陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

新潟医療福祉大学は、資格取得も駅伝も現状打破! 元日本代表の指導で目指す全日本

新潟医療福祉大学陸上競技部女子長距離の皆さん。11年連続で全日本大学女子駅伝に出場しています(すべて提供・新潟医療福祉大学陸上競技部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、新潟医療福祉大学陸上競技部女子長距離の皆さんに取材させていただきました。新潟医療福祉大学は全日本大学女子駅伝に11年連続で出場中。北信越地区を代表するチームです。

大学名の通り、医療や福祉の勉強に力を入れている学生さんが多い大学です。

陸上競技部でも救急救命士、看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、管理栄養士、教員免許などの資格の勉強をしながら競技を続けています。授業数が多く、実習や国家試験もある中、勉強にも競技にも真剣に向き合っています。

女子中長距離の部員は16人。短距離・跳躍・投擲(とうてき)といった陸上競技部全体で男女合わせて約190人いう大所帯です!

大島めぐみコーチ、松宮隆行コーチがタッグ

女子長距離を指導されているのは大島めぐみコーチ。現役時代は2度のオリンピック代表、3度の世界陸上代表など、トラックからマラソンまでご活躍。現役引退後は東京マラソン財団スポーツレガシー事業のチャリティアンバサダーをはじめ、市民ランナーさんとの関わり、マラソン大会のゲストランナー、子どもたちへの陸上指導など幅広く活動され、2020年から新潟医療福祉大学で指導を始め、今年で就任4年目になります。

(大学女子駅伝の大会プログラムなどでは「監督」として表記されていますが、陸上競技部全体の中では女子長距離の「コーチ」という肩書きが正式なので、ここでは「コーチ」という形で書かせていただきます)

「指導で心がけているのは部員一人ひとりと向き合うことですね。例えば一つの案が全員に当てはまるわけではないので、16人いたら16通りの指導の仕方をしなければいけないです。自分が選手の時の監督、コーチ、マネージャーへのありがたみをいま感じていますね。大学の設備、環境も整っています。冬は雪が降ると大変ですが(笑)」と大島コーチ。部員の個性を大切に、丁寧にきめ細かく指導されています。

そして、アシスタントコーチには松宮隆行コーチ。北京オリンピック代表で5000mの元日本記録保持者。30kmでは世界最高記録を2度更新(当時)するなど、男子長距離界を長年牽引(けんいん)されてきました。コーチとしては就任2年目で、指導とともに新潟医療福祉大学大学院の修士課程で研究を重ねています。

「大学院では健康科学、健康スポーツ学を専攻していて、スポーツに関する指導、運動生理学などを研究しています。修士論文では高校時代にそんなに速くなかった自分がなぜオリンピックに行けたのか、自分の練習メニューを分析して何が良くて何が良くなかったのか、他の研究と比較してコーチングにどう生かすか、といった内容の論文を書いています」と松宮コーチ。まさに松宮コーチの陸上人生がたっぷり詰まった研究内容ですね!

また、松宮コーチは走力と経験を生かして、選手の走りもサポート。ポイント練習では設定タイムでペースを引っ張ります。取材に伺った日は、ちょうどポイント練習と試合に向けた調整練習だったこともありまして、練習にも参加させていただきました。

大島めぐみコーチ(右)と松宮隆行アシスタントコーチ(左)。元日本代表のお二人が指導されています

ポイント練習にも参加しました!

この日のメニューは、週末の記録会に出場されるメンバーさんが600mを2本。7月の試合を目指す清水杏夏選手(2年、昌平)が600mを5本という内容でした。600mを疾走して、200mをジョギングでつないで繰り返すというレースに向けた実践的な練習です。

ウォーミングアップを終えてスタート地点に集まり、スタート。世界の舞台を経験されてきた松宮コーチが、精密機械のように正確なタイムを刻みます。個人的には、自分が学生時代にバリバリ大活躍されていた松宮隆行さんに練習を引っ張っていただき、女子長距離・マラソンで大活躍されてきた大島めぐみさんにタイムを読んでいただけるなんて、夢のような時間でした(笑)。もちろん、選手の皆さんの走りっぷりもしっかり取材させていただきます!

