名城大が富士山女子駅伝優勝で「2冠」達成 確実にレベルアップしたチーム力
12月30日に静岡県富士市・富士宮市で2019全日本大学女子選抜駅伝競走(通称・富士山女子駅伝)があり、名城大学が2連覇を飾った。名城大は10月の全日本大学女子駅伝(杜の都)の優勝と合わせ、2年連続の「2冠」を達成した。
エース区間で勝負決する
雨天となった富士の麓で、全24チームの戦いは幕を開けた。1区(4.1km)は全日本大学選抜の金光由樹(東海大1年、岡山操山)が区間賞。2区(6.8km)の五島莉乃(中央大4年、星稜)につなぎ、五島は自らの区間記録を塗り替える走りでトップをキープ。3区(3.3km)は樺沢和佳奈(慶應義塾大3年、常磐)を追う立命館大の御崎舞(2年、筑紫女学園)が区間新の走りで32秒あった差を16秒まで縮める。4区(4.4km)は立命館大の松本美咲(3年、立命館)がここでも区間新の快走でついに逆転。立命館大がトップに立つ。
勝負が決まったのはエース区間の5区(10.5km)だった。立命館大の三浦佑美香(4年、山梨学院)と22秒差の3位で襷(たすき)を受け取った名城大のエース・加世田梨花(3年、成田)がぐんぐんと前との差を詰め、3.2km付近で2位に、3.8km付近でついにトップに立った。その後6区(6.0km)小林成美(1年、長野東)が後続との差を突き放し、アンカー7区(8.3km)の和田有菜(2年、長野東)はトップを守ってゴールに飛び込んだ。2位は2年連続で大東文化大。ユニバーシアードハーフマラソン金メダルの鈴木優花(2年、大曲)が懸命に前を追ったが、及ばなかった。
チーム全体がレベルアップした
順風満帆でここに乗り込んできたわけではなかった。大会直前に実力者の高松智美ムセンビ(2年、大阪薫英女学院)と和田の足の状態が悪くなり、特に和田はほぼ走らない期間があった。米田勝朗監督は「起用に迷った」という。しかし、他の選手達が「高松と和田をしっかり支える」と言ったため、選手を信じて高松を2区に、和田をアンカーに起用した。結果的に高松は区間5位、和田は区間4位の走りで耐え、4~6区の3人が区間賞。「7人全員安定感があって、ちゃんと自分の力を出せていた」と監督が語るように、チーム全員でつかんだ優勝だった。
アンカーの和田は、大学に入って初めてゴールテープを切ったという。走り終わってからは思わず倒れ込むような場面があった。「本当にみんなのおかげで(ゴールテープを)切らせてもらって、感謝しかないです」と口にした。足の状態に不安があったにもかかわらずアンカーを任せてもらったことについては「くじけそうになったけど、(ゴールで仲間が)待っててくれるんで、結果で返すしかないと思いました」と強い気持ちで走ったことを明かした。
エース加世田、責任感と自覚
勝負を決めた加世田は「しっかり自分の役割を果たして、区間賞も取れてよかった」と笑顔を見せた。「来年は4年生になるので、チームを引っ張っていかないと」と、エースそして上級生としての自覚をにじませた。
米田監督は加世田について、「いままでは自己管理ができていなかった」という。特に昨年の富士山女子駅伝のあとから今年3月のトラックシーズンはある程度休める時期で、そこで友人に誘われてスイーツを食べたりなどしていた。その姿を見て、「それで弱くなったらただの笑いものだぞ。強くなったらすごい競技者だと思う。小学生、中学生が見てて『ああいう陸上をやりたい』と思ってもらえる、そういう存在になってるんだから、結果を出して、オンとオフの切り替えができてるところを見せてくれ」と声をかけた。そこから周りに左右されない強い心を持てるようになった、と評価する。いまでは練習が終わった後、一人で補強に取り組む時間なども持つようになった。
来年、加世田はキャプテンを務める。「責任感を持たせた方が間違いなく走ってくれる」と米田監督は言う。杜の都で4年生がメンバーとして走らず、駅伝キャプテンを加世田に任せたことで「変わった」という。「『私がやらなきゃ』という使命感があったからあそこまでの走り(5区で区間賞)ができたと思う。今回も和田と高松が万全でないから私が、というのはあったと思う。一歩間違えたら関谷さん(夏希、大東文化大4年、市立船橋)に30秒は詰められてたところ、差を広げられたというのは大きいです」と加世田の走りを評価した。
今年2大駅伝を4年生なしで制覇した名城大。学年が上がるにつれ、主力メンバーが自覚を持って競技に取り組むようになったと米田監督は言う。来年も今日走ったメンバー全員が残る状態で、強さを継続していけるか。