「PB祭り」と話題になった20周年記念ホクレンDC網走、千歳を完全リポート!
今年で20周年を迎えたホクレン・ディスタンスチャレンジ2022! 私、M高史は大会ライブ配信でホクレンDCディレクター・河野匡さんとご一緒させていただきました。前回の記事に続いて、今回は第4戦・網走大会、第5戦・千歳大会の実況レポです。
千歳大会にはランニング×コメディ×YouTuberたむじょーさんも登場し、ライブ配信を盛り上げてくれました! ライブ配信では、できるだけ公平に実況しようと務めさせていただいたこともあり、配信ではお話しきれなかった内容も含めてリポートします。
霧に覆われて好記録続出の網走大会
今年のホクレン・ディスタンスチャレンジの1戦、2戦、3戦はやや気温が高かったのですが、7月13日(木)に開催された第4戦・網走大会は気温も下がり好コンディション。途中から会場の網走市営陸上競技場は白い霧に覆われ始めました。まるでステージやライブで白いスモークが焚(た)かれているような感じです。
河野さんの長年の経験によると「ガスってる」という自然現象。網走の競技場では海からの冷たい空気が陸の方に押し寄せてきて、白い霧のような状況になり、気温がグッと下がり、湿度もあって呼吸がしやすく、結果的に長距離を走るのに適したコンディションになるそうです。
このホクレンDCシリーズで個人的に目を引いたのが3戦連続で自己ベストをマークした真也加ジェルーシャ有里選手(大塚製薬)の走りでした。真也加選手のお父さんは山梨学院大学で活躍されて、現在は桜美林大学で監督をされている真也加ステファンさんです(ステファン・マヤカさんは山梨学院大学でケニア人留学生として活躍し、現在は帰化されて日本国籍です)。
僕自身、芸人になる前に真也加監督のご指導のもと、2年間ほど競技をしていたことがあるのですが、ジェルーシャ有里選手は当時まだ小学生で「ジェルちゃん」と呼んでいました(笑)。今では実業団選手として競技を続けて、士別1500mで4分21秒28、深川3000mで9分19秒61、網走5000mで16分17秒42と、このホクレン3戦連続自己ベストをマーク。感慨深かったですし、きっとご両親も喜んでいらっしゃるのかなと思いました。
真也加選手のお母さん・玲世さん(旧姓・盛山さん)も元マラソン選手で世界陸上日本代表です。しかも河野さんは大塚製薬陸上部部長兼女子監督でもあるので、河野さんともつながりがあります。まだまだ伸び盛りポテンシャルを秘めている真也加ジェルーシャ有里選手の今後の活躍にも注目です。
男子5000mDでは安原海晴選手(滋賀学園高3年)が積極的な走りでロングスパート。実業団選手や大学生を抑え、13分59秒02の自己新で優勝。「目標としていた13分台に届いてとても嬉(うれ)しいです!」と優勝インタビューに応えていました。1500mでも3分47秒53で激戦の近畿高校総体で2位となり、インターハイでも注目です。滋賀学園高校ではここ数年で一本歯下駄のトレーニングを取り入れ、体幹やバランスを強化。安原選手をはじめ注目選手も多く都大路でも注目です!
男子5000mAには海晴選手のお兄さんで駒澤大学の安原太陽選手(3年、滋賀学園)が登場。弟さんの快走に刺激を受けたのでしょうか、滋賀学園高校の恩師・大河亨先生も見守る中、13分37秒01と自己記録を更新しました。
男子10000mBでは中央大学・中野翔太選手(3年、世羅)が28分00秒86と自己記録を大幅更新。國學院大學の平林清澄選手(2年、美方)は28分12秒16で平林選手も20秒以上記録を更新しています。
男子10000mAでは菊地駿弥選手(中国電力)が27分57秒95で27分台に突入。東京国際大学の丹所健選手(4年、湘南工大附)が28分01秒24で自己新。東京国際大学の松村拓希コーチによると「まだまだ記録を伸ばせると思います」ということで、トラックも駅伝も活躍に注目ですね!
