雨にも負けず、有力選手たちが相次ぎ好走 ホクレンDC北見、千歳をリポート
今週の「M高史の陸上まるかじり」は前々回、前回に続いてホクレン・ディスタンスチャレンジ2023のお話です。大会ライブ配信の実況を務めさせていただいた第4戦・北見大会、第5戦・千歳大会をふりかえります。ずっと現地に滞在しておりましたので、リザルト以外の点にも注目しながらリポートしたいと思います。
順大・三浦龍司選手に補助員の高校生も大興奮
第4戦となった北見大会。雨模様のコンディションとなりました。男子5000mCでは、ペースメーカーを終えたばかりの東海大学・石原翔太郎選手(4年、倉敷)がライブ配信の実況席にサプライズゲストでご登場。
石原選手は、FISUワールドユニバーシティゲームズ日本代表に選ばれています。東海大学の両角速監督によりますと、石原選手は前回の網走、今回の北見ともにペースメイクした翌日に距離走を行い、いわゆる「セット練」で順調に練習を継続できているそうです。
ちなみに、石原選手がペースメーカーを務めた男子5000mCには、現状打破の本家・川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)が出場。ゴールドコーストマラソンを走ったばかりですが、網走に続いて北見にも出場。4000mまでは13分台を狙えるペースで、自己記録13分58秒62(2012年)の11年ぶりの更新なるかというところまで迫りました! ラスト1000mが動かなかったそうで、14分09秒66でフィニッシュ。レース後はしばらく立ち上がれないほどの追い込み。まさに現状打破! という気迫が実況席にも伝わってきました。
レース後の川内優輝選手は、空港でたまたまお会いしても気さくに声をかけてくださり、笑顔でお話ししてくださいます。モノマネをさせていただいている身としては、ご本人様に感謝しかありません!
北見大会の注目選手といえば、3000mSC世界選手権代表が決まっている順天堂大学・三浦龍司選手(4年、洛南)!
北見大会の前に、「M高史の部活訪問」の活動で北見柏陽高校陸上部の皆さんの練習に伺ったのですが、北見柏陽高校さんの練習場所で、北見大会の会場でもある東陵運動公園で練習していたところ、三浦選手が前日練習を行っていました。
北見柏陽高校の皆さんは、「普段、自分たちが練習している公園で、あの三浦龍司選手が走っている!」と大興奮! 目をキラキラ輝かせながら何度も振り返っていました。
北見柏陽高校の皆さんは大会当日、補助員として大会を支えてくださいました。補助員をしながら三浦選手の走りを生で見られるということで、皆さん楽しみにされていましたね。北見柏陽高校さんとともに補助員をしてくださった北見北斗高校さんもありがとうございました。地元の陸上競技協会や高校生の皆さんが一生懸命に支えてくださるからこそ、選手の皆さんも思いっきり挑戦できるので、ホクレンファミリーの一員として御礼をお伝えしたいです。
雨の中、補助員を一生懸命頑張ってくれました北見柏陽高校さんの目の前で、三浦選手が男子5000mAに出場。ペースメーカーが外れた後半はレースを引っ張り、13分31秒31のシーズンベストの走りでした。レース後は実況席にも急遽ご登場いただき、意気込みやファンの方へのメッセージをお話しされました。(三浦選手のメッセージは大会ライブ配信のアーカイブからご覧いただけます!)
赤﨑暁選手が2戦続けて13分20秒台 「MGCでも注目」
その三浦選手を上回るペースアップをされたのが九電工・赤﨑暁選手。網走大会では13分27秒79と自己記録を約20秒更新しましたが、2戦連続13分30秒切りとなる13分28秒70で男子5000mAトップ。ラスト1周を56秒8(M高史の手元計測)という切れ味を見せました。
MGC出場権を獲得している赤﨑選手。2戦連続の13分20秒台の走りに、解説の河野匡さんも「MGCでも注目選手」として赤﨑選手の走りを絶賛されていました。
ちなみに、赤﨑選手は拓殖大学OB。拓大時代に取材をさせていただいたご縁です。当時4年生でチームの主将をされていました。取材させていただいた選手のその後の活躍は、やはり気になりますしうれしいですよね!
