陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

関西大・亀田仁一路、自主性と趣味「走ること」で成長、関西の雄は世界を見据え

関西大でトラック、駅伝でも注目の亀田選手(クレジットがない写真はすべて本人提供)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は関西大学の亀田仁一路選手(じんいちろう、3年、姫路商業)のお話です。昨年の全日本大学駅伝では日本学連選抜で1区区間6位と好走。10000mでは昨年28分39秒46をマーク。5000mでも7月16日のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会で13分51秒87の自己ベストで走っています。

コーチとの出会いで変化

兵庫県出身の亀田選手。小学校ではサッカーをしていました。「サッカーは大好きでしたが、よく考えたらサッカーの中でも走ることが好きでした。ボールを蹴ることよりも走ることが好きでしたね(笑)。走るのに専念できるのであれば中学からは陸上をやろうと思いました」と中学から陸上の道へ。

サッカー少年だった亀田選手。当時から走ることが大好きでした

中学時代は強豪校ではなく、「みんなでまとまって少し体を動かす程度の部活動でしたね。タイムを狙うような部活ではなかったです。1500mでも中学2年の時に6分切るのが精一杯でした。そこへ3年生の時に新しく岸本拓夢先生が来られて、ご指導いただいて『センスあるやん』と言ってもらえてからですね。もっと挑戦していきたいなと思いました」。そこからは1500mで4分38秒まで記録も伸ばしました。

中学時代の亀田選手(右)。3年生で記録を大きく伸ばしました

毎日が全力の高校時代

高校は姫路商業高校(兵庫)へ。中学3年生で少し記録が伸びたとはいえ、入った当初はチームでも一番下の方でした。「練習についていくのは本当に大変でしたが、続けているうちに少しずつ自分の力がついているのを実感できました。本当に楽しくて陸上にすべてを捧げる3年間でしたね」

試合に出る度に記録を伸ばし、5000mでは14分24秒をマーク。それでも兵庫県のレベルは高く、インターハイはもちろん近畿大会の壁も厚かったそうです。「兵庫県は西脇工業、須磨学園、報徳学園もいて、近畿まで行きたかったですが、通用しなくてかなり悔しい思いをしました」

近畿高校駅伝3区では区間2位の好走(中央が亀田選手)

トラックでは悔しさを味わった亀田選手ですが、3年生の近畿高校駅伝では3区区間2位と好走。「1区で姫路商業高校の選手が区間賞を獲得したんです。走る前にも自分の耳にも入ったので、『あいつが区間賞なら自分も区間賞取らないと』とがむしゃらに走りました」。区間賞獲得はならなかったものの、激戦の近畿高校駅伝で快走を見せました。

「チームの一番下から始まって、かなりきついこともありましたが、毎日が全力の3年間でした」と高校時代を振り返りました。

高校時代の亀田選手(右から3人目)

自主性の関西大学へ

高校卒業後は関西大学へ。箱根駅伝を目指して関東の大学ではなく、関西大学に進んだ理由について「よく聞かれる質問なのですが、自分に合っている大学が関西大学だったんです。高校時代はがむしゃらに監督やコーチに言われたことをこなしていく3年間でした。大学4年間では自分の考えたことを試す場にしようと思ったんです。関西大学では自主性を大事にしていて、ある程度自由にやらせてくれるところも魅力でした」

亀田選手が関西大学に入学してすぐ、コロナ禍による緊急事態宣言という未曾有の事態に。「練習も解散で、1人で練習する期間が長かったですね。逆に1人で練習する期間がとても自分の中で良かったです」。元々、大学では自分の考えたことを試す場にしたいと考えていた亀田選手にとっては、コロナ禍という逆境はかえって自分を試す期間になりました。

2年生になると、5000mでは13分53秒18、10000mでも28分39秒46まで記録を伸ばしていきました。

「13分台、28分台の練習が積めていたので、あとは記録を出すだけだと思っていました。自信になった反面、ようやく出せたとホッとした部分もありました」

昨年の関西インカレでは10000mで優勝(上が亀田選手)

昨年の全日本大学駅伝では日本学連選抜に選出され、1区を担当。区間6位の好走でチームを勢いづけました。「区間賞を狙っていたので、走り終わった後、かなり悔しかったですね。ただ、監督からはミーティングで『よくやった』と言っていただいて、結構この結果は良かったんだと思いましたね(笑)」

昨年の全日本大学駅伝で亀田選手(左)は1区区間6位と好走(撮影・岩下毅)

関西大学は昨年の全日本大学駅伝関西地区選考会では5位、今年は4位とチームでの本戦出場はかなわず。「来年はチームで行けるようにしたいですね」とチームで伊勢路への切符を狙っています。

亀田選手が所属する関西大学陸上競技部について、「選手が主体のチームですね。自分の意見が反映されやすく、とてもいいチームです」とチームの魅力も教えていただきました。

選手が主体というのが関西大学の魅力(前列左から3人目が亀田選手)

ケガを乗り越えてホクレンで自己新

今シーズン、兵庫リレーカーニバル10000mで28分41秒18と自己ベストに迫る走りを披露するも、5月のゴールデンゲームズに出場後、少し足を痛めてしまったそうです。故障の影響もあり、関西インカレでは5000mで3位と悔しい結果に終わりました。

その後は徐々に調子も上がり、6月19日の全日本大学駅伝関西地区選考会では10000m最終組で29分16秒74、2位以下に30秒差をつける個人トップの走りを見せ、復調を走りでアピールしました。

今年の関西インカレでは故障明けということもあり、5000mで3位に(右が亀田選手)

そして7月16日のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会では5000mで13分51秒87と自己ベストを更新! 夏合宿、秋シーズンに向けて勢いがつく走りとなりました。

陸上で進化を続ける亀田選手。オフの時間は何をしているのかなと思い、趣味についてうかがったところ「走ることが趣味です(笑)。休みの日もずっと走っていたり、いろんな人が走っている動画を見たりしています。とにかく走ることが大好きですね。オフの時間も尊敬するような選手の動画を見てリフレッシュしています」と、根っからの陸上好きでした(笑)。

ちなみに尊敬する選手とは? 「同世代の三浦龍司選手(順天堂大3年、洛南)ですね! 世界の舞台で戦っていてすごいなと思いますし、勝ちたいなという思いもあります。世代のトップを狙おうと思えば、日本のトップになるような世代ですし、ハイレベルかなと思います」と、同い年で活躍する三浦選手をはじめ、同期の走りは刺激になっているそうです。

今後の目標について、「今年は日本インカレにも出られるのでそこでしっかり結果を残すことですね。4年生の時に日本選手権に出場することを目標にしています。日本選手権の参加標準記録を今年はしっかり切りにいきたいです」と、さらに上を向いて現状打破しています。

「笑いながら走っている」と言われることもあるそうです

トラックが得意で将来はトラックでしっかり世界と戦っていきたいという亀田選手。トラック競技の魅力について、「数字で記録が出ちゃうところですね。実力、調子、すべて数字で出るのでそれが面白いです!」とトラックへの愛着もあります。

走りのここを見てほしいという点については、「後半落とさずに上げていける点ですね。あとは『笑いながら走っている』とよく言われます(笑)。『走っているのが楽しそう』と言われるので、そこも注目してほしいです(笑)」。陸上が大好きという気持ちが強く、走っていてキツい場面でも思わず笑顔になってしまうのでしょうか! 今後、「笑いながら走るランナー」として注目されていくかもしれないですね(笑)。今年の日本インカレや伊勢路でも注目です。

M高史の陸上まるかじり

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