松宮コーチの軽快な走りはご健在! 記録会前の皆さんもきっちりこなしていきました

記録会を控えている皆さんは600mを2本で終了。レースに備えて現状確認、現状把握といった走りでした。

600mを5本行ったのは昨年の全日本大学女子駅伝1区で区間9位と力走した清水選手。5000mの自己ベストは16分41秒30ですが、大島コーチによりますと「ロードに強く、タイム以上の強さが光る選手」とのこと。たしかに一緒に走らせていただいて、上下動の少ない走り、走りの安定感、上半身もしっかり使ったランニングフォームなどから、トラックでも条件次第では16分前半にすぐにでも届きそうな走りっぷりをされていました。

左から松宮コーチ、清水選手、M高史。現状打破!

選手の皆さんにお話を伺いました!

練習後、選手の皆さんにもお話を伺いました。授業の関係で不在だった方もいましたが、取材日にいらっしゃった方、全員分のコメントを一気にお伝えします! 専門的な資格の勉強をしている方が多いので、学科もご紹介します。

クールダウンを終えてから、選手の皆さんにお話を伺いました

佐藤晴奈選手(4年・社会福祉学科、常盤木学園)
「社会福祉士を目指しています。昨年の実習では障がい者の入所施設に伺い、コミュニケーションの大切さを感じました。後輩が多いのですが、フレンドリーに話しかけてくれるのがチームの魅力ですね。個人では3000mSCで標準記録を切って9月の日本インカレに出場したいです。チームでは全日本大学女子駅伝で昨年やっと襷(たすき)がつながったので、今年は順位やタイムを目標にしていきたいです。将来は福祉系の仕事をしながら、趣味で走っていきたいです」

二村夕希子選手(2年・健康スポーツ学科、光ヶ丘女子)
「自分のペースで競技に取り組むことができています。学業の方では保健体育の教員を目指しています。目標は全日本大学女子駅伝で選手として走ることです。5000mでは17分30秒を切りたいですね」 

神谷寧々佳選手(2年・救急救命学科、本庄第一)
「授業にはだいぶ慣れてきました。東日本大震災で救急救命士の方をテレビで見て、自分もなりたいと思ったのがきっかけです。最初は両立も大変でしたが、他の学科で勉強も頑張っている同じ学年の子がいるので励みになっています。食べることが好きで、新潟のお米を食べて、睡眠とって力をつけています! 目標は全日本大学女子駅伝で選手として走ることです。3年生になると消防実習、病院実習などがあります。将来は救急救命士として働きたいです」

清水杏夏選手(2年・健康スポーツ学科、昌平)
「大学に入ってから走る距離が伸びて、きつい面があっても、楽しく競技ができています。(学業の面では)保健体育教員の勉強をしています。競技面では全国で戦える選手になりたいです。個人では日本インカレに出場したいです。将来的には、まだ考えている途中ですが、陸上を続けたいので記録を狙っていきたいです」

田幸舞桜選手(2年・作業療法学科、長野日大)
「作業療法士を目指せて、自分の大好きな陸上を続けられるので、新潟医療福祉大学を選びました。もともと子どもが大好きで、子どもと関わる仕事がしたいと思っていました。その中でも発達障がいの子どもと関わりたいと思い、作業療法士を目指しています。勉学との両立がすごく大変な部分もありますが、楽しいです。将来は作業療法士として、発達障がいの子たちと関わる上で、子どもたちの個性を生かしていきたいです」

田中雪菜選手(2年・健康スポーツ学科、十日町)
「コーチ、アスレティックトレーナー(日本スポーツ協会公認)の資格を目指しています。勉強面も充実していますし、施設などの環境も良いです。3000mのベストは10分12秒ですが、今後は長い距離もやってみたいです。10kmやハーフマラソンにも挑戦してみたいです。将来はクラブチームで女子の長期的な指導や運営に関わりたいです」

