関西学院大・上田颯汰「地方の選手もやれるよ」 駅伝で関東勢の一角を崩す走りを
昨年9月の日本インカレ10000mでは日本人トップの5位に入り、その存在を全国に知らしめた。だが10月の出雲駅伝と11月の全日本大学駅伝を振り返ると、「あまり芳しくなくて、ピーキングの難しさを痛感しました」と悔しさが募る。関西学院大学の上田颯汰(そうた、4年、関大一)の、「打倒関東」の思いは揺るがない。
前回の全日本で関東勢に続く16位にも悔しさ
関西学院大は昨年、出雲駅伝ではアンカーで大阪経済大学に抜かれての13位だった。上田は「正直な話をすると、大経さんには負けないだろうという気の緩みがあったのかも。直前の日本インカレで僕が好走したことが、もしかしたらよくない方に影響したのかもしれない」と振り返る。1区は上田に任されたが調子がなかなか上がらず、想定よりも早く力を消耗してしまい、区間13位で襷(たすき)をつないだ。東北学連選抜として同じ1区を走った松浦崇之(当時・東北大修士2年)は区間4位と好走。自分がしたかった走りを、全国の舞台で松浦に見せられた。
翌11月の全日本大学駅伝では3年連続で3区に出走。21位と想定よりも悪い順位で襷を受け取った。繰り上げスタートを回避するために自分が追い上げなければ、と感じた上田はオーバーペースで突っ込んだ。順位を17位に上げて襷をつないだが、最終8区の前で襷が途切れてしまった。だがアンカーの守屋和希(3年、西宮)が区間11位の走りで18位から追い上げ、関東以外の大学ではトップの16位でゴールした。
関西勢トップという結果に喜んでいる仲間もいたが、上田には「本当の意味では勝ってない」という思いがあったという。アンカー勝負で立命館大学に勝ったものの、区間順位を見ると、8区間中、立命館大の選手に勝ったのは3区の上田、4区の清水皓太(現2年、西宮)、8区の守屋の3人だけだった。その悔しさを胸に、3年生以下で12月の関西学生駅伝(丹後大学駅伝)に挑んだが、結果は立命館大学と京都産業大学に続く3位。この経験を次に生かそうと、皆が前を向いて取り組んできた。
関西地区選考会、最終組で1位から2位へ
上田はケガなく冬季練習を積み、4月には連戦で兵庫リレーカーニバルと奈良県春季強化長距離記録会に出場。まずまずの感触をつかんだ。5月25~28日の関西インカレは様子を見ながら、6月19日の全日本大学駅伝関西地区選考会で結果を出せればと考えていた。関西インカレ10000mで上田が優勝し、2位に守屋、3位に田中優樹(3年、報徳学園)と関西学院大が表彰台を独占。だが上田にとって、29分35秒07というタイムは想定よりも遅く、調子が上がっていないことに不安を感じた。
その不安は上田だけではなかった。関西地区選考会は各校10人まで出走でき、上位8人の総合タイムで3枠を競うというもの。出走する7人はなんとか決まったものの、あとの3人は直前まで決まらなかった。その7人の中にも、自分のように万全の状態ではない選手がいる。「関西学院大学としては1位通過を目指さないといけないのに、最悪、選考会を通過できないこともあるんじゃないかと思っていました」
迎えた選考会、3組目で守屋が29分46秒89での1着につけるなど、関西学院大は3組目までトップだった。4組目には各校のエースがそろい、関西学院大からは上田、井手翔琉(4年、熊本第一)、中尾心哉(2年、智弁学園奈良カレッジ)の3人が出走。上田は先頭集団で勝負し、最後は30分05秒92での5着でゴール。中尾は17着、井手は18着につけ、最終組で大阪経済大に抜かれての2位だった。
実業団の合宿で得たものをチームに還元
「なぜ1位になれなかったのか」。選考会後、4年生を中心に何度もチームで話し合い、特に4組目を走った上田と井手は責任を感じていた。その後、7月に上田はホクレン・ディスタンスチャレンジの士別大会と北見大会に、井手も北見大会と千歳大会に出走。実業団選手と一緒に走るレースで刺激を受け、それまでよりももう1段階、さらに2段階、3段階と自分の意識を高めようと思ってのことだった。
上田は日々の練習でもジョグや流しの質にこだわり、より実戦に近い動きを取り入れるようにした。また8月上旬には初めて実業団の合宿に参加する予定だ。「考え方や走り方、日常の送り方、体のケアの仕方など、自分はまだまだ至らないところがあると感じているので、実業団の選手たちの姿に何か一つでも学んできます」。8月下旬には関西学院大の合宿に合流し、自分が実業団の合宿で得てきた知識や技術をチームに還元したいと考えている。
最後の全日本こそは区間5位に
チームは例年、夏合宿の終盤になってから駅伝の目標を立てるため、現在はまだチームの目標は定まっていない。だが、宮本志郎コーチも学生たちも「関東勢の一角を崩す」という思いは常にある。上田は出雲駅伝では1区で10位以内、つまり10校出場する関東勢に割って入る走りを目指している。2017年には関西学院大2年生だった石井優樹(現・NTT西日本)が1区10位という結果を出している。今もLINEで連絡を取り合う先輩に「しっかり勝ちたいと思います」と上田は笑顔を見せた。
全日本大学駅伝では4年連続となる3区を見越している。入学した時から上田には「区間5位」という意識があり、2年生の時には駒澤大学の鈴木芽吹(現3年、佐久長聖)に1秒差での区間6位だった。だからこそ、最後の伊勢路にかける思いは強い。
大学卒業後は実業団に進む予定だ。目標はまだ定めていない。「世界大会に出たいとか、自分はそれだけの練習をまだしていないし、それだけの器でもまだない。進んだ先で可能性が出てくることはあるかもしれませんが」。だがその一方で、ぶれることなく持ち続けてきた思いがある。「地方出身者で頑張っている先輩たちのように、自分も頑張ってるよ、地方の選手もやれるよ、という姿を見せていきたいです」