名城大・小林成美新主将がクロカン初V ラストイヤーは世界選手権も駅伝もマラソンも
第105回日本選手権クロスカントリー
2月26日@福岡・国営海の中道海浜公園クロスカントリーコース(1周2km)
シニア女子8km
1位 小林成美(名城大3年) 26分34秒
2位 猿見田裕香(ユニバーサルエンターテインメント) 26分35秒
3位 川口桃佳(豊田自動織機) 26分45秒
4位 出水田眞紀(第一生命グループ) 26分54秒
5位 山中柚乃(愛媛銀行) 27分02秒
6位 倉岡奈々(鹿児島銀行) 27分04秒
7位 山ノ内みなみ(鹿児島陸上競技協会) 27分06秒
8位 北川星瑠(大阪芸術大2年) 27分08秒
クロカン日本選手権シニア女子8kmは最後の直線で勝負がついた。首位争いをしていたのは小林成美(名城大3年、長野東)と猿見田裕香(ユニバーサルエンターテインメント)。ラスト1kmすぎで猿見田が小林を引き離す。「(2位の)このままいっちゃおうかな」と小林は思ったが、「ここでいいイメージを作りたい」とラストスパートをかけて猿見田を追う。1秒差で先着したのは小林だった。「ラストはだいたい負けてるけど、気持ちの面でラストに集中できた」と小林は笑顔で勝因を明かした。
「世界」で戦うために
今大会には優勝候補の欠場が相次ぎ、シニア女子も田中希実(豊田自動織機TC)や不破聖衣来(拓殖大1年、健大高崎)、前回大会で高校生ながら2位に食い込んだ酒井美玖(デンソー)なども欠場となった。トラックシーズンに照準を定めてきた小林にとって、今大会は状態を確認するという位置づけだったが、それでも世界を目指すのであれば負けるわけにはいかない。「ここは勝って当たり前だと思わないと世界で戦えない」と勝負にこだわった。
レースは大きな集団で動いたが、2周目を前にしてオープン参加のオマレ・ドルフィン・ニャボケ(ユー・エス・イー)が前に出るとそのまま単独走へ。続く集団は12人ほどだったが次第に選手がこぼれていき、ラスト1周で猿見田と山中柚乃(愛媛銀行)、小林、川口桃佳(豊田自動織機)の4人に絞られた。猿見田がペースを上げると山中と川口はついていけず、猿見田と小林の勝負へ。冒頭の通り、小林は最後の直線でスパートをかけて猿見田を振り切り、初優勝をつかんだ。
主将として「後輩たちのためにいいチームで終わりたい」
優勝者の小林は記者会見に呼ばれ、同じ歳の山中の名前を挙げながら「山中さんが引っ張ってくれ、自分も見習わないといけない」とコメント。自分でリズムを作ってレースを引っ張るような、最初から最後まで粘り強い走りがまだ自分にはできていないという思いから、「自分の今の力で記者会見に呼んでもらうなんて場違いだな」とこぼす場面もあった。だがこれまで負けることが多かったラスト勝負で勝ち切れたことは大きな自信となった。
小林は昨年5月の日本選手権10000mで3位になり、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ10000mで31分22秒34の日本学生記録(当時)をマーク。今年7月のオレゴン世界選手権(米国)の参加標準記録も突破した。世界選手権の代表選考がかかった6月の日本選手権に向け、米田勝朗監督の指導の下、力のあるチームメートと切磋琢磨(せっさたくま)しながらピークを合わせていく。「クロカンで得た手応えを更にこれからの練習、トラックに切り替えたい」と新シーズンに向けていいスタートを切ることができた。
その一方で、名城大学の主将として叶(かな)えたい夢もある。名城大は全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)で5連覇、全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)でも4連覇を成し遂げている。「やっぱり駅伝でしっかり勝って、後輩たちのためにいいチームで終わりたい。そのために最後、駅伝を走ります」。高校からの先輩でもある前主将の和田有菜(4年、長野東)をはじめ、名城大の主将を務めてきた選手たちは結果を残してきた。「主将としての自覚はすごくあります。歴代の先輩も強かったですし、自分も走りで引っ張っていかないといけない」と小林も主将としての覚悟と意識が芽生えてきたという。
もう1つ、学生のうちにマラソンを走りたいという思いもある。ハーフマラソンで夏のワールドユニバーシティゲームズ出場し、来年の東京マラソンを狙う。そうなると1年通してレースが続くことになるが、「忙しい1年になりそう」と言う小林の顔はやる気に満ちていた。