陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

都道府県男子駅伝で福島県をサポート! 山口智規選手に付き添わせていただきました

都道府県男子駅伝では福島県チームのサポートをさせていただきました

今週の「M高史の陸上まるかじり」は全国都道府県対抗男子駅伝のお話です。レース前日に「ひろしま男子駅伝レース直前スペシャルトークショー」というトークイベントがあり、尾方剛さん(広島経済大学陸上競技部監督)、小林祐梨子さん(1500m元日本記録保持者)と出演させていただきました。

注目選手、注目チーム、大会の見どころに加えて、尾方さん、小林さんご自身の現役時代の経験、直接足を運んで選手や指導者に取材された内容、解説者としての俯瞰(ふかん)的な視点など、さまざまな角度からお話しされ、45分間があっという間に感じました!

前日トークイベントでは尾方剛さん(左)、小林祐梨子(右)さんとたっぷりお話しさせていただきました!

福島県と感じる深いご縁

そして大会当日は、昨年に続いて福島県チームの付き添いをさせていただきました!

福島県チームを率いる安西秀幸監督は、駒澤大学OB。僕の一つ後輩というご縁もありまして、貴重な経験をさせていただきました。思えば、駒澤大学の恩師・大八木弘明総監督、藤田敦史監督も福島県出身。福島県とは深いご縁を感じます。

駒澤大学OB・安西秀幸さん「駅伝優勝請負人」が駆け抜けてきた道!
早めに到着して陣地の準備をします

今回は7区・山口智規選手(早稲田大学2年、学法石川)の付き添いをさせていただきました。

朝6時。福島県チームが朝練のために集合します。といっても大会当日の朝なので、各自が自身の体調に合わせて軽めのジョグなどをする程度です。集合の目的には起床時の体調といったコンディション面の確認も含まれています。もしも起床して体調が悪かった場合、補欠の選手が急きょ出走ということもあり得ます。

その後、選手の皆さんは朝食をとり、レースに向けた準備をします。僕はチームスタッフの皆さんと朝8時に集まって荷物を会場まで運びました。

都道府県対抗男子駅伝のスタートは12時30分ですが、選手が到着するよりも早く到着して、陣地の準備をしていきます。福島県チームにはトレーナーの桑井太陽さんが同行し、治療用のベッドもセッティング。走る前に体に刺激を入れたり、選手のコンディションを確認したりします。

今年の箱根駅伝で山口選手は2区を任されました(撮影・佐伯航平)

駒澤大学時代を思い出します!

昨年は1区の付き添いだったため移動はありませんでしたが、今年は7区だったため、第6中継所まで移動しました。選手は1次招集をしてから選手専用のバスで移動します。

各都道府県チームの付き添いの人たちは、第6中継所付近に準備していただいた小学校の体育館の待機所に早めに着いて、シートやマットを敷きます。学生時代に駒澤大学でマネージャーをしていた頃を思い出します。待機所から中継所までの道順やトイレの場所も確認します。トイレは和式か洋式か、仮設か。混雑しなそうなトイレはどこかなども細かくチェックしておきます。

7区は一般区間ということもあって、選手は経験者が多くリラックスしている印象でした。僕も待機所でテレビ中継を見ながらレースの行方を確認し、山口選手がウォーミングアップを行っている間も、絶えず福島県チームの状況を確認していました。

待機所の体育館にて。山口選手はリラックスした表情でレースに向けて集中力を高めていきました

8位入賞が狙える位置でレースが進んでいましたので、8位とのタイム差もお伝えするようにしていました。プレッシャーのかかる順位で襷(たすき)がつながりそうな中、山口選手は緊張感を楽しむかのように笑顔で準備されていました。上尾シティハーフマラソンで1時間01分16秒、箱根駅伝2区で1時間06分31秒(区間4位)といずれも早稲田大学記録を更新。都道府県駅伝ではアンカーの7区に有力選手が集まりましたが、福島県チームにとっては自信を持っての山口選手7区配置となりました。

最終コールがあり、いよいよスタートです。山口選手はスタートに向けて集中力を高めていかれました。

僕は水とスポーツドリンク、寒かった場合を考慮してアームウォーマーを持って、直前まで中継所付近で待機します。晴れ間が見えて少しずつ気温も上がってくる中、山口選手はスタート前も給水をこまめにとります。付き添いの中で最も重要な役割の一つと個人的に思っている「シューズの紐(ひも)の確認」も行い、準備は万全。山口選手は「最初から攻めていきます!」と頼もしい一言を発し、中継所に並びました。

スタート直前の山口選手。現状打破ポーズまでいただきました!

