陸上・駅伝

特集:2022日本学生陸上競技個人選手権大会

名城大・山本有真、5000m優勝とユニバ内定 陸上から離れたあの2カ月の意味

山本は個人選手権5000mで、個人種目では初となる全国タイトルをつかんだ(撮影・すべて加藤秀彬)

2022日本学生陸上競技個人選手権大会

4月15~17日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
山本有真(名城大3年)
1500m 4位 4分24秒79
5000m 優勝 15分49秒19

4月17日の日本学生個人選手権女子5000m決勝。名城大学の山本有真(ゆま、4年、立光ヶ丘女子)が、個人種目では初の全国タイトルをつかんだ。「1年前の自分では考えられないです。あの時、仲間の2人がユニバ(ワールドユニバーシティーゲームズ、WUG)の代表を決めて、悔しいなって思ってから走り始めたので」

監督に「私は遊びたい」 そして5連覇の立役者は帰ってきた

「私は遊びたい」、それでも仲間の姿に再び火がついた

昨年1月のことだった。練習のモチベーションが落ちていた山本は、米田勝朗監督にこう言った。「陸上一本じゃなくて、私は遊びたいです」と。それから2カ月、本当に陸上から離れ、練習に参加しなかった。寮を飛び出し、実家に帰った。友達と思う存分遊んだ。戻るつもりはなかった。でも、また走りたいと思えたのは仲間のおかげだった。

昨年3月の日本学生ハーフマラソンで、チームメートの小林成美(現4年、長野東)が1位、荒井優奈(現4年、須磨学園)が3位になった。夏に予定されていたWUGの代表にも選ばれた。一緒にいたはずの仲間が大きな舞台に進む。その現実を受け、闘争心に火がついた。特に、同世代の先頭を走る小林の存在は大きかった。

「追いつけそうで追いつけない。一緒に練習しているのに、大会になると遠く感じる。自分も同じ立場になりたいと思えるから、満足せずに走りたくなります」

部に戻るつもりはなかったが、仲間の活躍に触れ、再び走り始めた

部活に復帰すると、見違えるように練習に励んだ。チームの主力として活躍し、昨年10月の全日本大学女子駅伝では1区区間賞。名城大5連覇の立役者となった。

優勝だけをめざしてラスト1周で勝負

自身の性格を「短期集中型」という山本。大学入学後はけがが相次ぎ、2カ月以上まともに練習したことがなかった。それがこの冬、「大学生活で1番練習できている」というほど順調に練習をこなした。「不安要素はない」ときっぱり言い切るまでになった。

大会初日に行われた1500mでは4位だった(右が山本)

迎えた日本学生個人選手権。昨夏に予定されていたWUGは今夏に延期となり、代表権獲得のチャンスがめぐってきた。初日の1500mはラスト一周のスパート勝負でついていけず4位に終わった。だが、気持ちがぶれることはなかった。「監督から、5000mの方が狙えると言われていたので」

最終日の5000m。優勝だけをめざし、走り出した。序盤から先頭集団の2番目で様子を見て、米田監督の指示通り「行けるタイミング」を待った。鐘が鳴り、残り一周。その時が来た。得意のラストスパートで、大きく前へ。全員を置き去りにし、他選手の追随を許さない。そのまま1着でゴールした。この結果、10000mで優勝した小林とともにWUGの代表に内定した。

得意とするラストスパートで勝負を決めた

自分を支えてくれた父へ

実は、前日は父の誕生日でもあった。練習をやめていた時期、競技者でもあった父と初めて「深い話」をした。陸上競技で苦しかったこと、続けて良かったことを話してくれた。
「お父さんのためにもこの1年間走れた。いいプレゼントができたと思います」

昨年までは、「代表なんて無理でしょ」と思っていた。自分の本当の気持ちを気づかせてくれた仲間や監督、家族の存在が山本のポテンシャルを引き出し、強くしてくれた。陸上から離れたあの2カ月は、無駄ではなかった。

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