保こなつ選手(2年・看護学科、豊川)
「助産師と看護師を目指したいと思い、ダブルライセンスの取得が可能なのも(新潟医療福祉大の)魅力的でした。実習も多いですし、3年生になると半年間は看護実習で、今年も夏に実習があります。今後の目標は、3000mでは9分台出すことです(現在のベストは10分13秒)。長い距離にも挑戦して5000mではまず17分30秒を目標にしています。勉強の方では4年生で国家試験に合格して看護師になりたいです。将来は地元の岐阜県で働きたいです」

星美月選手(2年・健康スポーツ学科、東海大山形)
「アスレティックトレーナーや健康運動指導士を目指しながら陸上もできる大学ということで入りました。高校の時から走るのは好きで、大学に入って部活に来るのがさらに楽しくなりました。『昨年よりも今年』と成長できるようにしていきたいです。将来はスポーツや体を動かすことを教えたり、心の面もサポートできたりする人になりたいです」

大久保南選手(1年・理学療法学科、聖光)
「理学療法士になりたくて、資格の勉強もでき、駅伝でも全国を目指せるので、新潟医療福祉大学を選びました。すごく充実していて、文武両道に力を入れているチームです。3000mのベストは中学の時で9分29秒です。800mは2分14秒、1500mは4分36秒です。体幹などの基礎をしっかり作って、長い距離にも挑戦していきたいです。将来的に、陸上では全国で競えるようになることが目標です。勉強では資格を取得して、競技経験を生かしてスポーツリハビリも学んでいきたいです」

佐藤梓選手(1年・健康スポーツ学科、新潟明訓)
「スポーツトレーナーになりたくて新潟医療福祉大学を選びました。800mのベストは2分18秒です。今年は体力をしっかりつけていきたいです。自分がシンスプリントで苦しんだ経験があるので、けがをしている人を少しでも減らせるようなトレーナーになりたいです」

福原陽選手(1年・健康スポーツ学科、十日町)
「大学生活は充実していますし、寮生活も楽しいです。勉強ではトレーナー資格の取得を目指しています。自己ベストは1500mが4分37秒、3000mが9分59秒です。今後の目標は1500mで4分30秒切りを目指していて、日本インカレや全日本大学女子駅伝に出場したいです。大学を卒業しても走りたいので、そのための記録を出したいです」

藤田咲良選手(1年・健康スポーツ学科、日大三島)
「体育の教師を目指せて、陸上も強いので入学しました。中学では1500mで4分41秒、高校では3000mで10分01秒がベストでした。競技面では3000mで9分台を出したいですし、5000mにもチャレンジしてしっかり走りきれるようにしたいです。将来は全国で戦える選手になりたいです」

吉原颯織選手(1年・健康栄養学科、長岡)
「管理栄養士を目指しています。高校の時に勉強での大学進学を考えていましたが、昨年の北信越大会7位でインターハイにギリギリ行けず、悔しくて大学でも陸上も頑張ろうと思って入りました。自己ベスト(現在は1500m4分33秒、3000m9分51秒)を出していきたいですし、栄養の勉強も競技に生かせるようにしていきたいです。将来的には、競技面では全国出場だけでなくしっかり戦って活躍できるようになりたいです。また、自分自身が貧血やけがで困っているときに栄養面で支えてもらったことがありがたかったので、管理栄養士の資格を取って、今度は困っている人を支えられるようになりたいです」

まさに文武両道。新潟医療福祉大学の皆さんに注目です!

それぞれの専門分野で資格取得を視野に入れながら競技にも打ち込み、まさに文武両道! 駅伝では一本の襷にチームの思いを込めて現状打破! 大島めぐみコーチ、松宮隆行コーチの元日本代表コンビの指導で、全日本大学女子駅伝の連続出場と過去最高順位更新を目指す皆さんに注目です!

M高史の陸上まるかじり

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