陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

今年もホクレンDCで実況を担当! 中学生から社会人まで、士別大会では好記録も誕生

今年もホクレン・ディスタンスチャレンジ大会ライブ配信の実況を務めさせていただきます!(写真提供・日本陸上競技連盟)

今年もホクレン・ディスタンスチャレンジ2023が開幕! 1戦・士別、2戦・深川、3戦・網走、4戦・北見、5戦・千歳にて、本州よりも涼しい北の大地・北海道で熱い熱いレースが繰り広げられます。今回の「M高史の陸上まるかじり」では士別大会をリポートさせていただきます。

今年はウェーブライトが新登場!

昨年20周年を迎え、今年で創設21年目となるホクレン・ディスタンスチャレンジ2023。

今年はウェーブライト(電子ペーサー)が導入されることになりました。導入にあたってはクラウドファンディングを実施。ファンの皆さん、引退した選手、指導者の方から現役の選手まで多くの方のご支援が集まり、5戦全てで導入が決まりました。僕も少額ですが現状打破させていただきました(笑)。設定ペースに合わせてライトが光っていくウェーブライト。選手にとって目安になるだけでなく、ペーサーの選手がペースを刻みやすく安定したペースで進むことで、選手の皆さんもよりリズムよく走りやすくなり、さらにタイム向上が狙えるというわけです。

また、走る選手だけでなく応援する側にとってもわかりやすく見やすいウェーブライト。しかも夜はきれいで幻想的です! 組にもよりますが、青が設定ペースよりも少し速い色。緑が先頭集団、赤が次の集団、白がその次の集団といったように、色によってペースが細かく分かれてピカピカと光っていきます。色や光るペースなど、各組のスタート前に選手への説明も行われました。

今大会はウェーブライト(電子ペーサー)が登場! 縁石の内側にライトが光ります(写真提供・日本陸上競技連盟)

さて、大会ライブ配信は僕にとって3年目。今年もホクレンDCディレクターの河野匡さんとご一緒させていただきました。

河野さんは現在も大塚製薬女子の監督として指導の現場にも立たれています。日本の中距離、長距離、マラソンの強化・育成に携わられ、選手の皆さんの成長も見届けてこられました。ホクレンが始まって21年ということで、河野さんに伺ったところ、創設当時に出場していた選手の皆さんは今では監督やコーチに。そして今度は選手を連れてきてホクレンにいらしているそうです。河野さんにとっては孫弟子にあたるような選手も出場されています!

陸上愛、選手への思いにあふれる河野さんのお隣で、感謝の気持ちを込めて今年も実況を務めさせていただきます。

今年も解説の河野匡さんとご一緒させていただきました!感謝です!(写真提供・日本陸上競技連盟)

ライブ配信実況の裏側、教えます

さて、ホクレン・ディスタンスチャレンジは、夏に涼しい気候の中、前半シーズンの締めくくりに記録を狙える競技会ということもあり、年を追うごとに出場したいという選手も増えています! そのため人数制限がある種目もあります。欠場者が出ると、順番待ちをしている選手が出場するケースもあります。

トータルの出場選手も多く、大会2日前にスタートリストの確定版が発表されてから、ライブ配信実況用の資料を一気に仕上げていきます。

といってもライブ配信はレース展開や流れもあるので、資料はあくまでも参考です。たくさんメモをしても実際に使うのは1割もないです(笑)。本当は選手の皆さんの情報をもっと細かくたくさんお伝えしたいところですが、そうするとレースが終わってしまうので(笑)、あくまでもレースだったり選手の皆さんの活躍、挑戦をご視聴の皆さまにお伝えする場と思い、実況させていただいてます。

とはいえ、ライブ配信の画面では映らない選手もいるので、集団から離れた選手の情報も少しはお伝えしたいところです。画面の向こうで、選手の家族や恩師も楽しみにご視聴されているというお声やメッセージをよくいただきます。

そのため、なるべく多くの選手に一言でも触れたいなぁと思っておりますが……そのあたりは毎回勉強させていただいてます!

