陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

7年連続の全日本大学女子駅伝をめざす札幌国際大学 学内に本格的なクロカンコース!

札幌国際大学女子駅伝部の皆さんを取材させていただきました(すべて提供・札幌国際大学女子駅伝部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、札幌国際大学女子駅伝部の皆さんに取材させていただきました。6年連続で全日本大学女子駅伝出場中で、今年も全日本の切符を懸け、8月19日に真駒内公園で開催される北海道大学女子駅伝に向けて暑い夏も日々練習に取り組んでいます。

ふかふかで接地の衝撃がかなり和らげられます!

ご指導されているのは工藤裕行監督。元々は高校の教員をされていて、室蘭大谷(現・北海道大谷室蘭)高校で男女それぞれ全国高校駅伝に18回出場。札幌日大高校の女子でも全国に3回導いた名監督です。札幌国際大学女子駅伝部の監督に就任されて3年になります。工藤監督とお話をしていると、とにかく陸上が大好きで指導への情熱が伝わってきます。

高校の監督として何度も都大路に導いてきた工藤裕行監督(右)。札幌国際大学の監督に就任して3年に

大学のキャンパス内には1周897mのクロスカントリーコースがあります。一見すると距離が半端な感じもしますが、距離の端数を細かく計算して1kmごとに距離表示の看板を設け、バリエーションに富んだトレーニングを行うことができます!

「学内にクロカンコースがあるんですよ」と、工藤監督から事前にお話は伺っていたのですが、実際に訪問してみて、キャンパス内にこんなに本格的なコースがあるとは驚きでした!

札幌国際大学内のクロカンコース。ウッドチップで足に優しく、バランスや体幹も鍛えられます

コースのほとんどが芝生またはウッドチップでできていて、ロードを横切るところのみタータンの素材でできていますが、軟らかい路面です。ふかふかのクッションで接地の衝撃はかなり和らげられ、足に優しく故障の予防にもなりそうです。さらに、小刻みな起伏や最大傾斜15%の坂もあるので、バランスや体幹、脚力も鍛えられます。

思わずここで合宿をしたくなるくらい素晴らしいコースで普段から走ることができるのは強みですね!

さらに、人工芝が敷かれた多目的グラウンドの横には100mほどの直線があるので、流しなどはそこで行っています。

クロカン後に流しを行う皆さん。不整地を走った後なので、とても走りやすく感じました

ジョグだけでなく、ペース走やスピード練習もクロカンで行っているそうです。「普段、クロカンを走っているので、トラックを走ると『かなり走りやすいです』ってみんな言いますね」と工藤監督。

ジョグやペース走だけでなく、スピード練習もクロカンコースで行えます

高校での実績なくても地道に成長

チームはほとんどが北海道出身で、全国大会に出場した経験はありませんが、走ることが大好きな選手が集まっています。高校時代に実績のなかった選手の皆さんも、このクロカンコースでコツコツと練習を積み重ねて力をつけてきました。トラックでスピード練習をするときは札幌市内の競技場を使い、雪が降る冬場は室内トラックにも行かれるそうです。

取材に伺った日は、クロカンコースを10周してから直線で流しを3本という練習でした。

舗装されていない不整地のため自然とバランスをとりますし、起伏で体幹や脚力も鍛えられている感覚がありました。確かに、ここでトレーニングをしていたら体もできてくるでしょうし、トラックやロードが走りやすく感じるだろうなと思いました(笑)。それほど足に優しくて鍛えがいのあるいいコースでした。

クロカンコースは不整地で細かい起伏もあり、自然と体全身を使ったフォームが身につきます

選手の皆さんにインタビュー!

クロカンコースをたっぷりと堪能したあとは、選手の皆さんにもお話を伺いました。

大西世那選手(4年、市立札幌啓北商業)

「中学までバレーボールをしていて、高校から陸上を始めました。高校までは400m、800m、1500mをやっていました。大学1年生の時は貧血や亜鉛欠乏症で1年間ほとんど走れず、1年生の冬に工藤監督が就任してから病院へ行くようになり、改善していって2年生になって走れるようになりました。5000mのベストは16分46秒39です。チームの魅力は一人ひとりが明るくて、練習の時は声をかけあってコミュニケーションをとっているところです。一番意識しているのは、最上級生として『ラスト1本!』とか声かけをすることです。個人では日本インカレを目標に9月に自己ベストを出したいです。全日本大学女子駅伝では襷(たすき)をみんなでつなぎたいです。強い気持ちがあるので、みんなで頑張っていけたらと思います。札幌国際大学には走るのが好きな子が来てほしいです。私も入学した時は1500mまででしたが、走るのが好きな子は大学に入ってからでも伸びるということを学びました」

7月の記録会で5000m16分46秒39をマークした大西世那選手

濱田李佳子選手(4年、青森山田)

