陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

大阪大大学院OG・三池瑠衣さん 院カレ2冠を経て、競技と技術職で飽くなき挑戦へ

大阪大学大学院をこの春、卒業した三池瑠衣さん。社会人として新たなスタートを切られました(M高史撮影写真以外すべて本人提供)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は三池瑠衣(みいけ・るい)さんのお話です。大阪大学から大阪大学大学院へ進み、昨年の日本インカレに1500mで出場。富士山女子駅伝では全日本大学選抜で1区を走りました。3月の全日本院カレでは800mと5000mの2冠を達成。この春、大学院を修了され、社会人として新たなスタートを切りました。

運動が苦手で姉の影響受け陸上に

大阪府出身の三池さん。お姉さんの影響で中学で陸上部に入りましたが「元々、運動が苦手で長距離以外のスポーツが全くだめだったんです(笑)」。せめてできるスポーツをというのも理由の1つだったそうです。

中学の顧問・岡本昭先生は都道府県対抗女子駅伝の大阪府チームで優勝監督も経験されている方。「(先生の指導が)とても自分にハマっていました。環境も良くタイムも出せました」。全中出場を目指して練習していた三池さん。1500m4分44秒19、3000m10分02秒4と全中標準記録には届かなったものの充実した中学時代を過ごしました。

お姉さんの影響もあり、陸上を始めた中学時代の三池さん

高3で初の近畿高校総体出場

「高校受験のブランクを戻すのにかなり時間がかかり、最初は伸び悩んだのですが、顧問の先生が練習を引っ張ってくださり、競い合える先輩・後輩・同期がいたことで、強くなることができました。高校の時もすごく環境に恵まれていたと思います」。仲間と挑んだ高校2年の大阪府駅伝では7位と、近畿高校駅伝出場にあと一歩届かず、悔しい思いもしました(6位までが近畿高校駅伝出場)。

大阪府高校駅伝ではエース区間の1区を任されました。写真右から2番目が三池さん(赤いハチマキ)

この悔しさが3年生の個人での近畿高校総体出場につながりました。「初めての近畿大会はすごく緊張しました。府大会以上は初めてでした」。高校時代の自己ベストは1500m4分43秒44、3000mが9分52秒10でした。

進学校ということもあり、課題も多かったそうですが「個人的には、2年生くらいまでは陸上に重きを置いていました。両立できていたかというと……そうでもないです(笑)。3年生になって受験もあるので頑張らないと!とかなり本気を出しました!」。理系の勉強をしていた三池さんでしたが、地理も好きでした。「その後の土木系の勉強にもつながっていますね」と振り返ります。

大阪府高校総体で6位となり、近畿高校総体に駒を進めました

受験ブランクに苦しむも大学院で急成長

大学は大阪大学へ。「大学に入ってから一番難しかったのが受験のブランクでした。高校入学の時以上にありましたね」と受験勉強に集中していたこともあり、体力や走力を戻すのに時間がかかりました。

大学では基本的には指導者不在。「自分で考えて練習することに慣れるまでに苦労しました。練習メニューは基本的にパート長やリーダーがメニューを作成します。それを元に個人でアレンジしたりします」。高校時代の記録を更新できたのは大学4年生になってから。1500m4分39秒24、3000m9分45秒30と3年越しのベスト更新となりました。

大阪大学時代の三池さん(写真中央)

大学卒業後は大阪大学大学院で土木に関する研究を続けました。大学院に進んでから記録も一気に伸ばしてきた三池さん。

「大学院に入って学部の時よりも忙しくなったのですが、その分、生活パターンが同じようになり、逆に練習時間をとりやすくなりました。時間が限られている分、メリハリつけて練習できるようになりました」

大学院修士2年では1500m4分26秒95、5000m16分12秒70まで記録を伸ばしました。1500mでは日本インカレにも初出場。「標準記録を突破して、出場できるとわかった時はうれしすぎましたね(笑)。予選では決勝に運よく残れればと思っていましたが、予選も調子よく走れて決勝に進むことができました。自分でも信じられなかったです。今までのレースで一番いい走りができました。楽に気持ちよく走れたので、ピーキングもうまくいったのではないかと思います」。全人生をぶつけ込んだという予選を組トップで通過したのでした。

迎えた決勝では「実力の高い選手を相手に思ったよりタイムが出なかったので、全国の舞台で戦うことの厳しさを経験しましたが、それ以上に走ることの楽しさを感じましたね」。全国の強豪選手がそろう中、4分30秒12で13位という走りで果敢に挑みました。

