出雲駅伝出場つかんだ広島経済大学 中距離にも力入れ、4大会ぶり伊勢路をめざします
今週の「M高史の陸上まるかじり」は広島経済大学のお話です。昨年の出雲駅伝では14位。中国四国学生駅伝で優勝を飾り、今年も出雲駅伝に出場します。中距離でも東秀太選手(2年、三田松聖)が昨年の日本インカレ800mで3位に入るなど、駅伝からミドルまで熱い広島経済大の皆さんを取材させていただきました。
監督はマラソンや駅伝解説でもおなじみの尾方剛さん
広島経済大を指導されているのは尾方剛監督。山梨学院大学時代には箱根駅伝総合優勝のアンカー、中国電力では3度の世界選手権マラソン日本代表(2005年のヘルシンキ大会では銅メダル)、北京オリンピックマラソン日本代表、ニューイヤー駅伝優勝など輝かしい成績を残してこられました。一方で学生時代は全身脱毛症に苦しんだ時期もあり、栄光も挫折も経験されています。
2012年5月に広島経済大学の監督に就任。長距離や駅伝に加えて、近年の広島経済大学は中距離でも力を発揮しています。
東秀太選手は2022年のU20世界選手権800mに出場。2023年シーズンは日本インカレで800m3位、1500mでは9位となりました。OBでは2023年に卒業した山﨑優希選手(現・KAGOTANI)が昨年の日本選手権800mで4位入賞と活躍しています。
18000m変化走をご一緒させていただきました!
広島経済大学の正門を通ると、グラウンドまで延々と急な坂が続きます。「雪が積もったらスキー場になってしまうのでは!?」と思うほど長く、まるで箱根駅伝5区の急斜面のようです。選手の皆さんも朝練習やロード走でこの坂を使ってトレーニングされているそうです。グラウンドまで上がると、広島市内が一望できるほど見晴らしが良いです!
取材に伺った日のトレーニングは「トラックで18000m変化走+600m」というメニューでした。1000mごとにペースが上がって下がってを繰り返し、ラスト2000mはさらにギアチェンジしてペースアップしていくトレーニング。M高史もご一緒させていただきました。
選手の皆さんがうまく引っ張ってくださり、マネージャーさんのタイム読みや給水のサポート、尾方監督の練習中の声かけや見守りなどは、とても心強く感じました。僕自身は学生時代、駒澤大学でマネージャーをさせていただいてましたが、無我夢中でタイムを読んだり、給水したりしていたことを少しだけ思い出しました。
変化走は一定のペースで走るより変化があるため、体に負荷はかかりますが、リズムをつかむと走りやすいですね!「よし、あと200m走ったらペースを落とせる」といった走行中の小さなモチベーションにもなります(笑)。ペースの上下によって心拍数も変化しますので、起伏があるロードレース途中の駆け引きにもつながっていきそうだなと感じました。
16000mが近づいてきて、いよいよラスト2000m。ここからペースが上がります。僕はとにかく必死に選手の皆さんの背中を追いかけました。そして17000mを通過し、さらにペースが上がります。僕にとってはもうダッシュです(笑)。どうにか18000m変化走をコンプリートさせていただきました。ラスト1000mは3分05秒!
走り終えた直後、リカバリーを600mジョグでつないで、さらに600mを1本走るのですが、僕は18000mでオールアウトしてしまい……600mは応援に回りました。あのペースをサラッとこなし、さらに600mでもう一段ギアチェンジして走られている選手の皆さんのすごさを体感しました。最後にスピードを上げて終わるので、レースのラストや駅伝で襷(たすき)を外してからのスパートにも効いてきそうな練習ですね!
2020年以来の全日本大学駅伝をめざします!
練習前に尾方監督、練習後には選手とマネージャーさんにお話を伺いました。
尾方剛監督
「東秀太は2年目になって、実績も残してきました。東の場合、10月の頭まで中距離をやっていて、出雲駅伝は長距離練習をやっていない中で走りました。そこから長距離の練習にも移行しまして、中四国駅伝では4区で区間賞も獲得し、5000mや10000mで自己記録を更新しました。メインは中距離でやってくれたらと思っていますが、本人が駅伝をやりたいと言ってくれています。中距離ももちろんスタミナが必要なので、秋・冬の練習ととらえてやってほしいですね」
「藤井奏汰(2年、興譲館)は高校時代は5000m15分02秒でしたが、大学に入ってから実績を残してくれて、5000m14分20秒、10000m29分22秒と伸ばしてくれていますし、今後チームの中心になっていくと思います。(2024年シーズンの目標について)東に関しては、学生の大会では優勝。日本選手権では決勝に残って、表彰台争いをしてほしいですね。チームとしては全日本大学駅伝に3年間出られていないので、まずは出場することです。出雲駅伝出場は決まっているので、中四国の複数枠を維持できる結果を出したいです。5000m13分台、10000m28分台が複数人出るようなチームにしていきたいです」
東秀太選手
「前半シーズンは思ったようにいかなかったですが、夏あたりから安定した走りができるようになってきました」。中距離から駅伝まで走れる秘訣(ひけつ)を伺うと、「地道に練習をこなしていくことです。長距離に取り組むことでリカバリーが早くなっているなと感じています。広島経済大学は坂道があるので、練習で追い込んだ後に坂ダッシュを数本入れています。坂道では全力で走っているのにあまり進んでいないですが、その後にトラックで走るとすごく進むのを感じます。(2024年シーズンの目標は)800mで日本インカレ優勝、日本選手権の表彰台です。長距離では5000m13分台、10000m28分台を出したいです」
小川晴也選手(2年、山﨑)
「教員免許が取れること、そして尾方監督のもとで陸上ができるということで広島経済大学を選びました。中学社会と高校地歴の教員免許を取って、将来は陸上部の顧問をしたいです。高校時代はほとんど1人で練習していましたが、大学では集団でレベルの高い練習ができています。(2024年シーズンについて)個人的な目標は1500mで日本インカレのB標準3分50秒を切ることです。主将になるので、チームとして出雲駅伝で地方勢トップ、全日本大学駅伝出場、中四国駅伝3連覇と大会新記録を目指しています」
秋山留菜マネージャー(3年、西条)
「マネージャー生活は充実しています。出雲駅伝出場が決まり、選手に感謝しています。後輩のマネージャーも増えてきたので、みんなで仕事を回せるようにして、さらに選手の活躍をサポートできたらと思っています。全日本大学駅伝には2021年から出場できていないので、今年こそ出場することが目標です」
小野貴斗マネージャー(2年、須磨学園)
「1年間は競技をやっていましたが、2年生からマネージャーになりました。須磨学園高校時代は主将をしていましたが、支える側もしていました。(マネージャーのやりがいについて)試合の後にありがとうと感謝されるのは、マネージャーをやっていてよかったなと思います。マネージャーをやっていることを将来にも生かしていきたいです」
寒い日も、風が強い日も、キャンパス内の坂道を駆け上り、グラウンドで汗を流してきた広島経済大の皆さん。世界で勝負してこられた尾方剛監督のご指導のもと、中距離から駅伝まで現状打破し続けています!