陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

麗澤大学に新しい寮が完成! 3年生の主将・主務体制、攻めの走りで初の箱根駅伝へ

新しい寮が完成し、新スタートを切った麗澤大学を取材しました(撮影・すべて松永早弥香)

今回の「M高史の陸上まるかじり」では麗澤大学陸上競技部を取材させていただきました。麗澤大学は箱根駅伝予選会で第95回が12位(次点)、96回が11位(次点)、97回が13位と本戦出場まであと一歩とせまっていたものの、昨年は28位とまさかの結果に終わりました。

雪辱と飛躍を誓う今シーズンを前にして、2月に待望の新しい寮が完成しました! 「No attack No chance」をスローガンに掲げ、山川達也監督のご指導のもと、予選会突破、箱根本戦出場に向け走り続ける麗澤大学陸上競技部の寮へうかがってきました。なお、感染症対策を徹底した上で取材をしています。

「何か変えなきゃいけない」主将と主務は3年生

寮の案内や新チームのことを教えてくださったのは主将の今野純選手(3年、東北)と主務の大橋陸マネージャー(3年、駒大高)のおふたり。主将も主務も3年生というフレッシュなチームです。

まずは主将の今野選手。東北高校(宮城)時代、5000mのベストは15分04秒19と目立つ実績もなかったそうですが、麗澤大学で確実に力をつけ、14分27秒57までタイムも伸ばしてきました。昨年の箱根予選会でチームは28位とまさかの結果に終わり、「何か変えなきゃいけないということで、チームの中でも箱根駅伝への熱量を山川監督から評価されて主将に抜擢(ばってき)されました」と今野選手。

今野選手は上級生がいる中で主将を務める難しさを感じながらも、悲願である箱根駅伝初出場に向け、自らを鼓舞しています

3年生主将ということで、引っ張っていくのに最初は難しさも感じましたが「自分が動かなければチームも変わってこないです。自分も悔しさを忘れないように主将として意識しています」と主将として行動で示していきました。

ミーティングでは全体のディスカッションに加え、主将、主務、副将、4年生の代表者が集まって話し合いをする機会も設けています。「いいところを引き出し、直すところは直すようにしています」。細かくコミュニケーションをとりチーム運営につなげています。

また、本番に対するイメージトレーニングも大切にしています。スローガンである「No attack No Chance」のもと、練習前には集合して声に出してからスタートしていきます。「箱根駅伝をイメージして、本番に向けて練習から作っています。試合で出しきれない選手も練習から同じことをやり続けると普段と同じ姿勢で挑むことができますし、目の前のレース1本だけじゃなくてすべてが箱根予選会につながっている意識を持てます」と一つひとつの練習や試合から意識を改革。さっそくレースでの積極性や粘り強さにも現れているようです。

待望の新しい寮へ!

今年2月に新しく寮が完成し、部員全員で引っ越しを行いました。「やっぱりきれいですよね(笑)。気持ち的にも『箱根に出場する寮にしよう』と監督ともチームで話をしています。掃除は1年生だけじゃなくて麗澤は全員でやっています」と新しい寮をきれに使おうと学年関係なく清掃や整理整頓をしています。

中でもお風呂は選手の皆さんも大絶賛。「前の寮のお風呂は最大8人入ったらキツくて足も伸ばせない状況でした。今では全員入っても大丈夫なくらい広いです(笑)」。やはり練習を終えて、大人数が次々とお風呂に入るのに順番待ちしていたり、湯船でも足を伸ばせないとなかなかリラックスできないですよね!