実は、青森山田高校時代に「M高史の部活訪問」でお会いしたことがあり、4年ぶりの再会でした。

「小学3年の時に、地元の陸上クラブに入ったのがきっかけで陸上を始めました。高校できつかった時もありましたが、続けることができました。親にも支えられましたし、恩返ししたいですね。親からも『頑張れるんじゃない?』と声をかけられて、ここまで続けられたと思います。全日本大学女子駅伝は2年連続で6区を走っているので、2年生の時よりも良いタイムで走りたいです」

張育禎選手(4年)

「私は台湾出身で大学3年生の7月に来ました。日本に来て1年になります。陸上は中学から始めました。5000mのベストは17分34秒です。チームのみんなは優しいです。台湾では個人のトラック種目しかありませんでしたが、日本に来て大学で初めて駅伝を走りました。昨年の全日本大学女子駅伝は初めてでレベルの高さにびっくりすることもありました。北海道と台湾では気温が全然違います(笑)。台湾の夏は暑いですが、北海道の夏は涼しいです。冬は寒いです(笑)。雪を初めて見ました! ここにくる時、寂しいこともありましたが、陸上を始めるきっかけとなった中学時代の先生が支えてくれました。大学に入ってからも連絡をとっている大切な先生に感謝の気持ちを伝えたいです。家族にも心から感謝しています」

黒川葉月選手(4年、士別翔雲)

「中学で陸上を始めました。中学の顧問がアジアマスターズ陸上にも出場していて、エネルギーのある人でした。高校では1500m4分42秒でした。大学ではけがもありましたが、大学2〜3年で徐々に走れるようになってきました。全日本大学女子駅伝は3年生の時に3区を走りました。監督にも3区と言われているので、自分もそのつもりでいます。2番目に長い距離の区間なので、対応できるようにしていきたいです。社会人になっても好きで走っていたいです。札幌国際大学には陸上が好きで入ってきてくれればと思います。好きが一番大事です。競技が好きだったらなんでも乗り越えられると思います」

佐藤わかな選手(1年、帯広農業)

「高校時代は酪農の勉強をしていました。高校のベストは1500m4分54秒でした。大学ではスポーツの指導者になるための勉強をしています。保健体育の教員免許もとりたいです。大学では寮生活も楽しいです。目標は、まずは大学内の駅伝メンバーに入って、全国で走りたいです。チームの魅力は、それぞれ得意なところがあって、みんな伸ばしあっていていいなと思います。現状打破!」

天満谷(てんまや)心選手(1年、函館大妻)

「中学から部活には所属せず父と走っていました。高校から本格的に陸上を始めました。それまでずっとジョグしかしてなかったので、インターバルとか最初はきつかったですね(笑)。高校時代は3000m10分37秒がベストです。大学では寮生活ですが、高校の時も親元を離れていました。大学では10000mをメインに頑張りたいと思っています。また、大学4年間で日本インカレに出場するようなトップ選手たちに近づけるようになりたいです。(札幌国際大学女子駅伝部は)本当に個性豊かで面白いですし、先輩方も優しくて、面白いです。それがチームの魅力だと思います」

松本夢来(ゆら)選手(1年、函館大妻)

「小学1年生から陸上を始めて、中学、高校と陸上部でした。高校のベストは1500mが4分51秒でした。スポーツ指導学科で健康運動指導士などスポーツ系の資格を取りたいと思っています。授業もスポーツ系のことを学べて、陸上にも生かせるのがいいですね。競技の方では5000mをメインに現状打破したいです! 本州の選手と差があるので、その差を埋めて勝負していきたいです。札幌国際大学はクロカンで脚力も鍛えられますし、北海道から強くなっていけるところに注目してほしいです!」

クロカン練習に取り組む1年生の天満谷心選手(右)と松本夢来選手

また、女子駅伝部の2期生で現在は大学院でスポーツ健康指導を研究しながらチームスタッフとして携わる村雲央佳さんにもお話を伺いました。全日本大学女子駅伝にも3度出場されています。

村雲央佳さん(大学院2年)

「現在はチームのスタッフとして関わっています。引退してからはチームのことを落ち着いて見ることができますね。将来は教育の道に進みたいです。駅伝部で経験してきたことや学んできたことを関わる学生さんたちに伝えていきたいですし、何かあれば陸上にも関わりたい。札幌国際大学女子駅伝部は刺激し合える仲間がいますし、陸上以外のこともプライベートも大切にしているチームです。その中でも陸上が好きだという気持ちが感じられるのが素敵だなと思います」

女子駅伝部の2期生で大学院の村雲央佳さん。チームスタッフとして携わっています

工藤監督、選手の皆さん、村雲さんにお話を伺っている中でも「走るのが好き」「陸上が好き」という言葉がたびたび出てきたのがとても印象的でした。高校時代に目立った実績のなかった選手の皆さんが、「走ることが好き」という気持ちを大切に、じっくりコツコツと力を伸ばしてきました。

全日本大学女子駅伝で襷(たすき)をつなぎきること、さらには全国の舞台で勝負することを思い描き、北の大地で現状打破し続けます!

M高史の陸上まるかじり

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