を間近で見ていると、それがチーム全体にも伝わる。いい雰囲気ができてると思います」。東洋大の歴史の中で、いままでになく世界とつながってる感じですね、と言うと「『近いようで遠い世界』ではなくて、『近いようで難しい世界』、ですね」と返して、酒井監督は笑った。

世界に羽ばたく選手を育て、駅伝のレベルも引き上げる。酒井監督の挑戦は続く。

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