陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

野尻湖・妙高高原・裾野……合宿地の魅力、走って体感! M高史の夏合宿リポート前編

おすすめ夏合宿スポットをご紹介!(提供・亜細亜大学女子陸上競技部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、夏合宿特集です! 夏といえば、夏合宿。都心の暑さよりも涼しい場所でじっくりトレーニングを積むことで、秋・冬シーズンにつながっていくといっても過言ではありません。

今年の夏は大学駅伝チームが拠点としている場所に、実際に伺ってリポートいたします。

直接足を運んでその土地を走ることで、「なぜ、ここで合宿をするチームが多いのか」など合宿地の魅力も発見しました! スケジュールの関係で、大学ではなく高校の合宿も含まれていますが、まずはリポートの前編をお届けします。

激しい起伏で心身ともに鍛えられる野尻湖

まずは、僕の母校・駒澤大学も毎年夏合宿で利用している長野県の野尻湖です。今回は大学ではなく、駒大高校さん(一部、群馬・健大高崎高校さんも合同)の合宿へ伺いました。

ナウマンゾウ博物館があることでも有名な野尻湖。湖の周りに1周15.3kmの周回コースがあります。1kmごとに距離表示の看板もあり、わかりやすいです。野尻湖畔ということで湖の周りは平坦(へいたん)なのかなとご想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、駒澤大学が毎年夏合宿で訪れる場所です。平坦なわけがありません(笑)。

駒大高校さんの野尻湖合宿へ。この日は健大高崎高校さんも参加されていました(提供・駒大高校陸上部)
数々の名ランナーが夏合宿で鍛えた野尻湖畔を、実際に走ってきました!

1周する間に急で長い上り坂が2カ所、それ以外は細かい起伏が続きます。実際にGPS機能付きの腕時計で1周を走ると累積標高が200m以上になります。特にスタートして500m過ぎたあたりから1kmにかけての急な上り坂は、いきなりの先制パンチです。呼吸も荒くなりますし、足にきます。

その後も上って下ってを繰り返していき、9kmにかけていったん下っていきます。9kmを過ぎて10kmに向かうあたりに急で長い上り坂があり、ここがポイントになってきます。このあたりの高低差の図を見ていると大きく下ってきて、さらにそれ以上に長く続く上り坂……。まるでナウマンゾウの鼻先から頭のてっぺんみたいだなと、多少こじつけっぽいですが(笑)。それくらい激しい高低差です。

起伏が続くコースで数多くの名選手たちが心身を鍛えてきました(提供・駒大高校陸上部)

約1kmにわたって急な上り坂が続くので、心身を鍛えるのはもちろん、上りの適正を見極めるのにも適した坂です。

この急で長い上り坂が終われば、終盤は下り基調です。ここでブレーキがかからないよう足にこないようにスムーズに下っていくのもポイントです。高校の練習では1周でしたが、大学生では基本的に2周(30.6km)。そこからプラスで35kmや40kmといったように距離を追加する選手もいます。

僕の1学年後輩で現在、都道府県駅伝の福島県チーム監督を務める安西秀幸さんは、選手として全日本大学駅伝、箱根駅伝、ニューイヤー駅伝で優勝メンバーになり、監督としても都道府県駅伝で優勝監督になりました。まさに駅伝優勝請負人のような安西さんは、大学2年生の箱根で大学駅伝デビューを果たしたものの、その時は7区区間17位と非常に悔しい結果に終わりました。

その後、大学3年生の夏合宿を完璧にこなすことができました。野尻湖で「足ができましたね」という安西さん、3年生からは駅伝主将として出雲駅伝1区区間賞(当時の区間新)、全日本大学駅伝4区では日本人トップの区間2位で首位に立ち、チームの優勝に貢献されました。

駒澤大学OB・安西秀幸さん「駅伝優勝請負人」が駆け抜けてきた道!

駒大の同級生で今年から拓殖大学のコーチを務める治郎丸健一さんも野尻湖で力をつけた選手の一人です。3年生までは箱根出走はありませんでしたが、4年生の夏合宿で覚醒。当時、実業団の富士通に所属しながら駒大を拠点に練習をされていた藤田敦史さん(現・駒澤大学陸上競技部監督)と野尻湖の激しいコースでの40km走を一緒にこなしたことが自信になり、その冬の箱根駅伝ではアンカーの10区を任されました。

35kmや40kmだけではなく、野尻湖3周(45.9km)を走破された猛者もいらっしゃいます! 僕の二つ先輩の塩川雄也さんは4年生の時に3周を走破。その年の箱根駅伝9区で塩川さんは当時の区間新記録を樹立されました。塩川さんは主将だった田中宏樹さんとともに4年連続で箱根を走って全て優勝(4連覇)を飾られた先輩です!

駒大でも秋以降に急成長をとげる選手が毎年のように登場します。その基盤となっているのが夏合宿です。特に野尻湖は鍛えがいのあるコースです。そんな野尻湖でじっくり走り込んできた駒大高校さんは、男女とも全国高校駅伝出場を目指しています。現状打破!

