陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

名城大学女子駅伝部、Aチームと新入生参加の宮崎合宿メンバーにインタビューしました

右から谷本七星選手、増渕祐香選手、原田紗希選手、米田勝朗監督(撮影・M高史)

前回に続き今回の「M高史の陸上まるかじり」は、名城大学女子駅伝部のお話をお届けします。Aチームと新入生が参加した宮崎合宿を取材させていただきました。

練習の合間に選手の皆さんにインタビュー!6連覇を達成した全日本大学女子駅伝、5連覇を達成した富士山女子駅伝はもちろん、昨シーズンの振り返りから今後の目標までお話をうかがいました(学年は2023年3月現在で表記しています)。

【前回記事はこちら】名城大女子駅伝部の宮崎合宿、走って取材! 全日本6連覇、強さの秘訣を体感しました

新主将には6連覇のフィニッシュを決めた増渕祐香選手

山本有真選手(4年、光ヶ丘女子)
4年目は3000mで8分52秒19をマークし学生新記録、5000mは15分16秒71で日本人学生記録を更新した山本選手。初の日本代表となったアジア室内陸上3000mでは銅メダルを獲得されました。

「(トラックの記録について)まさかそこまで出せるとは思っていなかったので驚きました。(アジア室内は)日本代表も室内陸上も初めてでした。海外レースで盛り上がりがすごくて、会場も選手も楽しんでいる感じで、すごく自分に合っていました。(結果について)うれしいし自信になりました」

駅伝では全日本、富士山とも4年間すべて出場して全部で優勝。「4年間、色々なことがありました。苦しかったこともありましたが、今思うと楽しかったです。駅伝で特に印象に残っているのは、最後の富士山ですね。最長区間を任されて、しっかり(小林)成美(4年、長野東)に襷(たすき)を繋(つな)いで優勝できたのが印象に残っています。(レースでは10km超の距離が初めてでしたが)トラックの10000mでさえも走ったことがなかったですが、思ったよりも長くなく、沿道の応援が多くて楽しみながら走ることができました」

「4年間、名城大学で過ごしてきて、実業団に向けて自分で考えて行動する力が身についたと思います。(今後は)実業団でレベルアップしたいですし、目の前の目標としては世界選手権に出たいのでしっかり記録やポイントを狙っていきたいです」とお話された山本選手。この4月からは実業団の積水化学で競技を続けます。

トラックでは学生記録更新、駅伝では4年間全て優勝を飾った山本有真選手。実業団での活躍も期待ですね!

増渕祐香選手(3年、錦城学園)
全日本大学女子駅伝ではアンカー区間の6区を走り、史上初となる6連覇のフィニッシュテープを切った増渕選手。

「(6連覇は史上初ということで)今までとは違う緊張感がありました。どうやって6連覇の『6』を表現するかポーズも考えていたのですが、ラストはきつくてカッコ悪くなってしまいました(笑)。最後の角を曲がってみんなが見えた時に、鳥肌が立って安心したようなホッとした感覚でした」と歓喜の6連覇を振り返ります。

4月からは最上級生となる増渕選手は、主将に就任。「名城のキャプテン、日本一のキャプテンということで重圧はあることはありますが、光栄なことですし自分なりにうまくチームを引っ張っていけたらなと思います。駅伝では自分の思うように走ることができている部分はありますが、トラックなど春・夏シーズンの成績は満足いかないものがあるので、しっかり最後の年はやりきりたいです。駅伝では今年も2冠をして、この4年間を締めくくれるようにチーム一丸となっていきたいです。(走りのアピールポイントは)1人でもレースを作れることですね。あとは、腕振りがちょっと独特ではあるのですが(笑)力強さを見ていただけたらと思います!」。新主将としてチームを引っ張ります!

新主将の増渕祐香選手。走りでチームを引っ張ります!

五味叶花選手(きょうか、2年、長野東)
「1年生の頃はベストも出て、よい感じで走れていましたが、2年生で思うようにレースで結果が出せなくて悔しい時期がありました。これから3年生になって上級生になるので、しっかり自覚を持ってやっていきたいです。この春先のシーズンからいい走りができるようにしていきたいです」

自身の走りについて「全身を使って走ること、効率よく走ることを日頃から考えながら走っています。ダイナミックな走りに注目していただけたらと思います」と自己分析されました。

チームの魅力は「先輩後輩関係なく仲が良く、みんなで頑張ろうという雰囲気のチームです。(3年生での目標は)駅伝を走ってチームに貢献することです。その目標のために日々努力していきたいです」。3年目での飛躍に期待ですね!

