陸上・駅伝

特集:第92回日本学生陸上競技対校選手権大会

福岡大学・宮原なな佳 女子10000mで日本人トップ「緊張・不安・恐怖」打ち勝つ

日本インカレ女子10000m決勝で日本人トップとなった宮原(すべて撮影・藤井みさ)

第92回日本学生陸上競技対校選手権大会 女子10000m決勝

9月14日@熊谷スポーツ文化公園陸上競技場(埼玉)

1位 サラ・ワンジル(大東文化大1年)33分18秒93
2位 宮原なな佳(福岡大2年)    34分01秒46
3位 北川星瑠(大阪芸術大4年)   34分02秒34
4位 福永楓花(立命館大3年)    34分11秒76
5位 原田紗希(名城大2年)     34分15秒57
6位 村山愛美沙(東北福祉大1年)  34分17秒29
7位 谷本七星(名城大3年)     34分18秒15
8位 永長里緒(大阪学院大3年)   34分18秒30

日本インカレ初日の9月14日、最初に行われた決勝種目・女子10000mで福岡大学の宮原なな佳(2年、福大若葉)が日本選手トップとなる全体2位に入った。10000mのレースは自身3度目。これまでの資格記録は34分35秒88だったが、全国の舞台で力を発揮し、34分01秒46をマーク。自己ベストを更新した。

残り2周で仕掛け、北川星瑠の前へ

レースが始まった午後6時時点で気温32度、湿度52%。日が落ちても蒸し暑い、厳しいコンディションで行われた。タイムよりも順位にこだわる選手が多い中、最初の1周は89秒。超スローペースで入り、2周目から早くもケニアからの留学生、大東文化大学のサラ・ワンジル(1年、帝京長岡)が先頭に立った。続いたのは立命館大学の村松灯(3年、立命館宇治)や名城大学の原田紗希(2年、小林)ら。集団が縦長になる中、宮原は7番手につけた。

1000m付近でワンジルが抜け出し、一人旅に。後続の集団は1周82秒ほどのペースで落ち着き、村松や原田、立命館大の福永楓花(3年、安田女子)、大東文化大の四元桃奈(3年、昌平)、大阪芸術大学の北川星瑠(4年、比叡山)らが引っ張る形になった。集団の真ん中あたりでレースを進めた宮原は「前にいた選手の皆さんが、私よりもはるかにレベルの高い選手だと知っていたので、『どこで仕掛けようか』とすごく色々考えてしまって……。先に頭の中が疲れてきてしまいました」。

2番手集団のレース展開が大きく動いたのは6000m付近。ペースが上がり8人に絞られた。その後、集団はさらにばらけ、8000mで北川がトップに。宮原も果敢についていき、日本人トップは原田を含めた3人による争いとなった。残り2周となり、宮原が北川をかわして前へ。「残り1000mぐらいから『行けるかな』『行けそうだな』と考えていたんですけど、色々考えすぎた結果、残り2周で仕掛ける形となりました」。残り1周で最後の力を振り絞り、北川を約1秒上回った。

鋭いラストスパートで北川(左)に競り勝った

見事な走りと結果だったが、宮原はレース後「全国というレベルの高い大会で、緊張と不安と恐怖もあったんですけど、今まで頑張ってきた夏合宿での道のりと、自分の努力を信じて最後まで戦うことができました。ちょっと自分に自信がついてきました」と謙虚に振り返った。

クロスカントリーに取り組み走力アップ

昨年のU20日本選手権、女子5000mで3位に入賞した経験を持ち、今季から10000mに取り組んでいる。今回は5月に福岡県久留米市で開催された九州インカレ、6月に岐阜市であった西日本インカレに続く3度目のレースだった。

これに先立ち、大分県で行った夏合宿ではクロスカントリーをメインに走り込んできたという。「もともと筋力があまりなくて、ラストスパートも弱かったです。追い風や凹凸があるコースが苦手で、パワーのある走りとかスピードの点に弱さを感じていました」。そこで夏合宿では、ラストにペースアップする練習をたくさん積んできた。仲間との走り込みでは「自分は弱いから」と後ろに下がりがちな気持ちを奮い立たせ、率先して前を引っ張ることで「筋力もついてきました」。その姿勢が大舞台でのラストスパートにつながった。

夏合宿でクロスカントリーに取り組み「筋力がついてきた」と実感

自身の強みは「陸上が人一倍好きなこと」だと言い切る。「陸上で頑張ることに対して、まったく苦を感じません。陸上ってすごくきついので、よくみんなから『走っていて何が楽しいの?』と聞かれるんですけど……。確かに長距離って単純で『とにかく早くゴールすれば勝つ』という競技なんですけど、実はそこにすごい奥深さを感じるし、頑張ったら頑張った分だけ結果がついてきてくれるので、すごく達成感があるところが大好きです」

トラックの経験、今度はロードに生かす

宮原は3日目に行われた女子5000m決勝にも出場した。10000mのレース後「ここで気を緩めることなく、5000にも挑んで2種目とも最低でも入賞したい」と意気込んでいたが、結果は惜しくも届かず10位。この悔しさが、彼女をまた強くさせるのだろう。

今後はさらに距離を伸ばし、学生のうちにハーフマラソン、そして将来的にはフルマラソンへの挑戦も視野に入れている。今季のトラックシーズンが終わり、次に控えているのは駅伝だ。昨年の全日本大学女子駅伝。チームは9位で、8位までに与えられるシード権までわずかに及ばなかった。「トラックで得た経験を今度はロードで生かして、自分の大学に貢献し、恩返しすることができたらいいなと思います」。夏場の成果を披露する場は、今後も続く。

今大会の経験が秋の駅伝シーズンや自身の競技キャリアにつながるのは間違いない

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