大学陸上・駅伝

世界を目指すことが学生駅伝のレベルアップにつながる 東洋大・酒井俊幸監督(上)

東洋大のグラウンドで、笑顔で撮影に応じてくれた酒井監督(イメージカット撮影・佐伯航平)

東洋大学の存在感は、日本の男子長距離界で日に日に大きくなっています。今年のチームのテーマは「世界への挑戦と学生駅伝の優勝」。陸上部長距離部門の主将・相澤晃(4年、学法石川)はこの7月、ユニバーシアードハーフマラソンで金メダル。MGCではOBの設楽悠太(ホンダ)が果敢に飛び出し、服部勇馬(トヨタ自動車)は2位で東京五輪のマラソン代表に内定。その手腕にも注目が集まっている酒井俊幸監督(43)にインタビューしました。前編では「世界への挑戦」について語ってくれています。

学生のうちからオリンピックを「目指す」ことが大事

酒井監督のインタビューの直前に相澤に話を聞いた。そのとき「オリンピックを目指すようになったのは監督からの働きかけがあったからです」と話した。酒井監督は、どのタイミングで相澤がオリンピックを目指すべきだと思ったのだろうか。「(4月14日の)金栗杯で、相澤は服部弾馬(東洋大~トーエネック)の東洋大学記録(13分34秒64)と同じぐらいのタイム(13分34秒94)で走りました。服部はとにかくスピードを追い求めた練習を積み重ねて出しましたが、相澤はハーフマラソンに出場した直後であのタイムだったので、まだまだ高いポテンシャルを秘めていると感じました。加えて、柏原(竜二)、設楽兄弟(悠太、啓太)、服部兄弟(勇馬、弾馬)と同じレベルの練習ができてきたのを見て、『オリンピックを目指そうよ』と。いま出場できる、というのではなく、目指すこと、挑戦することが第一歩になります。学生のうちからその第一歩をしっかり踏むレベルだな、と感じました」

今年5月の日本選手権10000mでの相澤(29番)。4位の結果に「物足りなかった」と口にした(撮影・藤井みさ)

やはり、意識として「上」を目指すことが大事だと酒井監督は言う。オリンピックの代表選考レースを目指せるのは、競技人生の中で何回もあるわけではない。「まず経験値を高めることです。過去に挑戦した経験があれば、いざ競技者として脂がのって、本気でオリンピックに出たいとなったときに必ず生きてきます。服部勇馬もMGCで最後まで冷静でした。オリンピック選考会には、勇気と経験が必要なのです。箱根駅伝が頂点なのではなく、学生時代からさらに上を目指して取り組むことの大事さを伝えたいですね。とくに、今年はオリンピックの前年です。世界ランキング、ポイント制なども始まっているので、指導者もそれを見すえていかないといけないと思います」

1試合をものにするか、しないか

酒井監督自身が、世界に目を向けるようになったのはいつからなのだろうか。「具体的には柏原ぐらいからですね。2011年はユニバーシアードもありましたが、彼は世界陸上を目指すことを選びました。大学1年のころから大学生の世界大会を経験していたので、次は世界選手権を目指しました。設楽兄弟については、啓太はモスクワ世界陸上を目指して取り組みました。悠太はけがが多かったので、学生の世界大会路線をいきました。もっとちゃんと体ができてから、さらに上を目指そうと」

監督に就任して10年。その間に多くの選手を育ててきた

啓太と悠太は、いまは状況が逆になった。悠太は社会人1年目、2015年のGGN(ゴールデンゲームズのべおか)の10000mで27分41秒を出して参加標準記録を切り、北京世界陸上の代表に内定。そこからリオオリンピックに出るという好循環になった。啓太はけがをしてGGNに出られなかった。「ちょっとした1試合をものにするかしないかというのが、本当に大きくなってきます。それだけ、参加標準記録を切るのはギリギリの戦いです。そこを順調に突破するかどうかで、その後のプランニングが変わりますね」

10000m27分台、駅伝でも区間賞

いま、東京オリンピック10000mの参加標準記録は27分28秒00だ。村山紘太(城西大~旭化成)の持つ日本記録27分29秒69を上回る。だからといって白旗を上げるのではなく、まず27分40秒台、30秒台と攻略していくことが大事だと酒井監督は語る。「目指すタイムによって10000mの走り方も変わってきます。そのための5000mであり、駅伝なんです。世界ではマラソンの高速化の流れが止まりません。2時間3分台、4分台の選手の10000mの記録はどうなのか? という話なんです」

世界はどんどん変化している。指導者も、指導方法もどんどん変わらなければ、という

相澤は日本選手権の5000m、10000mで日本人学生のトップ。「どの大学に所属していたとしても、そのレベルの選手だったら27分台を目指していかないと。可能性を秘めた選手だったら世界を目指していくんだ、と。そういう姿勢が卒業後にすごくいい経験になり、学生駅伝のレベルを上げていくことにもなりますから」。世界を目指すのなら、国内の学生駅伝で負けるわけにはいかないと思うのは当然。「これぐらいは走らなきゃ」という考え方になる。オリンピックを目指す以上、駅伝の区間賞は必須、と酒井監督は断言する。

思わず聞いた。駅伝の練習と高速化したトラックの練習は、並行してできますか? その答えは「できますよ!」だった。「駅伝だってスピードを出せないと主要区間で区間賞はとれません。『スピードとスタミナの融合』と言われますが、それがスタンダードとなり、当たり前という発想にならないと、世界では厳しいです」。相澤にも「マラソンをやるために、10000mの記録を作ろう」と言っている。それが相澤にもしっかり伝わっているようだ。

明日公開の後編では、10月14日の出雲から始まる駅伝シーズンについて聞いています。

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