ちなみに前回、M高史が麗澤大学さんの取材にうかがった時は、練習に参加させていただいた後に選手の皆さんとお風呂もご一緒させていただきましたので、今回のお風呂を拝見するのも楽しみにしていました(笑)。

旧寮で取材した2019年5月の記事「箱根駅伝にあと一歩!! 麗澤大を支える山川達也監督のあったかさ」
シャワーは7個から14個へ、浴槽は数倍の大きさになりました
共同スペースにはトレーニンググッズも
本来は2人1部屋ですが、コロナ対策で今は1人部屋になっています

個性を見極めてマネジメント

続いて、主務の大橋さんにお話をうかがいました。大橋さんは駒大高校(東京)の出身。個人的にも駒大高校でよく練習や合宿などご一緒しているご縁もあって、大橋さんも高校時代からよく知っていました。

高校3年生で大きな故障があり、大学入学前に手術も経験した大橋さん。大学入学後も故障に苦しみ、1度もレースに出ることなく2年生の夏合宿前からマネージャーに転向されました。

「最初はやめようとも思ったのですが、自分の中で陸上人生がいい思い出ではなかったんです。それをそのまま陸上をやめて終わってしまった時に、きっと将来後悔すると思ったんです。主務になって今までの陸上人生を変えたいと思いマネージャーに転向しました」

いろんな葛藤を乗り越えてマネージャーの道を選んだ大橋さん。高校時代から知っていることもあって、競技者ではなくてもマネージャーとしてチームを支える側にまわった大橋さんの選択、素晴らしいなと感じましたし、応援したいなと思いました。

大橋さんは一度は退部を決意しましたが、「きっと将来後悔する」と思いとどまってマネージャーとなりました

現在、男子マネージャーは大橋さん1人、女子マネージャー3人で部員42人の大所帯を支えています。

マネージャーの仕事は多岐にわたり、最近ではSNSの発信も担当します。「寮も新しくなりましたし、写真も載せて発信していきたいですね」と結果だけでなくチームの魅力が伝わるように工夫もされています。

3年生で主務ということで同級生や後輩だけでなく先輩である4年生とのコミュニケーションも必要になってきます。「元々、コミュニケーションをとるのは得意な方ではなかったのですが、個性に合わせた声かけを大切にしています。選手ひとり一人をよく観察して、この選手ならこういう声かけがいいかなと性格、個性などを見極めるようにしています」と選手に寄り添いじっくりと向き合っています。

マネージャーとして日頃から自己研鑽(けんさん)も欠かしません。「組織論やビジネス向けの本を読んでいます。チームをマネジメントしていったり、考え方を変えたり、取り組むようにしています。どういう主務が正解か分からないのですが、どういうマネージャーがこの麗澤に必要か考えてやっていきたいですね」とチームのために選手のためにという強い信念が伝わってきます。

「No attack No chance」の走りで箱根路へ

チームを指導するのは山川達也監督。麗澤大学でコーチとして7年、監督として就任6年目を迎えます。

主将の今野選手も「一人ひとりしっかり見て下さり、どんな状況でもしっかりアドバイスして下さる監督です。ただ頑張るだけではなく、抜く場面などバランスが大事と指導してくださいますね」と選手からの信頼も厚いです!

2年生の工藤選手は今シーズン、注目の選手です

3月にあった日本学生ハーフマラソンで1時間03分39秒と好走した工藤大和選手(2年、八千代松陰)をはじめ、2年生も力をつけています。また、4月の焼津みなとマラソンへは3年生3人(大澤巧使選手、今野元揮選手、鴨志田遼太郎選手)が出場し、大学対抗ペアの部で8位入賞を飾るなど、3年生も粘り強さを発揮しています。

朝練習では特別に学内のゴルフ場を走ることもでき、クロカン練習も取り入れてきました。新たにフィジカルトレーニングの先生を招いて、月に2回、じっくり動き作りにも取り組んでいます。 

また、取材にうかがったこの日、治療部屋にはトレーナーの野田頭(のたがしら)美穂さんが来寮して、選手の治療にあたっていました。野田頭さんは元実業団選手ということもあって、選手の気持ちに寄り添ったケアで麗澤大学の選手たちの走りをサポートされています。 

「途中困難最後必勝」は麗澤大学創設者である廣池千九郎さんの格言です

新しい寮が完成し、「No attach No chance」のチームスローガンのように積極的な攻めの走りで現状打破し続ける麗澤大学さんに注目ですね!

M高史の陸上まるかじり

in Additionあわせて読みたい