陸上・駅伝

特集:2023日本学生陸上競技個人選手権大会

立教大学・小川陽香 2度目の5000mで2位、尊敬する先輩・道下美槻の背中を追い

自身2度目の5000mで2位に入った立教大の小川陽香(すべて撮影・藤井みさ)

2023日本学生陸上競技個人選手権大会 女子5000m決勝

4月23日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)

1位 サラ・ワンジル(大東文化大1年)15分33秒29☆大会新記録
2位 小川陽香(立教大1年)15分57秒08
3位 村松灯(立命館大3年)15分57秒38

4月23日にあった2023日本学生個人選手権の女子5000mで、立教大学の小川陽香(1年、順天)が15分57秒08で2位に入った。高校時代は3000mで活躍し、5000mを走るのは今回が2度目だった。尊敬しているという高校からの先輩・道下美槻(4年、順天)の後を追って立教大に進学。4年間での成長が楽しみなルーキーが現れた。

立教大学・道下美槻 結果が出ても変わらない競技への姿勢、レース後の悔し涙を糧に

1500m予選落ちの悔しさをぶつけた

レースは400mを過ぎたところで、大阪芸術大学の北川星瑠(4年、比叡山)が先頭に立ち、積極的に集団を引っ張った。後ろに立命館大学の村松灯(3年、立命館宇治)がぴたりとつき、最初の1000mは3分13秒。2日前に行われた女子10000mで北川は3位、村松は2位と表彰台に上がっていた。集団の真ん中付近にいた小川は「10000mでも速い先輩が前に出ましたが、自分はそのペースで押していく自信がまだなかったので、集団でまずは様子を見ながら走ろうと思っていました」と振り返る。

1000mを過ぎると、レースが急激に動いた。大東文化大学のサラ・ワンジル(1年、帝京長岡)がペースを上げ、北川がついていった。1000mから2000mにかけての1kmは3分03秒。ワンジルが独走態勢を築き、北川に続く集団は縦長となったが、小川に焦りはなかった。

5000mのレースプランはまだ不安な部分も多く「ペースは先輩たちに任せようと」

残り1kmで小川は一度、ペースを上げようかと考えた。実際に集団の前方に位置を取った。ただ「後ろにも選手が何人かいて、ラスト1kmで仕掛けるには少し自信がなくて……。残り400mにしようと思って、最後ギリギリまで余裕を持たせてスパートをかけました」。2番手を走る北川の背中が徐々に大きくなり、残り1周を前に4人の集団がのみ込んだ。鐘が鳴ったところで、小川は集団の先頭につけて2番手に。最後の直線までもつれた村松とのラストスパート勝負を制した。

小川は5000mで順位にこだわっていた。2日前の1500m予選では1秒09足りず、決勝へ残れなかったからだ。「(組の順位で決勝進出が決まった選手を除いて)3番目のタイムまで拾われる中、自分は4番目で、あと一歩のところで行けなくて、すごく悔しい思いをしました。5000mは勝ちきりたいと思って臨みました」

ラストスパート勝負を制し、2着でフィニッシュ

都大路で6kmを経験、距離に不安なくトラックに相性

今回のレースが2度目の5000mだった。1回目はまだ正式に入学する前、3月25日の日体大記録会。レース運びにまだまだ慣れていなかった分、今回は無心で走れたのかもしれない。「周りには5000mの経験が豊富な先輩方がいました。自分は走り方で不安な部分がいっぱいあったので、ペースに関しては先輩たちに任せようと思っていました」

高校時代は3000mで9分05秒46の東京都記録を樹立するなど、トラックでは主に3000mで成績を残してきた。一方で昨年の全国高校駅伝はエース区間の1区(6km)を任され、都大路で区間7位。3000mから5000mに軸足を移すときは、この経験が生きたという。「6kmを走れる練習はしてきたので、5000mという『距離の不安』はなかったです。トラックでは初めてという点で不安はありましたけど」。トラックとロードでは、トラックの方が相性がいいと感じている。これも今回の好走につながった。

高校時代に都大路で6kmを経験していたから、距離への不安はなかった

「自主性」に惹かれ、立教大へ

立教大に進学したのは、高校の3学年先輩にあたる道下の存在が大きい。高校時代は重なっていないものの、話を聞く機会に恵まれた。女子1500mの日本学生記録を持つ先輩から、立教大学は「自由」を大切にしており「自分で考えて行動する自主性」を重視していると教えてもらった。小川は、自主練習の日が多く設けられる順天高校の指導方針に似ていると感じた。「高校でも自主性を伸ばしていただいたからこそ、立教大学でも同じようにやっていきたい」と思った。

知識が乏しい中で「自主性」と言われても、最初はなかなか難しい。そこは立教大の練習に合流後、先輩たちの姿を見て学び、分からないことを尋ねるとすぐに教えてくれたことで解消した。「先輩方は最初から『これやってみなよ』ではなく『私はこうやってるよ』と手本を示してくれるんです。そこで『あ、自分にこれ合ってる』と見つけられて、そこから自分で工夫していくことができています」。入部直後からPDCAを回し、成長につなげている。

立教大で先輩たちの姿を見て、実際に練習で採り入れているのが体幹の強化だ。「自分は他の選手と比べると筋力が少なくて、筋トレはちょっと苦手なんです。けど、先輩が教えてくださった『腹筋、おしり、背筋』の3点を鍛えられるメニューを行っています。毎日5分から10分ぐらいで終わる簡単なメニューを考えてくださって、毎日持続的にやっていこうと」。その成果は「今回のレースで少し出たかな」とプラスにとらえている。

先輩たちに教わりながら、自分に合う練習を採り入れている

大学4年間で「世界を狙う」選手めざす

失うものは何もなく、ひたすらチャレンジャー精神で2位まで駆け上がった小川。今年はまず9月の日本インカレでトップを狙えるぐらいにまで地力をつけ、大学4年間の最終目標としては「世界を狙う」選手をめざす。彼女の成長曲線は、どのような軌道を描くのか。今から楽しみでならない。

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