亜細亜大・片川祐大選手が5000mで大学新記録
そして、男子5000mAでは亜細亜大学の片川祐大選手(3年、報徳学園)が13分41秒72で亜細亜大学新記録を樹立。関東インカレ2部10000mでは5位(日本人2位)に入っている片川選手が5000mでも快走を見せました。片川選手には当日の朝練習でお会いしたのですが、調子も良さそうだったので、やはり自己記録を出す選手は雰囲気やオーラに現れますよね!
最終第5戦となった千歳大会。千歳で開催して5年目にして初めての雨だと河野さんがおっしゃっていましたが、この日は雨、風とも強く、やや厳しいコンディションで競技が始まりました。
男子800mAでは、昨年のU20世界選手権日本代表、広島経済大学・東秀太選手(2年、三田松聖)が1分48秒15で自己記録を0.02秒更新!
今年1月に広島経済大学さんの取材でお世話にもなりましたし、広島経済大学の尾方剛監督と東選手とは、北見駅から会場までのバスが一緒でしたので、特に応援にも力が入りましたね(笑)
中距離種目には特に厳しいコンディションの中での自己記録更新。秋以降も楽しみな素晴らしい走りでした。
筑波大・樫原沙紀選手が優勝、ドルーリー朱瑛里選手も好走
また、男子800mBには、TWOLAPS代表の横田真人さんが選手として出場。指導から競技会開催まで幅広くご活躍されていますよね。このレースでは競技者として挑まれ、レース後は5000mを3レース走る新谷仁美選手(積水化学)のコーチに戻られていました。
雨も降り、風も吹き、「雨にも負けず風にも負けず」と、まさに宮沢賢治さんの言葉が思い浮かぶようなコンディションの中、1500mでも男女ともに注目選手が登場。
男子1500mBでは、ランニング×コメディ×YouTuberたむじょーさん(田村丈哉選手)が網走に続いて出場。レースには課題が残ったそうですが、レース後には、実況席にも登場して配信を一緒に盛り上げてくれました。
また、女子1500mはラスト1周で激しい先頭争い。ラスト300mあたりからドルーリー朱瑛里選手(津山高校1年)がスパートし、先頭に立ちましたが、筑波大学・樫原沙紀選手(4年、呉三津田)が逆転し、4分15秒37で優勝。ドルーリー選手は4分19秒46で4位となりましたが、積極果敢に攻めていったレーススタイルに、河野さんも今後をとても楽しみにされていました。
新谷仁美選手が5000m3本、すべて15分50秒台
9月のベルリンマラソン出場を表明されている新谷仁美選手が、女子5000mのC、B、Aと3レースに出場。それぞれ、間に男子5000mがありましたが、実質リカバリー20分ほどという非常にタフなタイムスケジュールの中、女子5000mCでは15分52秒73でトップ。Bでは15分53秒74、Aでは15分56秒82と3本続けて15分50秒台! 野口みずきさんが2005年に樹立された女子マラソン日本最高記録2時間19分12秒の扉がついに開くのでしょうか。野口さんが記録を出されたのもベルリンマラソン。新谷選手の挑戦も今から楽しみですね!
駒澤大・鈴木芽吹選手が自己新、駅伝モードに
ホクレンシリーズ全体を通して好調ぶりを感じたのが中央大学です。
千歳大会でも、男子5000mCで溜池一太選手(2年、洛南)が13分39秒85、吉中祐太選手(2年、豊浦)が13分44秒09。男子5000mFで浦田優斗選手(3年、國學院久我山)が13分52秒77と自己新が続きます。特に、浦田選手は2戦連続の自己新でどちらも組のトップと、勝負強さも発揮しました。箱根駅伝総合2位となった中央大学ですが、今季の三大駅伝も注目ですね!
