陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

全日本の舞台をめざす石巻専修大学! 「クロカン女王」を育てた泉田利治監督とともに

石巻専修大学女子競走部の皆さん。世界を知る泉田利治監督(後列左)のご指導のもと、全国の舞台を目指します(すべて提供・石巻専修大学)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、石巻専修大学女子競走部の皆さんを取材させていただきました。石巻専修大学女子競走部は2015年に創部し、当時7人の新入生が入部。創部半年で全日本大学女子駅伝に初出場するという快挙を成し遂げました。その後も出場を重ねて、全日本大学女子駅伝には、オープン参加の1回を含み計6回出場しています。

M高史も中学・高校時代に影響を受けた名将

仙台駅から高速バスに乗り込み、乗り換えもなく1時間半ほどで石巻専修大学に着きました。大学に向かう道中「がんばろう!石巻」という看板を目にしました。東日本大震災からもう10年以上になるんだなと思いながら、バスの中で目を閉じました。海も山も近く、自然に囲まれた広大なキャンパスに到着すると、女子競走部の泉田利治監督が温かく出迎えてくださいました。

宮城県塩釜市出身の泉田監督。仙台育英高校から大昭和製紙に進み、実業団選手として活躍しました。現役引退後は、日本ケミコン女子陸上部の監督に就任。高橋千恵美さんをはじめ、数多くの教え子を指導されてきました。

高橋千恵美さんといえば、世界クロスカントリー選手権で9度も日本代表になるなど「クロカン女王」と呼ばれました。またトラックでも世界陸上に3度出場し、1999年のセビリア大会では10000mで5位入賞。シドニー・オリンピックでは10000m日本代表で15位となりました。

陸上の指導歴は実に35年になるという泉田利治監督

私M高史も、泉田監督のご指導で高橋千恵美さんが起伏に富んだクロカンを走り込み、トラック、ロード、クロカンと幅広く活躍されているという記事に影響を受けて、中学・高校時代はクロカンや山を求めてよく走りに行きました。それから20年以上の時を経て、泉田監督に取材させていただけるとは! 当時を思い出しながらうれしい気持ちで伺いました。落語家さんなのかというくらいトークも快調に、冗談も飛ばす泉田監督。取材中も明るい雰囲気の中、気さくにお話ししてくださいました!

高校時代に実績のなかった選手の皆さんには、4年間という限りがある中で、コツコツと地道な練習を積み上げ「時間をかけて熟成させていく」ような感覚で指導をされているそうです。

「選手たちには『素直、謙虚、感謝の気持ちを持ってほしい』と思って常に指導しています。苦しさは楽しさの入り口。楽しいというのは努力が必要なんです」

グラウンドでも冗談を交えながら、リラックスできるように声をかけてくださいます

泉田監督はご自身の指導方針、選手の成長を階段にたとえました。「100段の階段を一気に上るのではなく、階段の途中に踊り場を作るイメージです。3段あって、踊り場を作って、そこで止まる。遊び心や余裕を持つことを意識しています。そうして上っていった方が、転ばずに上ることができます」

100段を一気に上った方が時間は早くても、転んでしまったら一気に落ちてしまう。踊り場があれば、進むペースは一気でなかったとしても、そこで一呼吸おいて進むこともでき、もし転んでもそこで食い止めることができるという泉田監督の教え。競技はもちろん、社会人になってからも活用できそうな考え方ですね!

「建物を建てるのにも、基礎をきちっと作るのが大事。基礎を固めること、土台作りや下積みが大事です。そして慌てないこと、素直なこと、謙虚なことが大切です」

競技の指導はもちろんのこと、他にも泉田監督の指導哲学、人としての生き方、今年で69歳という人生経験がたっぷり詰まった取材となりました。

取材を通じて、現場を大事にする職人肌。教え子への情熱が伝わってきました

皆さんの積極的な走りが光ったポイント練習

現在、女子競走部の部員は8人と少人数ですが、駅伝やインカレを見据えて、一人ひとりが目標に向かって競技に取り組んでいます。

授業の関係で週末以外はあまり集まって練習できないこともあるそうで、取材に伺った日も午前9時30分スタートで寺嶋悠葉選手(2年、九里学園)と小野寺美麗選手(1年、山形城北)。午前11時45分スタートで伊藤千尋選手(3年、柴田)と菅野愛夏選手(1年、九里学園)がポイント練習をされていました。今季の東北インカレでは伊藤千尋選手が10000mで3位。菅野愛夏選手が1500mで4位、5000mで6位入賞を果たしています。

