大阪経済大が3大会ぶり全日本大学駅伝出場 竹澤健介HC、指導者として初の全国へ
第53回全日本大学駅伝対校選手権大会 関西地区選考会
6月13日@京都・たけびしスタジアム京都
1位 立命館大学 4時間04分51秒14
2位 関西学院大学 4時間05分14秒83
3位 大阪経済大学 4時間07分45秒43
6月13日にあった全日本大学駅伝関西地区選考会で、大阪経済大学はタイムレースで3位に入り、11月7日の本戦出場権を獲得した。3大会ぶり23回目の出場決定に、選手たちは喜びの笑顔を見せた。
昨年のコロナ禍でチームがバラバラに
大阪経済大が前回全日本大学駅伝に出場したのは、2018年の第50回大会。2019年4月に早稲田大学時代にはエースとして活躍し、北京オリンピック日本代表も経験した竹澤健介氏(34)が報徳学園時代の恩師・故鶴谷邦弘元監督の後を継ぐ形でヘッドコーチ(HC)に就任した。エースの富田遼太郎(21年卒、現・スズキAC)が10000m28分台のタイムをマークするなどチーム全体の底上げを進めていたが、昨年の新型コロナウイルスの影響は大きかった。全体練習ができなくなり、寮をもたないため各自で生活管理や練習をしていた時期にはモチベーションが下がり、チームがバラバラのような状態になってしまった時期もあったという。
昨年の全日本大学駅伝関西地区代表枠は4枠あった。10000mの持ちタイムを提出し、書類選考により上位3校(立命館大、関西学院大、京都産業大)が出場決定。残る1枠をかけて関西大、大阪経済大、びわこ学院大の3校が争うという変則的な選考となった。3校の持ちタイムの差は14秒以内に収まり実力が拮抗した状態だったが、暑さと湿度もあり大阪経済大の選手たちは思うように走れず、脱水症状のようになってしまった選手も。なんとか8人全員がゴールしたが、出場権獲得には至らず選手たちは涙した。
悔しさから奮起、「全員でカバーし合う」
その悔しさを全員が忘れることはなかった。昨年の反省を活かし、今年は各自練習となったときも、選手間で練習報告をするなどして、「絶対に全日本を走るんだ」というモチベーションを保ち続けた。竹澤HCは「本当に目をみはるという感じ」と選手たちの成長を評価する。
選考会は4組の10000mタイムレースで合計10人が走り、上位8名の合計タイムで競う形。セオリー通り4組に持ちタイムの速い選手を置いていたが、選手たちは「1~3組でできるだけタイムを稼ごう」という気持ちで臨んでいた。
1組目は立命館大の松島陸(3年、須磨学園)がペースをつくったが、そこに大阪経済大の藤村晴夫(1年、大阪)と楠本拓真(3年、興国)もしっかりついていく。周回を重ねるごとに先頭集団の人数は少なくなっていったが、藤村は粘った。最後は関西大の伊藤仁(2年、関大北陽)との2人旅となり、ラスト1周でスパート。「1」のポーズを掲げてゴールし、自らの自己ベストも更新。幸先のいいスタートとなった。
2組目は立命館大の山田真生(3年、中京)が始めから突っ込み、終盤は独走。その中でも大阪経済大の真鍋友貴(4年、大塚)はペースを守り組5着に入る。3組目は終盤まで6人ほどが先頭争いをしていたが、ラスト1周で大阪経済大の坂本智基(2年、智辯カレッジ)が抜け出しスパート。組トップの30分42秒94はそれまでの自己ベスト32秒18秒93を大きく更新するタイムだった。同級生の井上瑞貴(2年、三田松聖)も4着に入った。
坂本は1着でのゴールに「とても嬉しかった」と笑顔を見せたが、大きく自己ベストを更新したことについては「練習の感じを見てたら31分は切るかなと思っていたので、予想通り」と口にし、しっかりと練習を積めていたことをうかがわせた。井上も「去年は精神的にもけっこうきつくて、練習をサボりがちになっていたこともあったけど、悔しさを味わってからは各自練習になっても声をかけあっていました。去年までは28分台を持っていた富田さんがいましたが、今年は総力で、全員でカバーしあおうと思って走りました」とチーム一丸となってやってきたことを強調した。
精神的支柱の存在がチームをまとめる
関西地区選考会では、途中経過は10000mの平均タイムの形で発表される。3組が終わった時点で立命館大が31分11秒27、関西学院大が31分17秒26、大阪経済大が31分20秒68という僅差。暫定4位の関西大は31分26秒88と、一人あたり6秒の差しかなく、4組の結果次第で順位が大きく変動することもあり得た。
4組には各校の持ちタイム上位の選手が配置されることが多い。大阪経済大からは佐々木凛太郎(3年、関大北陽)、片山蓮(3年、東海大付属大阪暁星)、中角航大(2年、履正社)の3人がエントリー。このうち副将をつとめる片山は、足に故障をかかえていたと竹澤HCは明かす。「主将の須田真生(4年、大阪桐蔭)も故障があり、走れる状態ではなかったので、昨日外しました。ですが副将の片山は『どうしても出たい』と。チームの精神的な支柱でもあったので、タイムが厳しくても使おうと決断しました。彼がいたからみんなが奮起したというところもあると思います」
レースは京都産業大学の泉海地(4年、滋賀学園)が突っ込み、そこに浦田昴生(京都産業大4年、智辯カレッジ)もつく。終盤には時岡宗生(京都産業大3年、美方)が引っ張るなど京産大勢が目立つ展開に。しかし8000mのところで関西学院大の田中優樹(2年、報徳学園)が仕掛けて独走体制に。田中はそのままトップでゴールした。中角はペースを守り続け、苦しそうな顔になりながらも組6着の30分08秒37でゴール。従来の自己ベストを20秒以上短縮する走りだった。競技終了後、20分ほど経って電光掲示板に結果が発表されると、大阪経済大の選手たちからは大きな歓声があがった。
中角は昨年の選考会にも出場したが、チームでも下から2番目のタイムで悔しい思いをした。「今年みんなで積み上げてきて、勝てたので嬉しいです」。3組目に走った同級生2人の快走には「鳥肌が立って、いけるなと思って」。だが僅差ということもあり最後までわからず、結果が発表された後も「実感はまだないです。ほんまにいったんやな?って感じで」と率直に話した。
出場することが飛躍への第一歩
昨年、選手たちが苦しみ、悔しい思いをしてきたのも見てきた竹澤HCは「本当に選手たちがコツコツやって、みんなにストーリーがすごくあって、個人的にも思い入れがあってすごく嬉しいです」と声をはずませた。「学生がやってきたことは間違ってなかったね、と関係者の方にも言われて、それがすごく嬉しかったです。率いてきてよかったなというか、それをすごく思いました」
選手としては全国の舞台、世界の舞台を経験してきた竹澤HCだが、指導者としては初めての全国になる。まずは10月の出雲駅伝、そして11月の全日本大学駅伝。どんな戦いをしていきたいですか?と聞くと「まずは出させてもらうだけだと思うので」ともいいながら、「学生の中で自信の第一歩になると思います。(全国大会に)出たことで精神的に成長すると思うので、その飛躍の第一歩になってくれたら嬉しいと思います。出てなんぼというところがあるので、出られたというのはとても価値があることだと思います」とこの経験が学生たちにさらなる成長をもたらしてくれると話す。
「大経大はエースがいないので、全員でカバーしようと思って走りました」。話を聞いた選手たちはみな同じように口にした。今のメンバーにとっては全員が初めての全国の舞台。新しい舞台にも「チーム」として一つになって挑んでいく。