駅伝メンバー入りを目指す五味選手。ダイナミックな走りに注目です!

谷本七星選手(ななせ、2年、舟入)
「大学に入ってから2年間、2年連続でどちらも(全日本、富士山)出場でき、4回とも区間賞を獲得できたので総合的には満足いく走りでした。ただ、ところどころ、昨年の富士山7区も納得いく走りができなかったり、1年生の富士山も区間新を狙っていたのに出せなかったりしました。年間を通じてトラックでもう少し出したかったですね」と区間賞を獲得したり、優勝に貢献したりしながらも課題をお話されました。

富士山では高低差169mの「魔の坂」を駆け上るアンカーの7区でしたが「もともとは上り坂が苦手でした。ただ2年生の前半にけがをして、フォーム改善に取り組んだところ、上り坂にも対応できるようになり、米田(勝朗)先生からも打診されました。今まではかかとで接地して安定した走りでしたがブレーキがかかっていました。3000mSCもやっていて、かかとから接地すると負担がかかるので、ミッドフッド走法のように(足裏)全面で着地するようにしています」

富士山では5連覇のフィニッシュテープを切りました。「すごくキツさもありましたが、仲間のために走ろうと振り絞りました。言葉にできないくらいの感動でした。名城大学ではハイレベルな環境に身を置くことで、自分自身も当たり前のレベル、基準が上がることが、競技力の向上につながると感じています。よくオンオフの切り替えがすごいと言われるのですが、私たちからしたらこれが普通で、勝手にスイッチが切り替わりますね(笑)」。今後の目標は「ユニバーシアード代表だったり、5000m15分30秒、10000m32分30秒、ゆくゆくは32分を切りたいです」。トラック、ロード、駅伝とすべてにおいて注目です!

全日本、富士山と2年間全て区間賞を獲得している谷本選手

言葉通りにユニバ代表内定をつかんだ原田紗希選手

石松愛朱加選手(1年、須磨学園)
全日本2区区間賞、富士山2区3位とチームの優勝に貢献した石松選手ですが、春先はやや苦しいスタートだったそうです。「けがをして入学したため、トラックシーズンはあまりレースで結果を残せず、前半は苦しみました。それでも同期に恵まれながらすごく楽しくやれていました」。そこから全日本、富士山のメンバーへ!

「全日本では2区を走りましたが、夏の時点では走れると思っていませんでした。全日本も現地に入ってから走ると聞かされて緊張しましたね(笑)。メンバーに入るのも熾烈(しれつ)でしたし、走れなかったらどうしようという責任も感じていましたが、6連覇のメンバーに入ることができすごく幸せでした」

「富士山は2区で不安もありましたが、2区をしっかり走ることができて自信になりました。卒業生の高松(智美ムセンビ)さんから『4.5kmの上りからが大事だよ』とアドバイスをいただいていたので、そこをポイントにして焦らず走ろうと思っていました。調子も良くて4.5kmからギアを上げて走ることができました」

連覇だけでなく2020年の富士山女子駅伝の2区以降、全日本も富士山も全区間首位で中継を続けている名城大学。「米田先生からも言われていて、トップで渡したいという気持ちはありましたが、走っている時も不安でした。ただ、次の区間が同期の(米澤)奈々香だったので、自分の力を全力で出し切ってから同期に渡したいという気持ちで頑張れたと思います」。プレッシャーを跳ね除けて首位で中継しました。

「今年はトラックでも走れる力を見せたいです。駅伝も絶対走りたいです。3000m、5000mでも自己ベストを更新したいです」と今季の目標をお話されました!

1年目から全日本、富士山の連覇に貢献した石松選手

大河原萌花選手(1年、学法石川)
「大学に入ってからの1年間、けがが多くてなかなか練習を積むことができず、悔しい気持ちが多かったですが、今は練習ができていて、合宿でも全て練習をこなせているので、いい合宿になっています」

苦しかった時期もありましたが「自分なりにケアを行ったり、親と電話したり、監督、コーチと話をしていい状態で走れるように、できる限りのことをやってきました。本来ならば同級生と同じくらい活躍したかったのですが、思ったようにならなかった1年でした。同級生もみんな強いので刺激を受けて頑張りました。後輩が入ってくることもうれしいですし、先輩として見本となるように、もっと頑張ろうと思います」と前を向きました。

目標は「まずは全ての種目で自己ベストを出して、全日本、富士山は選手として走りたいです。まずは1500mでスピードを磨いて、秋には5000mでいい記録を出せるようにしていきたいです」。1500m4分18秒65の記録を持つ大河原選手のスピードにも注目です!