この日は400mと200mを組み合わせたインターバルトレーニング。せっかく伺いましたので、M高史は両方のグループの練習に参加! たっぷり走らせていただきました(笑)

ポイント練習にも参加。前半は小野寺美麗選手(先頭)、寺嶋悠葉選手(2番手)とご一緒しました

泉田監督がお話しされていた設定タイムをやや上回る積極的な走り。離れそうになった選手も簡単にあきらめるのではなく、そこから粘って、大きく離れないよう設定タイムに近いタイムを刻みます。

1秒を大切にする姿勢というのは、今後の試合や駅伝でもきっと生きてきますね!

取材に伺った日は気温も高く、やや風もある中でしたが、設定タイムに挑み、きっちりと練習をこなす走りが印象的でした。

「今年の1年生が面白いので、2年後、3年後も面白いと思います」と泉田監督は選手の皆さんの走りっぷりに目を細めました。

練習を積極的に走る菅野愛夏選手(先頭)と長い距離が得意な伊藤千尋選手(2番手)

今できる環境で現状打破!

練習後、一緒にポイント練習をさせていただいた皆さんにお話を伺いました。

伊藤千尋選手(3年、柴田)
「大学に入って、1年生の時よりも力がついたのがわかります。レースで練習の成果をうまく出せるようにしたいです。5000mのベストよりも10000mで5000mの通過の方が速いんです(笑)。ハーフマラソンのベストは1時間20分22秒です。長い距離は意外と得意なのですが、5000mのタイムも出したいですね。ハーフマラソンでは卒業された先輩の千葉彩有花さんが出した記録(1時間19分59秒)を目指したいです」

OGで現在、小学校の教員をされている千葉彩有花さんは今も走り続けていて、伊藤選手も刺激を受けているそうです。

寺嶋悠葉選手(2年、九里学園)
「平日は授業によって時間帯が違うので、分かれて練習をすることが多いですが、土日はまとまって練習することができます。貧血で走れない時期もありましたが、東北インカレでは800mに出場しました。昨年も繰り返し貧血で走れないことがあったので、自己管理を徹底していきたいです。800mの方が得意なので、まずはスピードを中心に取り組んで、その後はスタミナをつけて5000mなど長い距離にも適応できるようにしたいです」

小野寺美麗選手(1年、山形城北)
「大学生活もだいぶ慣れてきました。高校は自宅から通っていましたが、大学では寮生活です。寮ではみんなでご飯を食べますし、会話もたくさんあるので楽しいです! 東北インカレには1500mと5000mで出場しましたが自己ベストには及びませんでした。中学の時に1500mで4分40秒を出してから、4年間更新できていないので、今年中に自己ベスト更新を狙います」

菅野愛夏選手(1年、九里学園)
「高校と比べて練習の本数や距離も増えてきつい部分もありますが、先日の東北インカレ5000mで自己ベストを更新する17分39秒で走れて、それはよかったなと思います。大学での寮生活は楽しいです。ちょっと寂しい時もありますが、たまに親に電話をしています。今シーズンの目標は5000mで17分00秒にどれだけ近づけられるかです」

菅野選手は目にハンディキャップがあるものの「(菅野)愛夏は(高橋)千恵美に走りが似ているから将来面白い」と泉田監督も期待している1年生です。

少人数でのポイント練習となりましたが、皆さんそれぞれの目標に向かって現状打破されていました!

皆さん素直で真面目。もっと強くなりたいという気持ちが伝わってきます。

6月に開催された東北インカレも終わり、8月の北日本インカレや全日本大学女子駅伝の選考となる9月の東北地区代表選考会を見据えています。

東北地区からは東北福祉大学が全日本大学女子駅伝に16年連続で出場中です。今年の東北地区から全日本に出場できるのは1校。5000m上位6人のシーズンベストによるアディショナル枠もありますが、こちらは予選を通過できなかった全国の大学の中から上位5校となるので熾烈(しれつ)です。

ポイント練習の後はご覧の笑顔!リラックスした表情をされていました!

東北学連選抜チームに選ばれれば個人で全日本の舞台を走ることはできますが「やはりチームで襷(たすき)をつなぎたい!」。そんな熱い思いが伝わってきました。

人数は少ないながらも、今できる環境で自らの殻を破るべく現状打破! 石巻専修大学の皆さんはひたむきに挑戦を続けます!

M高史の陸上まるかじり

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