陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

世界陸上銅メダリスト尾方剛監督が指導 中距離から駅伝まで、広島経済大の挑戦!

昨年11月の中四国学生駅伝では優勝を飾り、今年の出雲駅伝出場を決めた広島経済大学の皆さん(提供・広島経済大学陸上競技部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は広島経済大学のお話です。東秀太(あづましゅうた)選手(1年、三田松聖)は昨年コロンビアのカリで開催されたU20世界選手権800mに日本代表で出場。山﨑(やまさき)優希選手(4年、東播工業)は日本インカレで800m3位、1500m6位となりました。昨年11月の中四国学生駅伝では優勝を飾り、今年の出雲駅伝出場を決めました。

中距離から長距離・駅伝まで指導されているのは尾方剛監督。マラソンで2008年北京五輪日本代表、3度の世界陸上日本代表、ヘルシンキ世界陸上では銅メダルも獲得されるなど世界の舞台に挑み続けてこられました。広島経済大学の監督に就任されて11年目です。

3年ぶりの取材!練習にも参加

3年前に取材させて以来、3年ぶりに伺(うかが)わせていただきました。当時1年生だった選手ももう4年生。コロナ禍で制約されることも多かった学生生活だったと思いますが、チーム一丸となって乗り越えてきました。

広島経済大学のキャンパスは学内にもスクールバスが通っているほど広いです。そして、正門からグラウンドまで長く急な坂道が続きます。箱根駅伝の5区!? と思うような坂道。選手の皆さんに伺うと、朝練で帰ってくるだけでもいい練習になるそうです(笑)。

尾方監督も「ロード走や外に行く時は必ずグラウンドをスタートしますし、下ったら上って帰ってくるので、それだけでも効果はあるかなと思います」と実感されていました。

この日のメニューは12000mペース走+600m。M高史も練習に参加させていただきました。ただ、僕にとってはペースが速いので尾方監督とご相談して、12000mのうち1000mごとに合流して、1000m×6本と一人インターバルという形をとらせていただきました(笑)。 

冷たい風も吹く中、肌寒いコンディションでしたが、選手の皆さんが代わる代わる安定したタイムでラップを刻んでいきます。マネージャーさんもおそらく手がかじかみそうになりながらも、タイムを読み上げてくださいました。

12000mが終わり、僕の1000m×6も無事にコンプリートしまして、プラスの600mに合流させていただきました。ですが、最初からものすごいスピードで僕にとっては短距離走のようでした。もう僕は全力疾走! ダッシュです(笑)。ペース走の後に速い動きを入れるという意図も尾方監督に教えていただきました。こういったスピードの切り替えや速い動きを入れることで中距離でも活躍する選手が出てきているのかと感じました。僕も日頃のトレーニングで取り入れてみようと思います。

練習にも参加させていただき、M高史も現状打破!

尾方剛監督「もっと高みを目指して」

尾方監督にお話を伺いました。「フレッシュな選手たちが入学してきてチームも刺激になりました。東は中距離で入学当初からしっかり結果も残してくれて、U20世界選手権にも選ばれてくれました。4年生の山﨑は800mと1500m 2年連続で日本インカレで入賞しましたし、800mでは3位に入りました。福永(恭平)(4年、三木)にしても全日本大学駅伝では日本学連選抜チームで走ってくれたり個人の部分でも活躍してくれました。チーム全体として昨年度より良かったと思います。お互いが刺激し合って、レベルの高い練習ができました」と今シーズンを総括されました。

広島経済大学陸上競技部の尾方剛監督。現役時代、マラソンや駅伝など数々の実績を積み上げてこられました

11月27日の中四国学生駅伝では前半先行した環太平洋大学を4区・東秀太選手が逆転。そのまま逃げ切って優勝を飾りました。「4区に自信をもっていました。後半勝負と思っていたのでほぼ想定通りでした。全日本大学駅伝の予選会で負けたので、絶対勝たないといけないという思いでした。出雲駅伝の中四国枠が二つありましたが、勝って出雲出場を決めたいという思いでした。チームとしてまず出雲の権利をとったので勝負したいです。全日本も2年間出場できていないので最低でもチームで全日本に出場したいですね。山﨑や東といった全国で活躍できる選手がいます。そういった選手には全国の舞台で勝負させてあげたいですし、もっと高みを目指していきたいです」

現役時代、長距離・マラソンで活躍されてきた尾方監督。800mを見るにあたって、「専門分野ではなかったのですが、長距離にないスピードで、見ていて気持ちいいですし、こんなスピードで走れるんだ、すごいなと単純に感じます。400m52~53秒というラップを刻みますし、新たな発見がありますね。(中距離の指導ということで)TWOLAPSの横田(真人)君にまず聞きましたね(笑)。走ることは長距離も中距離も一緒なので、うまくミックスしながらアレンジしてやっています」

