トラックシーズン不調の青学主将・鈴木塁人、駅伝シーズンを前に吹っ切れた
第88回日本学生陸上競技対校選手権 男子10000m決勝
9月12日@岐阜メモリアルセンター 長良川競技場
13位 鈴木塁人(青山学院大4年) 29分16秒26
10月14日の出雲駅伝から始まる駅伝シーズンに向け、各大学は最後の夏合宿に入っている。昨シーズン、出雲駅伝と全日本大学駅伝を制した青山学院大も、9月16日から新潟・妙高での3次合宿。チームを主将として支える鈴木塁人(たかと、4年、流通経大柏)は日本インカレ10000mのレース後に笑顔で言った。「駅伝に向けての焦りはまったくないです。このシーズン走れてなかった分、駅伝では走れるんじゃないかとポジティブに考えてます。それが自分のいいところでもあるんで」
突っ込んでは沈んできたトラックシーズン
青学は今年の正月、5連覇と史上初となる「2度目の学生駅伝3冠」を目指して箱根駅伝に臨んだが、往路で6位になったのが響き、総合2位で終わった。新チームの主将に就任した鈴木は2月3日の丸亀国際ハーフマラソンで日本勢トップとなる4位。記録は1時間1分45秒と大幅に自己ベストを更新した。しかし、4月からのトラックシーズンでは苦しいレースが続いた。4月20日の兵庫リレーカーニバルではアシックスチャレンジ男子10000mに出場。途中から腰に痛みが出始め、29分33秒69で33位に沈んだ。5月の関東インカレでは男子2部5000mと10000mに出場し、5000mは14分36秒37で14位、10000mでは30分9秒25で17位。前半から積極的に仕掛けたが、粘りきれないレースが続いた。
9月12日の日本インカレ10000mでは、原晋監督から「あんまり突っ込んでガツガツするな」と声をかけられたこともあり、集団の中ほどにつけてレースを進めた。2000m付近で立命館大の今井崇人(たかと、4年、宝塚北)が唯一、外国人留学生たちの先頭集団につけていたとき、鈴木はジョンルカ・ムセンビ(東京国際大1年)を先頭とした第3集団にいた。6000m付近で第3集団から遅れ始めたが、単独走になっても粘った。集団から遅れた選手を一人また一人と追い抜き、最後は13位まで順位を上げた。
トラックシーズン最後のレースを終えた鈴木は「まったくいいレースができなかった」と振り返った。ただ、日本インカレについては「まだまだ状態としては6~7割程度ですけど、それでも最後まで粘れたという意味で、これまでのトラックシーズンの中でも一番いいレースができたと感じてます」と言って笑った。
強い先輩たちが抜けた穴は練習で埋めるのみ
鈴木自身、1学年上の4年生たちが抜けた穴の大きさを実感していた。「去年はある種、能力のある先輩たちばかりだったんですけど、そういう方々が抜けたので、練習を一からしっかりやろうとチームの中でも話してました」と鈴木。それぞれの学年長がスタッフミーティングを重ねることで結束を深め、一次、二次と合宿に取り組む中でチームが一丸となっているのを感じている。鈴木は主将としてチームづくりに心を砕き、同期の竹石尚人(鶴崎工)や吉田祐也(東農大三)らが練習で引っ張っている。8月4日に夏合宿が始まってからは、チームの練習消化率も向上した。
鈴木個人としてはこれまで「チームを盛り上げたいと思っても調子が上がらず、キャプテンとしての見えないプレッシャーがありました」と振り返る。しかしそんなモヤモヤは、夏合宿前に吹っ切れた。「復活していく姿を見せるというのが、キャプテンとしての自分の大きな課題だと改めて気づけました。これまでの合宿も含め、結果としてまだまだですけど、形として少しずつ出てきてると思います」。鈴木はあくまでポジティブだ。
日本インカレでは谷野(やの)航平(4年、都立日野台)が1500mで4位に入り、3分45秒31の青学新記録を樹立。𠮷田圭太(3年、世羅)は5000mで13分43秒54という自己ベストを出し、日本勢トップの3位に食い込んだ。「日本インカレが一つのいいきっかけになって、自分自身も調子が上がってくるんじゃないかなって思ってます。駅伝シーズンでは面白いレースができるんじゃないか、というワクワク感があります」と鈴木。
日本インカレを終え、いよいよ駅伝シーズンだ。青学は土台作りの一次、二次合宿を終え、三次合宿ではスピード練習を含めたより実戦的なメニューに取り組んでいる。昨年果たせなかった学生駅伝3冠を目指す青学の中心に、元気印の主将がいる。