けがを乗り越えてきた大河原選手。スピードを磨いて駅伝メンバー入りを目指します

柳樂あずみ選手(1年、筑紫女学園)
U20世界選手権1500m日本代表、富士山女子駅伝1区区間賞を獲得した柳樂選手。

「富士山では自分らしい走りで、攻められて良かったかなと思います。後半の下り坂で自分の得意なスピードを生かして、作戦通りの走りができたと思います。初めて優勝の経験でしたし、その中の一員としてうれしく思います」

1500mで4分15秒71をマークし、東海学生記録も更新した柳樂選手。「元々中学1年の時は短距離(100mやハードル)をしていましたし、中1の時は100mでジュニアオリンピックにも出場したことがあります。800mに取り組んでいた時期もあるのでスピードには少し自信があります。初めての海外遠征も含めて、新しいチャレンジができた1年間でした」と振り返りました。

「(今後の目標は)1500mをもう少し頑張りたいです。また、学年が上がるにつれて距離も伸ばしていって、中距離から長距離まで全部こなせるような選手を目指したいです」。今季も1500mから駅伝までマルチな活躍に注目です!

U20世界選手権1500m日本代表の柳樂選手。中距離から長距離までマルチな活躍に期待です!

原田紗希選手(1年、小林)
1年生ながら日本インカレ10000mで2位となった原田選手。

「高校時代、トラックで結果を出したことがなかったです。高校時代は5000mや10000mを走る機会なかったですが、長い距離が得意なので自分にとってはうれしいです。(日本インカレ2位は)正直、自分が一番びっくりしました!」

「ただ昨年の駅伝では一番大事な時期にピークを持ってくることができず、直前で変更になりました。本番で大事なところにピークを持ってくることが自分に足りないこと気づき、悔しかったですが勉強になりました。(チームの優勝は)来年は絶対走るという気持ちで応援しました。うれしい気持ちと悔しい気持ちがありましたね」

今後の目標については「世界で走る経験をしたいです。昨年走れなかった分、駅伝は二つとも出走して優勝メンバーになりたいと思います。新入生も強いので先輩として負けないようにしたいです」。この言葉通り、地元・宮崎での合宿を経て、3月19日の日本学生女子ハーフマラソンで3位となり、 FISUワールドユニバーシティゲームズ日本代表に内定!この夏、世界の舞台に挑みます!

日本学生女子ハーフマラソンで3位となり、ワールドユニバーシティゲームズ日本代表に内定した原田選手

米澤奈々香選手(1年、仙台育英)
U20世界クロスカントリー選手権に日本代表で出場した米澤選手。

「初めての世界でのレースで、すごく緊張していた部分もありましたが、同じU20の代表メンバーとリラックスして『みんなで頑張ろう』とレースに臨むことができました。コースは本当にきつかったですが、世界の舞台で走れたのはすごく良い経験になりました。スタートから自分のペースでしっかり走り切れるようにと思っていましたが、トップの選手が折り返しで見えてやっぱりすごく速いなと感じました」

駅伝では全日本、富士山と区間賞を獲得し、チームの連覇に貢献しました。「やっぱり『名城大学といえば駅伝』というイメージですし、自分もメンバーに入ってチームの優勝に貢献したいと思っていました。メンバーに入るためにメンバー争いも激しかったですが、目標を達成することができて良かったです。強い選手が多くいる中で、練習の時から切磋琢磨(せっさたくま)できています。先輩方も憧れの存在ですし、生活や練習など吸収できることがたくさんあります」

今後は「日本学生個人選手権でしっかり上位に入りユニバ(FISUワールドユニバーシティゲームズ)日本代表を目指しています。あとは、たくさんレースが続くので、けがをしないようにというのも一つ目標にしています」。高校時代の活躍からさらに大学でも飛躍し、世界の舞台を見据えています。

U20世界クロカン日本代表を経験した米澤選手。トラックでのユニバー代表を目指しています!

今回の宮崎合宿は、Aチームと入学予定選手の選抜合宿となりました。在校生の皆さんにお話を伺いましたが、選手の皆さんからはさらなる高みを目指す様子が伝わってきました!

一方で、練習以外では先輩・後輩関係なく仲が良く、リラックス!こういったオフモードと集中モードのスイッチの切り替えも、名城大学さんが現状打破し続ける強さの秘訣(ひけつ)なのかもしれません。トラックシーズンから注目です!

M高史の陸上まるかじり

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