日体大・山﨑りさ、初の10000mで優勝 けがで3カ月走れず、自分を見つめ直した
2023日本学生陸上競技個人選手権大会 女子10000m決勝
4月21日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
1位 山﨑りさ(日本体育大3年)32分40秒40
2位 村松灯(立命館大3年)32分53秒32
3位 北川星瑠(大阪芸術大4年)33分09秒33
4位 谷本七星(名城大3年)33分25秒04
5位 原田紗希(名城大2年)33分32秒56
6位 尾方唯莉(日本体育大3年)33分50秒09
7位 磯野美空(関西大4年)33分53秒19
8位 永長里緒(大阪学院大3年)33分58秒92
4月21日に神奈川・レモンガススタジアム平塚で行われた「FISUワールドユニバーシティゲームズ日本代表選手選考競技会」の女子10000mで、日本体育大学の山﨑りさ(3年、成田)が優勝した。同時開催の2023日本学生陸上競技個人選手権大会では、1年生だった一昨年に1500mで優勝した経験がある。今回初めて走った10000mでつかんだ頂点だった。
「後半に自分でしっかり押していけた」
レースは1km3分15秒前後のペースで進み、4000m付近で先頭集団は山﨑のほか、大阪芸術大学の北川星瑠(4年、比叡山)、立命館大学の村松灯(3年、立命館宇治)、名城大学の谷本七星(3年、舟入)、関西大学の磯野美空(4年、丸亀)の5人となった。4000mから5000mは3分17秒、5000mから6000mも3分17秒と同じペースが続き、6000m過ぎには山﨑と村松の一騎打ちの様相となった。
ここに至るまで、山﨑が先頭に立って引っ張る姿はほとんど見られなかった。むしろ前に離されないよう、しっかりとついていった印象だ。「中盤まではすごい楽な感覚で走ることもできていたので、前が離れるのはもったいない。しっかり間を詰めていこうと思いました」。佐藤洋平監督からは「足が詰まるようだったら、自分でリズムを刻んでいった方が楽に走れると思う」と言われていたと明かし、初めての10000mにも関わらず、本番にきっちりとコンディションを合わせてきた。
山﨑が村松を引き離したのは8000m過ぎ。みるみると差が開き、最後は13秒の差をつけてトップでフィニッシュした。「後半に自分でしっかり押していけたのは良かったと思います」。32分40秒40と、初の10000mで32分台をマークしたことについては「最初のレースで32分台で走りたいと思っていて、自分の中でも目的の一つだったので、まずまずの走りだったかなと思います」と冷静に振り返った。
夏合宿は一人で補強をする日々
ルーキーイヤーだった2021年はこの大会で1500mを制し、華々しいデビューを飾った。しかし昨シーズンは6月に右の臀部(でんぶ)と内くるぶし付近を痛めてしまい、関東インカレ(1部)1500mで3位、5000mで優勝して以降は、ほとんどレースに出られないほどに悪化してしまった。
3カ月間は走ることもままならず、夏合宿では一人で補強をする日々が続いた。駅伝シーズンには何とか間に合い、10月末の全日本大学女子駅伝は1区区間3位。ただ1度もトップを譲らずに優勝した名城大学にいきなり20秒差をつけられ、本人にとっては満足のいかない走りとなった。
山﨑にとっては昨年負ったこのけがが、自分を見つめ直すきっかけとなり、今季の飛躍につながっていると分析している。「けがをせずに体作りをしながら、練習を継続できるかというところを、もっと考えるようになりました。そういう意味では、いい経験でもあったかなと思います」。弱い部位を重点的に補強トレーニングをするだけでなく、今まで以上に時間を使って体のケアにも努めた。練習で調子がいいときこそ、あえて抑え、練習をしすぎないようにすることも心がけたという。
5000mと10000mは別に考えている
山﨑は先に述べた通り、これまでは1500mや5000mで結果を残してきた。今回10000mで勝負したいと思ったのは、昨年5000mで内定をつかみながら新型コロナウイルスの影響で今年に再延期となった、FISUワールドユニバーシティーゲームズ(中国・成都)の存在が大きい。
「去年は5000mで選んでいただいたんですけど、再延期という形になって、すごく悔しい思いをしました。何としても代表権を勝ち取りたい。今回は5000mと両方エントリーさせていただいているんですけど、どっちを走ったとしても、代表に選ばれるようにという思いで、今まで練習してきました。その部分ではしっかりといいアピールができたかなと思います」
5000mと10000mの違いについて、山﨑はこう言う。「5000mは1500mの延長上でスピード(種目)の一環という感じです。10000mは学生のレースだと、まだ前半はゆっくりで1km3分20秒ペースぐらいで押していくのが印象的。どれだけ足を使わずに走るかというところで、5000mと10000mは別に考えている部分があります」
冬の期間はクロスカントリーで20km走を行ったり、個人ジョグでもペースを上げたりして、10000mに臨むための「距離を踏むこと」に加え、スピードにも磨きをかけてきた。スタートラインに立っても距離への不安はまったくなく、走りきることができた。
上級生となり、チームを引っ張る覚悟
今後は5月4日の「第34回ゴールデンゲームズ in のべおか」で5000mに出場する予定。昨年のけがの影響もあり、まだ破れていない日本選手権の参加標準記録(15分40秒)突破をめざす。秋以降の駅伝シーズンに向けては、昨年主将を務めた黒田澪(現・京セラ)が抜けた分を埋めるべく、「自分が最長区間を走る」と強い意欲を見せた。上級生となったことで、チームを引っ張る覚悟が芽生えてきている。