今回の記事では、本当は全組にスポットを当てたいところですが、全部で17組ありますので、書ききれずすみません(笑)。というわけで今回は、僕が部活訪問や取材で伺った選手やチームを中心に、ライブ配信ではお伝えしきれなかった「M高史的視点」で書かせていただきます!

部活訪問でお世話になった選手を中心にリポート

女子1500mB。スタート直後から積極的な走りを見せて先頭に立ったのは、興譲館高校3年生の樋口美桜選手。今年5月に部活訪問でお世話になりました。動き作りでも体をしなやかに動かされているのが印象的です。チームの主将でもあり、チームを明るく元気に引っ張っています。中国高校総体1500mで3位となり、この夏のインターハイ出場を決めました。

女子1500mB序盤、果敢に先頭を引っ張る興譲館高校の樋口選手。トップを取ったのは関西外大・矢吹選手(6番、写真提供・興譲館高校陸上競技部)

先頭に出た後、後半は集団に吸収され、結果的には4分37秒01で8着とご本人としては悔しい走りだったそうです。(自己ベストは4分25秒93)レース後、今年就任された山下尭哉先生と他の種目も見学されて、大学生、実業団選手たちの走りを目に焼き付けていました! この思いをインターハイにぶつけてほしいですね!

今年、就任された興譲館高校の山下尭哉先生(右)と樋口美桜選手(中央、撮影・M高史)

この組では関西外国語大学の矢吹美宙選手(1年、倉吉東)が4分29秒86でトップ。自己記録が4分29秒84だったので、わずかに及びませんでしたが、大学に入ってから800m、1500mでも自己記録を更新している期待の1年生です。

4分30秒12で2位に入ったのは大東建託パートナーズの大宅楓選手。以前4years.でも取材させていただきました。学生時代までは800mを専門にしていましたが、社会人になってから3000mSCに転向。バセドウ病を乗り越えて、挑戦を続けている選手です。

日体大OGの大宅楓さん 中距離から3000mSCへ、病気を乗り越え世界への挑戦!

九電工のルーキー・木實菜月選手は昨年、東海大熊本星翔高校の部活訪問で練習ご一緒しました。木實選手のお父さんは木實淳治さん。日本選手権1500mで優勝経験があり世界クロカン日本代表などでご活躍された方です。解説の河野さんも「懐かしい!」と声をあげていました。

そして、この組には中学生も出場! 地元・北海道の登別緑陽中学3年生、宇都宮桃奈選手は自己ベストを更新し4分30秒30で3位に! 杉並区立大宮中学3年生、一兜咲子選手も前半から積極的な走りで高校生、大学生、実業団選手に果敢に挑戦されました。

女子3000mBでは城西大学の石川苺選手(1年、旭川龍谷)が自己ベスト9分26秒62で2着。旭川龍谷高校時代、部活訪問でお世話になった選手です。地元・北海道で自己ベスト更新。秋・冬の駅伝シーズンも楽しみな走り。旭川龍谷高校の阿部先生にもうれしいご報告となりました。

女子3000mAでは山形中央高校2年生の柏倉四季選手が、9分25秒35の自己ベストをマーク。東北高校総体1500m優勝、800m2位と2種目でインターハイ出場を決めており、3000mでの自己ベスト更新で距離が伸びても力を発揮。インターハイに向けて順調な仕上がりを見せました。ちなみに山形中央高校の外部コーチは以前4years.で取材させていただいた大東文化大学OBの金塚洋輔さん。選手と一緒に走って指導することもある金塚さんは、今年の東日本実業団シニア1500mで優勝し、まだまだ走りは健在ですが、柏倉選手がどんどん速くなっていくので引っ張るのが大変とお話されていました(笑)。

大東大で関東インカレ優勝の金塚洋輔さん 山形県上山市から陸上界へ恩返し!