トラック、ロード、クロカン バリエーション豊富な妙高高原

野尻湖にほど近い新潟県の妙高高原にも伺ってきました。長野県境に位置しておりまして、起伏に富んだ場所にあります。電車で行くと「しなの鉄道北しなの線」で野尻湖の最寄りが黒姫駅、お隣が妙高高原駅です。短期間で北しなの線に何回か乗ったので、乗り換えにも慣れました(笑)。

妙高高原には陸上競技場、ロードでの周回コース、笹ヶ峰のクロスカントリーコースなどがあり、トレーニングの種類も豊富に組むことができます。プールもあるので、故障している選手が通うこともできます。

妙高高原では新潟医療福祉大学さんの合宿に伺いました。つい先日、4years.で取材させていただいた新潟医療福祉大学さん。大島めぐみコーチ、松宮隆行コーチのご指導のもと、7月の北信越地区選考会にて全日本大学女子駅伝の切符をつかみ、12年連続出場を決めました。

12年連続となる全日本大学女子駅伝出場を決めた新潟医療福祉大学さん(提供・新潟医療福祉大学陸上競技部)
新潟医療福祉大学は、資格取得も駅伝も現状打破! 元日本代表の指導で目指す全日本

伺ったときのメイン練習は妙高高原スポーツ公園にある陸上競技場での練習でした。日中は暑かったですが、午後4時ぐらいになるとだいぶ走りやすかったです。北日本インカレに出場される選手の皆さんと練習をご一緒させていただきました。

ポイント練習以外の練習では、コーチをされている松宮隆行さんとジョグもさせていただきました。現役時代には5000mで日本記録も樹立され、30kmでは世界最高記録も出されたレジェンドと走りながら陸上談義。ファン目線でワクワクしながら走っていました。

妙高高原スポーツ公園陸上競技場にて。松宮隆行コーチがペースを引っ張ります(提供・新潟医療福祉大学陸上競技部)

ジョグだけでも、競技場から宿舎まで3kmくらい上り続ける坂道があります。行きは下り坂で気持ち良くスピードが上がりますが、帰りは上り坂、しかも直射日光のダブルパンチ(笑)。暑さにも上りにも強い選手がきっとこの坂を駆け上がっていくのでしょう!

また妙高には今年、期間限定(8月5日から8月31日まで)でPUMA RUNNING HOUSE MYOKO(プーマランニングハウス妙高)がオープン。高酸素ルーム、テントサウナ、アイシング用のプールなども常備されています。僕が伺った時も実際に大学生が利用されていました。全国高校駅伝を目指す高校や大学駅伝を目指す大学チームなど、紹介があれば無料で利用できるそうです! 現状打破するためには現状回復が大切! 学生アスリートの皆さんにとって心身ともにリフレッシュできる施設はきっとうれしいですよね!

妙高に期間限定でオープンしたプーマランニングハウス妙高(撮影・M高史)

準高地でのクロカンに最適な水ケ塚公園

続いて、静岡県裾野市へ。亜細亜大学さんの須走(すばしり)合宿へ伺いました。

取材に伺った日は水ケ塚公園のクロスカントリーコースでのペース走。標高約1450mに位置し、駐車場は富士山に登られる登山客の方でにぎわいます。この日は雨が降ったり、晴れ間が見えたりと変わりやすいお天気。雲で富士山は見えませんでした(笑)。

このクロカンコースにはウッドチップが敷かれ、ほどよいアップダウンもあります。ふかふかの地面なので足に優しく、不整地と細かい起伏で体幹やバランスも鍛えられますね!

水ケ塚公園のクロカンコースを走る亜細亜大学の皆さん(提供・亜細亜大学女子陸上競技部)

コースは4種類あり、Aコースが950m、Bコースが850m、Cコースが750mとなっています。起伏が少ない1周400mのDコースもあります。

実際に亜細亜大学さんの練習に参加させていただきましたが、ペース設定以上にきつさを感じました。地道に足作りをするのに素晴らしいコースですね。標高も高いので心肺機能も強化できますし、この日は気温21度! 木々に囲まれていて涼しいです。都心からも近いので、短期合宿や日帰りで来るチームもあるそうです。

昨年、22年ぶりに全日本大学女子駅伝に出場し、2年連続で富士山女子駅伝に出場するなど、年々力をつけている亜細亜大学さん。岡田晃監督のご指導のもと、今年も個性を大切にした明るく元気なチームで、全国の舞台に挑みます。

練習後は笑顔で記念撮影! 元気・明るさもチームの魅力です(提供・亜細亜大学女子陸上競技部)
22年ぶり全日本大学女子駅伝出場の亜細亜大学! 自ら「挑戦」してつかんだ杜の都

というわけで、夏合宿リポート前半でした。後半も体を張って取材させていただきます! 現状打破!

M高史の陸上まるかじり

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