ちなみに、第100回を迎える箱根駅伝では関東以外の大学にも門戸が開かれることになりましたが尾方監督は、「箱根予選会の件は、学生にどうしたいか聞いたところ、学生たちから『出場しないです』と言ってきました」と話します。

「現実的に、出雲と全日本の間に箱根予選会がありますし、ハーフマラソンを走れる選手を最低でも10人揃(そろ)えなければいけないというのは、うちの今の戦力だと厳しいですし、学生も理解しています。10000m34分切りを10人揃えて出場することだけならできますが、そこで勝負できるかといったら間違いなく勝負できません。リスクを負って走るよりもその前後に二つ全国大会(出雲、全日本)があるので、そこに集中して走った方がいいとは自分は思いますし、学生もそういう風に思っています」と、チームの現状に目を向けています。

そして今後の箱根駅伝についても、「もし全国化が継続して、箱根を目指しますという選手が入ってくるようになればというのはありますが、今後どうなっていくかですね。ただ、うちの東のように中距離が得意な選手もいます。全大学が箱根を目指しますとなると、そういった選手の行く場所がなくなるかなとも思っています。関東は箱根があり、関東以外は箱根以外のことで目指すことができる。いろいろなことができるので、すみわけができていると感じています」とお話いただきました。

選手、マネージャーさんにもお話を伺いました!

山﨑優希選手(4年、東播工業)

「大学4年生、いろいろなことがあって、あっという間の4年間でした。日本インカレ優勝を掲げていたのですが届かず終わってしまって悔しい気持ちもありますが次に生かせると思います。(中四国学生駅伝での優勝について)僕自身あまり調子があがっていない中でしたが他のメンバーが頼もしくて、僕が楽させてもらいました。みんなで勝てたのは良かったと思います。卒業後は地元・兵庫で競技を続けます。今後は日本選手権800m入賞を目指し、タイムでは1500m3分40秒切りと800m1分45秒を目指して頑張っていきたいです」

日本インカレでは800m3位、1500m6位と活躍を見せた山﨑優希選手(先頭、提供・広島経済大学陸上競技部)

東秀太選手(1年、三田松聖)

「(広島経済大学に進んだのは)一番最初に声をかけていただいたのと、山﨑さんに憧れていたからです。大学に入ってから毎日トラックで一緒に練習でき、質の高い練習ができています。しっかり成長を感じることができました。U20世界選手権では佐藤圭汰選手(駒澤大学1年、洛南)、吉岡大翔選手(佐久長聖高校3年)といった有名な選手と仲良くなることができましたし、海外遠征も良い経験になりました」

中四国学生駅伝では4区で逆転し優勝の立役者に。「中距離も長距離もやりたいと思ってきたので、しっかり走れて良かったです。来年度は800mでは日本選手権、日本インカレの決勝にいきたいですし、5000mでも13分台を目指しています。将来的には2025年の東京世界陸上を狙っていきたいです」

U20世界選手権800m日本代表の東秀太選手(9番、提供・広島経済大学陸上競技部)

福永恭平選手(4年、三木)

「目標にしていた5000m13分台、10000m28分台が出せなかったです。5000mは14分08秒、10000mは29分21秒で微妙に届きませんでした。自分と山﨑で長距離、中距離を引っ張ってきました。自分たちが卒業した後は、ついていく立場から自分たちがやる側になるので、自覚してもらえたらなと思っています。卒業後も走るのは趣味で続けていきたいです」

全日本大学駅伝を走る福永恭平選手(中央、提供・広島経済大学陸上競技部)

秋山留菜マネージャー(2年、西条) 

「中学では吹奏楽、高校ではチアリーダーをしていましたが、大学駅伝を見るのが好きで、大学に入ってからマネージャーになりました。(マネージャーの仕事は)練習のタイム測定、動画撮影、選手の記録の入力、遠征届を提出、試合のエントリーなどです。選手が自己ベストを出した時や駅伝の時などサポートしがいがあると感じますね。楽しんでやっています。チームの雰囲気も良くて学年問わず仲が良いですし、全員で高め合えるチームです」。マネージャー入部希望も大歓迎とのことです。

マネージャーとしてチームを支える秋山留菜さん

トラックの中距離種目から長距離、駅伝まで幅広い種目で現状打破し続ける広島経済大学陸上競技部の皆さんの活躍に注目ですね!

M高史の陸上まるかじり

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