ケニア合宿から帰国した田中希実選手がトップの走り

女子1500mAには日本記録保持者・田中希実選手(New Balance)が出場! ケニア合宿から帰国したばかりの田中選手。前半からペースメーカーの環太平洋大学・江藤咲選手(3年、大分雄城台)に果敢についていきます。400mを65秒、800mを2分12秒(いずれも手元)で通過。後半はややペースが落ちて4分12秒75でトップ。田中選手の走りに解説の河野さんはタイム以上に、走りのリズム感の良さを評価されていました。

女子1500mAで先頭を走る田中希実選手。田中選手の足元には緑色に光るウェーブライト!(写真提供・日本陸上競技連盟)

2位には4分19秒00で後藤夢選手(ユニクロ)、3位には4分19秒52で井手彩乃選手(資生堂)と続き、4位には4分21秒07で真也加ジェルーシャ有里選手(大塚製薬)が入りました。

真也加選手の父・真也加ステファンさんは現在、桜美林大学駅伝部監督。山梨学院大学時代に箱根路を沸かせましたよね! そして、母・玲世さん(旧姓・盛山さん)も世界選手権日本代表で女子マラソン9位に入られています。

以前、まだM高史として活動する前、僕はいっとき、真也加監督のご指導を受けていた時期がありました。当時まだ小学生だったのでジェルちゃんと呼んでいました。昨年のホクレンでも自己新を連発されました。今回は惜しくも届きませんでしたが、果敢に挑む姿に親戚気分でうれしくなりました(笑)。

真也加ジェルーシャ有里選手(中央)。ご指導されているのは解説の河野匡さんです(右、写真提供・日本陸上競技連盟)

創価大・織橋巧選手、早稲田大・石塚陽士選手が好記録

男子5000mCでは、出場22人のうち21人が外国人選手というインターナショナルな組に! 日本人選手では太田智樹選手(トヨタ自動車)が志願して外国人選手に果敢に挑戦されました。

スタート後、単独トップに立った太田選手。その後集団に追いつかれてからも粘りの走りを見せます。解説の河野さんが「ラスト800mくらいで先に仕掛けた方がいいですね」とお話されていたのですが、河野さんの声が聞こえていたのかと思うほど、ラスト800mで太田選手が積極果敢なスパート! ラスト100mで倉敷高校のサムエル・キバティ選手に抜かれはしたものの、太田選手は13分24秒59で自己ベストを10秒以上更新する堂々の2位に入りました。

大学生では男子5000mBで創価大学・織橋巧選手(1年、中京)がペースメーカーのイマヌエル・キプチルチル選手(SGH)に果敢についていき、13分52秒71と自己記録を更新してのトップ。「スピードのためがある動きをしていますね。競り合いに強いタイプです。相手のスピードが上がった時に合わせられて、もう1回踏み込めそうな動きがあります」と解説の河野さん。駅伝で中継所直前の競り合いにも強そうですね!

男子5000mAでは早稲田大学の石塚陽士選手(3年、早稲田実業)が13分33秒86と自己ベストを約10秒更新してトップ。関東インカレ10000m3位にも入った早稲田大学のエースが、5000mでも力を発揮しました。解説の河野さんも「以前よりも上半身、特に肩のリラックスができるようになって、腕振りが足に伝わりやすくなっていますね。上半身と下半身の連動がうまくできているように見えるので、その分、高いスピードを維持できているのかなと思います」と石塚選手のランニングフォームの変化について解説してくださいました。

出場された選手の皆様お疲れ様でした! まだホクレンで連戦という選手もいらっしゃると思いますので、実況席より応援させていただきます。ライブ配信をご視聴いただいた皆様、ありがとうございました! ライブ配信を見逃した方もアーカイブをご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください!

というわけで、今回はホクレン・ディスタンスチャレンジ2023、第1戦・士別大会のレポ記事でした!

M高史の陸上まるかじり

in Additionあわせて読みたい