森岡監督就任の城西国際大! 松井康子コーチとともに全日本大学女子駅伝返り咲きを
今回の「M高史の陸上まるかじり」では、城西国際大学女子駅伝部に注目しました。全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)に10回出場し、2005年には3位も経験しましたが、2012年以降は舞台から遠ざかっています。昨年11月、森岡芳彦監督、松井(旧姓:橋本)康子コーチが就任し、返り咲きに向けてスタートを切りました。
「マラソン博士」森岡芳彦監督
森岡監督も長距離選手として保善高校(東京)時代に全国高校駅伝(都大路)出場。大東文化大学では全日本大学駅伝に出場されました。大学卒業後は実業団・東洋ベアリング(現:NTN)で競技を続け、そのまま同チームの監督に就任されました。
その後は日本生命、サミー(のちにセガサミー)、ノーリツで監督をされるなど女子チームでの指導が続きました。橋本康子さん、小崎まりさんといった日本代表選手をはじめ、数多くの選手たちを指導・育成されました。指導とともに森岡監督は「マラソン博士」の異名をとるほど、マラソン・駅伝・陸上に関する膨大なデータをとられています。そのデータを生かしてテレビ、ラジオ、ネットのライブ配信などで解説もされています。
陸上が大好きという森岡監督。指導している選手かどうかにかかわらず、とにかくラップをとり、手書きをされています。データをとり続けて、指導にも生かされています。
「データの積み重ねが全部つながってきます。数字は嘘つかないんです。データを取り続けること、保管しておくことは大事ですね」。その中で選手のタイプに合わせてデータを活用してアレンジ、調整していくそうです。
陸上関係者から相談を受けることも。新谷仁美選手(積水化学)のマラソン挑戦の際にはコーチの横田真人さんから相談を受け、新谷選手に合いそうな練習メニューを提案されたそうです。豊富な経験とデータ、さらに森岡監督のお人柄が陸上関係者からの信頼にもつながっているんですね。
都大路区間賞の選手や、シドニーマラソン派遣選手も
城西国際大学では300mトラックのほか、キャンパス内にサッカー場の余った人工芝を重ねて手作りした特設クロカンコースも900mとることができます。大学の周囲のロードも走ることができます。また、昭和の森も近いのでそちらでクロカントレーニングも可能です。
取材にうかがったこの日は、トラックでのポイント練習にも参加させていただきました。圧巻だったのは留学生のエリザベス・ジェリ選手(3年、青森山田)。高校時代には都大路5区で15分28秒をマークし、区間賞を獲得しました。ちなみに、M高史もジェリ選手の高校時代に練習をご一緒したことがありましたが、速すぎて軽く置いていかれました(笑)。
大学入学後、調子を落としていた時期もありましたが、現在はかなり調子を上げてきています。関東インカレが楽しみとお話される森岡監督。今回参加させていただいた練習ではM高史はジェリ選手の半分しかこなせませんでした(汗)。
後半は1人でもどんどんペースを上げてストイックにこなしていきます。森岡監督によりますと朝練習のジョグでも3分30秒くらいまでペースアップするなど、調子もいいそうです。
そして、陰山朋佳選手(2年、西脇工業)の走りが目をひきました。小柄ながら力強い腕振りが特徴の陰山選手。5000mのベストは16分42秒96ですが、クロカンやロードでの強さも光ります。昨年の関東学連10000m記録挑戦競技会では34分47秒21で女子トップの走り。今シーズンも4月17日に開催されたかすみがうらマラソン10マイルでは59分08秒で女子の部で優勝を飾り、シドニーマラソンのハーフマラソンの部に派遣されることが決まりました!
森岡監督と松井コーチの指導体制
「指導していて楽しいですよ。選手たちの純粋さに胸を打たれることが多いですね。実業団時代とはまた違ったやりがいを感じますね。僕も忘れていたこともあります。見ていて楽しいです。この子たちと上にのぼっていこうと思わせてくれますね」と笑顔でお話される森岡監督からは、ワクワクした気持ちが伝わってきます。
補強トレーニングでアドバイスしたものを自主的に朝5時からやっている選手もいるそうで「寮に行く時間がどんどん早くなるんです(笑)」と笑う森岡監督も、朝から現状打破されています。
かつての教え子のファイルを全部持ち込んで、選手の指導の参考にしています。練習メニューは1年分渡すというのも森岡監督流! 「1カ月ごとだと自分でも気づかないうちに目標からずれることがあるんです。1年分だとメインのところから逆算して作ることができます。いろんなデータを参考にするので作業にはかなり時間がかかりますが(笑)」
実業団選手の指導が長かった森岡監督。最初は大学生のタイム設定は手探りなところもあったそうですが、「かみ合ってきたので今年は楽しみです」と手応えを感じてらっしゃいました。
森岡監督の教え子で、世界陸上日本代表経験のある松井コーチの存在も大きいそうです。結婚されて2児の母ということで、限られた時間の中でも明るく選手たちとコミュニケーションをとられているのも印象的でした。松井コーチはインストラクター経験や市民ランナーの方へ指導経験もあり、分かりやすい丁寧に体の使い方、補強などの指導もされています。
なぜこの動きが走りに必要なのか、走るための体のスイッチを入れてからメインの練習に入っていきます。実際に僕も体験させていただきましたが、走りやすい感覚を実感できました。こういったことの積み重ねがより効率よく推進力に繋がったり、故障を防ぐことにもつながるんですね。
「愛弟子と一緒に指導できるのは幸せですね。選手たちからの信頼も厚いですよ。本当によくやってくれています」とかつての教え子とタッグを組む森岡監督の松井コーチへの信頼も絶大です。女性アスリートの悩みなども相談できる心強い存在の松井コーチ。サミー時代は監督と選手という立場から、現在は監督とコーチとして新たな二人三脚で指導にあたられています。
陸上競技が大好きとお話される森岡監督。「選手たちの笑顔を見られますし、一番力をもらえます。みんな陸上界の後輩なんですよ。『先輩には敬意、同僚には感謝、後輩には期待』と昔よく言われていましたが、その言葉が身に染みますね。今の子たちに恩返しできたらいいなと思います。うちに来て走りたいという子は全員受け入れます。走りたいと思ってきてくれた子を強くしてあげたいです。どういう風になっていくのか楽しみですね」
さらに「いずれはマラソンで学生記録を更新するような選手を育ててみたいです。母校・大東文化大学の鈴木優花選手(現・第一生命)が更新しましたからね。ただ、まずは城西国際大学女子駅伝部なので、駅伝も頑張らないと(笑)。あの子たちの顔を見ているとやる気になりますよね!」と指導への情熱が伝わってきます。
森岡芳彦監督、松井康子コーチ体制で挑む城西国際大学の皆さんの走りに注目です!