6区の吉田進次朗選手(高田中学3年)が第6中継所に駆け込んできました。山口選手は大きな声で「進次朗!」と声かけ。中学生にとって先輩が待っているというのは、心強いですよね。

走り終わった吉田選手は区間22位(9分08秒)。本人は思っていたような走りができなかったそうで悔しそうにしていましたが、この経験はきっと次のステップにつながりますね!

この日は風も吹き、後半区間は向かい風基調でしたが、山口選手は三つ順位を上げて13位でフィニッシュしました。レース後「楽しかったです。高校時代を過ごした福島県チームに恩返しの走りをしたかったです」とお話しされた山口選手は区間6位の好走でした。駅伝の「付き添いあるある」かもしれませんが、自分が付き添いをした区間の選手が好走すると、なんだかちょっとホッとしますよね(笑)。山口選手、ありがとうございます!

福島県チームでは2区の椿瑠偉音選手(会津若松第一中学3年)選手、4区の増子陽太選手(学法石川高校1年)がいずれも区間2位で走り、チームの順位を引き上げました。

そして今大会、福島県チームの主将を務められたのは高槻芳照選手(東京農業大学4年、学法石川)。3区で区間24位と、個人としては納得のいく走りではなかったそうですが「また福島県チームに選んでもらって貢献できる走りをしたいです」とお話しされていました。

また、出走はかないませんでしたが、サポートにまわった木村有希選手(慶應義塾大学4年、福島県立葵)は駅伝に向けた練習で高校生を引っ張ったり、高校生や中学生に声をかけたりと献身的に福島県チームを支えられました。

今回も貴重な経験をさせていただいた福島県チームの皆様、ありがとうございました!

レース後、あいさつをする安西秀幸監督(左端)と選手の皆さん

長野が3連覇!区間新や「レジェンド」の出走も

レースの方は、長野県チームが3連覇を飾りました。個人的には「一般区間である3区と7区の区間記録がついに更新されたんだ」と感慨深い気持ちになり、改めてそれまでの区間記録保持者だった大森輝和さん、大島健太さんのすごみを感じました。

また、僕の母校でもあります駒澤大学の選手の皆さんも多く出場されていました。3区で千葉県チームの篠原倖太朗選手(3年、富里)の前を追う姿勢、表情、気迫は、テレビ画面越しでも伝わってきました。7区・長野県チームの鈴木芽吹選手(4年、佐久長聖)選手はトップで襷をもらい、2位と差がある中でも攻めの走りで、区間新記録を樹立。悔しい思いをされた箱根駅伝を経て強さを発揮されました。

3連覇を達成した長野県チームのアンカーは今季駒澤大で主将を務めた鈴木芽吹選手!(撮影・上田潤)

都道府県駅伝は中学生、高校生、一般区間があって、世代を越えた襷リレーが行われるのも魅力ですよね。ベテランという言葉を超えて、もはやレジェンドと表現したい選手もご紹介します。

鳥取県チーム・岡本直己選手(中国電力)は39歳で僕と同い年。都道府県駅伝通算134人抜きの記録を持っています。今回は7区を走ったため、中継所近くの待機所で少しお話しさせていただきました。やはり、同い年の方の活躍はうれしいですね!

そして今大会、最年長は石川県チームの3区で出場した中村高洋選手。以前、4years.でも取材させていただきました。中村選手の走りからは能登半島地震で大変な被害を受けた故郷・石川県への思いが伝わってきました。

鹿児島のスーパー市民ランナー・中村高洋さん 37歳で初のサブ10達成!

ちなみに中村選手は、高校まで中距離をメインにしていたこともあり、小松高校時代の5000mのベストはなんと17分台。名古屋大学、名古屋大学大学院で日本インカレや出雲駅伝、全日本大学駅伝と全国レベルの大会に出場。社会人になってからは市民ランナーとして走り続け、5000m13分54秒28、10000m28分03秒73、ハーフマラソン1時間00分57秒まで記録を伸ばし、40歳になられても、なお現状打破されています。中学生とは親子に近い年齢差ですね!

というわけで、都道府県男子駅伝リポートでした!

M高史の陸上まるかじり

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