陸上・駅伝

特集:第54回全日本大学駅伝

大阪経済大・青木基泰監督「1+1が3にも4にもなるチーム」、駅伝でも過去最高を

全日本大学駅伝関西地区選考会を過去最高の1位で通過してからすぐ、大阪経済大は駅伝シーズンに向けて走行距離を伸ばしている(写真提供・大阪経済大学陸上競技部)

6月19日の全日本大学駅伝関西地区選考会で大阪経済大学が初めて1位通過を果たし、2年連続で出雲駅伝と全日本大学駅伝の出場権をともに獲得した。青木基泰監督は「これまでは3位が最高だったので、学生たちには2位を目指そうと話していました。近年はなかなか2年連続で両駅伝に出ることができなかったんですが、本当に学生たちが頑張ってくれました」と学生たちをたたえた。

大阪経済大が3大会ぶり全日本大学駅伝出場 竹澤健介HC、指導者として初の全国へ

2大エースを欠いた中、片山主将が独走で仲間を鼓舞

大阪経済大は昨年、3年ぶりに出雲駅伝と全日本大学駅伝に出場し、出雲駅伝では過去最高タイの12位、全日本大学駅伝では19位だった。今年3月には3年間指導してきたヘッドコーチ(HC)の竹澤健介さんが退任し(現・摂南大HC)、後任には木村哲也さんが就任した。チームを再建した竹澤さんの指導方針を踏襲しつつ、木村HCの考えも混ぜながら、前半シーズンは関西地区選考会に照準を定めていた。

昨年の出雲駅伝は最高気温が29度にもなったが、普段から暑さ対策をしてきた大阪経済大は普段通りの力を発揮できたという(撮影・藤井みさ)

昨年、大阪経済大は関西インカレ2部で総合2位になり、19年ぶりに1部昇格を果たした。今年5月の関西インカレでは1部で戦う関西学院大学や立命館大学の強さを実感。エースの杉本平汰(3年、興國)と中角航大(3年、履正社)が出走できなかったことも響き、2人は翌6月の関西地区選考会もメンバーから外れることになった。

他大学に比べて突出した選手がいるわけではない。どうやって関西地区選考会を戦うか、コーチ陣は4年生たちと何度も話し合い、主将の片山蓮(4年、東海大仰星)は自発的に学生だけのミーティングを開いた。2位で通過するには、10000mを30分台で走る選手が6人、最終4組目の選手は30分を切りたい。選考会の流れをつかむため、2組目で単独走でも30分台を出す選手としてコーチ陣が期待を寄せたのが片山だった。

迎えた選考会で片山は2組目に出走し、2000mほどで単独走へ。青木監督は「ちょっと出るのが早いのでは」と思ったが、片山の目つきや走りに覚悟を感じ、本人の感覚に任せた。片山はそのまま1人で押し切り、30分34秒54でゴール。主将の走りは続く選手たちを勇気づけ、3組目の佐々木凜太郎副将(4年、関大北陽)は3着、坂本智基(3年、智弁学園奈良カレッジ)は4着につけた。

片山主将は2組目でトップとなり、喜びを爆発させた(撮影・佐藤祐生)

各校のエースがそろう4組目、島野和志(3年、京都両洋)は先頭集団で勝負し、29分57秒63で3着につけた。杉本翔(4年、関大北陽)と井上瑞貴(3年、三田松聖)も30分台でまとめ、大阪経済大は最終組で関西学院大を抜き、4時間06分01秒35の大阪経済大記録で総合1位をつかんだ。

駅伝で関西勢トップに、関東勢にも勝負

チームの躍進には、主将の片山の存在が大きいと青木監督は言う。持ち記録は5000mが14分23秒13、10000mが30分34秒15ではあるが、今年に入ってから目覚ましい活躍を見せている。「指導者の意図を理解し、自分の言葉で学生たちをまとめています。記録にしてもまだまだこんなもんじゃない。杉本(平)や中角、島野の3人に並ぶ力があると思う」と青木監督も期待を寄せている。

関西地区選考会が終わってからは、週ごとの走行距離を記録しながら一人ひとりが距離を踏んでいる。また今年は3年ぶりに夏合宿ができる予定だ。これまでの夏合宿では月間走行距離は1人450~500kmだったが、学生たちが自信をつけ、スピード持久力をつけて長い距離に順応できるよう、1人700~800kmを目指している。夏を越え、出雲駅伝では11位、全日本大学駅伝では16位、あわよくば関東勢の一角を崩しての順位を狙う。

昨年の全日本大学駅伝では1区の島野(左)が区間26位と苦しんだが、今年は1区から流れを作りたいと考えている(撮影・岩下毅)

特に全日本大学駅伝では、レースの流れを作る1区、17.6kmの7区、19.7kmの8区アンカーには、エース級の選手がそろう。青木監督は“いい意味”でどの区間にどの選手を配置するか悩んでいるという。

「突出したエースこそいないんですけど、みんながどの区間を走っても大丈夫なくらいの力をつけています。2年前は(10000m)30分台の選手がほとんどいない中、竹澤さんがチームを一から作ってくれ、木村HCに代わり、みんなの力をうまく引き出してくれています。うちは総合力、全員で戦うチーム。1+1は2ではなく、3にも4にもなると学生たちには伝えていますが、そのための雰囲気作りを学生たちが自らやっています」

過去最高を求め、関西地区選考会で自信をつけた学生たちが、熱い夏へと向かう。

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