富士山女子駅伝では全日本大学選抜チームの1区を任せられました(撮影・M高史)

年末の富士山女子駅伝には全日本大学選抜チームにも選出されました。「富士山女子駅伝に出るのが大学の陸上の大きな目標の1つだったので、出場できると思った時はインカレと同じくらい、かなりうれしかったですね」

本番では1区を任された三池さん。「1区ということで、結構緊張しましたね! 1kmすぎくらいから縦長になったのですが、その時にちゃんとレースプランを考えて走ればよかったといま思いますね。流れに乗って走ろうとスタートしたのですが、1区で先頭が飛び出した時に勢いに乗ってついて行ってしまって(笑)後半キツくなってしまったので、もう少し抑えていけばよかったかなと。なかなか難しかったです」。積極的に攻めて、区間12位という走り。全日本大学選抜のチームメートとはメッセージのやりとりをしたり、いい繋(つな)がりができたといいます。

男女混合駅伝、マラソンにも挑戦

2月の全国招待大学対校男女混合駅伝にも出場。同時開催となっている国立大東西四大学対校戦(東京大学、京都大学、一橋大学、大阪大学)では前回大会に続いて連覇がかかるレースとなりました。

「女子だけでチームを組もうとすると国立大学はかなり人数が少なくて組めなかったりするので、男子と一緒に走ることで駅伝に出場できるのはありがたいことですね。私の区間(アンカー6区5km)は男子の2km区間の選手から襷(たすき)をもらうのですが、すごいスピードでくるので結構焦りました(笑)」。男女の襷リレーはこの大会ならではですね。

「プレッシャーは少なからずありましたが、そこまでの選手たちが私の卒業を、学生ラスト駅伝を優勝で飾りたいとみんな言ってくれました。幸せでしたし、その気持ちに応えたいと走りました」。アンカーで東京大学を逆転し四大学対校では2連覇を達成しました。

国立大東西四大学対校戦では連覇を達成!(写真右が三池さん)

トラック、駅伝だけでなくマラソンにも挑戦。初マラソンは2019年の東京マラソンでした。冷たい雨が降りしきる中、1km4分のペースを刻んだ三池さん。余談ですが、この時、私、M高史も出場していました。「M高史さんのすぐ後ろについて、20kmくらい並走していました! 初マラソンで2時間47分37秒で走れたのは前半のペースメイクのおかげです(笑)」。この時の後半、M高史は三池さんに軽く置いて行かれました(笑)。まさか取材させていただく前にマラソンで並走していたとはご縁に感謝です!

初マラソンとなった2019年の東京マラソン。中央、黄色のユニホームが三池さん。隣がM高史です

昨年の大阪国際女子マラソンでは2時間44分29秒とさらに記録を伸ばしました。コロナ禍のため出場人数も制限されて、長居公園の周回コースで行われましたが「私はどちらかというと周回コースの方が好きでした。一山麻緒選手に2回くらい(周回)抜かれましたが、惚(ほ)れ惚(ぼ)れする走りでした。あんな至近距離で見られるのはなかなかないですよね。審判員の先生方も知っている方がいらっしゃったので、良い姿を見せたいと頑張れました」と地元・大阪で恩返しの走りを披露しました。

周回コースで行われた2021年の大阪国際女子マラソンでは自己ベストを更新しました

院カレ2冠から社会人へ

大学院ラストレースとなったのは大学院生のための競技会として昨年スタートした全日本院カレ。

三池さんは5000m、800m、100mと3種目にエントリー!5000m16分56秒13で優勝、20分後に行われた800mでも2分27秒17で優勝、そして公式戦は中学1年生以来という全くの専門外である100mでは16秒33で4位に。

院カレに出場した他大学の選手たちと。所属が違っても刺激し合える存在です

「学生最後のレースで集大成として納得できるレースを!と思って出場しました。インカレなどで何回も競い合ってきた神戸大学大学院の仲野由佳梨選手も三種目ともに出場し、最後にたくさん一緒に走れたのが楽しかったですね。公認試合でありながら、和気あいあいとした雰囲気で運動会のように楽しく走ることができました。全国の大学院生とともに走り、この楽しさを共有でき、とても良い思い出になりました!」と大阪大学での4years.と大学院を含め6years.を締めくくる学生ラストレースで現状打破されました。

この4月からは社会人生活がスタート。学生時代に研究した分野の専門職という新たなフィールドで羽ばたきながら、驚異的市民ランニングクラブGRlabに所属してランナーとしても走り続ける三池瑠衣さんの挑戦は続きます!

M高史の陸上まるかじり

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