最終レースとなった男子5000mA。13分24秒55の自己新で日本人トップの5位に入ったのは、駒澤大学の主将・鈴木芽吹選手(4年、佐久長聖)でした。好走でしたが、レース後にお話を伺ったところ、「(日本人)学生記録(13分19秒00、竹澤健介さん、2007年)を狙っていたので悔しいです」と、自己記録更新よりも日本人学生記録に届かなった悔しさの方が強かったようです。
「ここまで個人の種目に集中させてもらってきたので、夏以降は駅伝に向けて主将としてチームを引っ張っていきたいです」と、前年度、大学駅伝三冠を達成したチームを牽引(けんいん)していくという主将としての気迫が伝わってきました。
そして、このレースには大八木弘明総監督が帯同されていました。大八木総監督は、卒業後も引き続き指導されている田澤廉選手(トヨタ自動車)が出場されたアジア選手権(10000m金メダル)の会場であるタイ・バンコクから帰国し、すぐに千歳へ! 灼熱(しゃくねつ)のバンコクから涼しい北海道へということで、「暑さが、もう全然違う」と笑ってらっしゃいました。
夕方には雨がやみ、風もだいぶおさまりました。そのうえ気温も低く、打って変わって5000mで記録を狙えるコンディションになりました。涼しい中でも、大八木総監督の熱さはしっかり伝わってきます! 5000mのスタート地点付近にいらっしゃった大八木総監督のお声は、フィニッシュ地点近くの実況席までしっかり届きました(笑)
また、クラウドファンディングでたくさんの支援も集まり、5大会すべてで導入されることになったウェーブライト(電子ペーサー)。きっちり一定ペースでライトが光るだけでなく、事前に設定を変更すれば、途中でペースを変えることもできるそうです。解説の河野さんによりますと、選手の走り、結果、選手の実際の声などをヒアリングしながら、千歳大会では少し設定を変更していました。
5000mの場合、スタートから2000mまでは平均ラップよりも少し速く、2000mから4000mまでは1000mあたり2秒ほど落とし、ラスト1000mで上げる設定に。前半、少し貯金ができて、中盤一度ためて、ラストでもう1回ギアを上げるということで、最初から最後まで同じペースにするよりも走りやすいのかもしれないですね!
コンディションが良くなったこともあり、5000mの後半の組では自己新が続いて「プチPB祭り」のような雰囲気になりました。
海外では、ウェーブライトを使用したレースで3000mSCの世界記録や好記録が続出しており、国内でも今後、使用レースが増えていくことでしょう!
移動中の機内でミラクルな再会
今年で、ライブ配信の実況を務めさせていただいて3年目となったホクレン・ディスタンスチャレンジ(5戦すべてフル参戦は2年目)。配信中、チャットやSNSで選手の皆さんへの応援はもちろん、僕にまで温かい応援のコメントをいただき、本当に感謝です。
今回のホクレン・ディスタンスチャレンジでは、飛行機で移動中、客室乗務員の方から「M高史さんですよね?」と声をかけられました。実はその客室乗務員さん、関西外国語大学女子駅伝部の卒業生で、以前、僕が取材させていただいたことがありました!
偶然乗った飛行機でなんというミラクル! 僕が「現状打破!」とお伝えしたところ、「いつも心に刻んでいます」と笑顔で返してくださいました!
ご縁に感謝ですし、取材でお世話になった方が大学での4years.を卒業してから社会人として輝いている姿を拝見して、とてもうれしい気持ちになりました。
これからもご縁を大切に、感謝の気持ちを込めて陸上界に恩返ししていくため、現状打破していこうと僕も心に刻みました! ホクレン・ディスタンスチャレンジ2023ありがとうございました! 現状打破!