大学生も躍進の千歳大会
続いて7月16日(土)に開催された最終第5戦の千歳大会。河野さんによると、千歳市青葉陸上競技場はバックストレートが高い木々に覆われて風を遮り、さらにこの時期はホームストレートから追い風が吹く「周回する競技は走りやすく記録の出る競技場」とのことで、スタート前からワクワクしていました。
ちなみに、レース前日は準備していた看板が飛びそうになるほどの強風。当日も天気予報では元々雨予報でしたが、ふたを開けてみたら雨も降らず曇りでした。風もほぼなく気温も20~22度ほど。長距離種目にとっては絶好のコンディションとなりました。
男子1500mでは日本記録を目指してハイペースでレースが進みました。日本記録保持者の河村一輝選手(トーエネック)が3分37秒08で優勝。2位の森田圭祐選手(SUBARU)は3分37秒36、3位の飯島陸斗選手(阿見AC)は3分38秒35、4位の野口雄大選手(トーエネック)は3分39秒01と、4位までが3分40秒切りを果たしました。前日本記録保持者の荒井七海選手(Honda)がペースメイクを務めるという豪華な布陣の中、日本記録更新はならなかったもののハイレベルな1500mとなりました。
男子5000mDでは神奈川大学の中原優人選手(2年、智辯学園奈良カレッジ)が13分46秒84で自己新で優勝。東京国際大学の牛誠偉選手(ぎゅう・せい、2年、浜松商業)が13分50秒28で3位となりました。牛選手はホクレン前まで14分05秒22がベストでしたが、網走大会で13分56秒28。さらに今回は13分50秒28まで縮めてきました。ちなみに牛選手のお姉さんは拓殖大学の牛佳慧選手(かえ、3年、浜松開誠館)。お姉さんも長身ですが、弟の誠偉選手も185cmを超える高身長! 実況席からも目立つので、ラップを計るのにも助かります(笑)。姉弟で大学駅伝での活躍に期待ですね!
男子5000mBでは東京経済大学の大川歩夢選手(4年、伊豆中央)が13分39秒00の自己新! 大川選手は高校時代5000mベストは15分12秒でした。以前、取材でうかがった時は大学1年生で記録は14分36秒でしたが、そこから年々力を伸ばして13分39秒00までになりました。大川選手の走りからも、これからまだまだ記録が伸びそうな勢いを感じました!
男子5000mAでは終盤まで大接戦! 小林歩選手(NTT西日本)がラストで抜け出し13分23秒41で日本人トップ。この日が誕生日という田村和希選手(住友電工)が13分27秒56、東海大学の石原翔太郎選手(3年、倉敷)が復活の走りで13分29秒21、中央大学の吉居大和選手(3年、仙台育英)も復調の走りで13分31秒03と自己新の選手が続出。特に長らく故障で苦しんでいた石原選手がここにきて自己新ということで、復活を待ちわびていた駅伝ファンの方も多かったのではないでしょうか!
女子も好記録が続出!
女子1500mではホクレン5戦目(20周年記念大会を含め)となる後藤夢選手(豊田自動織機)が4分09秒50と士別でマークした4分09秒41の自己記録にわずかに届かなったものの、このホクレンDCシリーズでは800m、1500m、3000mで自己ベストを更新! 世界陸上に3種目で挑む同僚の田中希実選手(豊田自動織機)とともに複数の種目でマルチな活躍をみせています。1500m学生記録保持者である立教大学の道下美槻選手(3年、順天)は自らの学生記録には届かなったものの、4分14秒88で2位となりました。
女子5000mCでは東京農業大学の幸田萌選手(2年、東京農大三~埼玉医科大グループ)が15分59秒21で優勝。それまで自己記録が16分11秒17だった幸田選手。ホクレンでは士別で16分12秒21、北見で16分13秒50とともに自己記録までわずかに届かず、3度目の正直で挑んだ千歳でついに自己新と15分台を達成。全日本大学女子駅伝と富士山女子駅伝出場のためには5000mの平均タイムが選考基準になってきますので、チームにとっても勢いがつきますね! ちなみに幸田選手は埼玉医科大グループを経て、東京農業大学に入学という経歴の持ち主です。
女子5000mBでは大阪芸術大学の北川星瑠選手(3年、比叡山)が15分51秒28の自己ベスト。スタート前、中瀬洋一監督は「今日は自己記録が出ると思います」とお話されていた通り、自己記録を更新し好調ぶりが伝わってきました。昨年の富士山女子駅伝で2区区間賞を獲得している北川選手ですが、舞台芸術学科でミュージカルを学ぶ長距離選手として両立しています。
女子5000mAでは名城大学の山本有真選手(4年、光ヶ丘女子)が15分30秒75をマーク。北見で3000mの学生記録を28年ぶりに更新したばかりでしたが、5000mでも自己ベストには届かなったものの安定感のある走りを披露されました。
20周年に花を添える「PB祭り」
さてさて、ここでは紹介できないほど数多くの選手が自己ベストを更新した網走大会と千歳大会。ライブ配信のチャット欄では「PB祭り」という言葉が並ぶほど、好記録や自己記録を出す選手が続出し、盛り上がりました!
河野さんは自己記録更新率分析も毎回計算されていて、気象コンディションなども参考にしながら、次戦や翌年に生かされているそうです。選手の皆さんが現状打破する舞台を毎年アップデートしながら整えていらっしゃるんですね。
20周年となったホクレン・ディスタンスチャレンジ。今年はフルで帯同させていただき、たくさんのことを学ばせていただきました。ホクレンDCの大会新記録が11個も誕生! 選手の皆さんの素晴らしい走りが20周年に花を添えました。