陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

菅平・峰の原・白馬・阿蘇……合宿地の魅力、走って体感! M高史の合宿リポート後編

阿蘇・大観峰クロスカントリーコースで走り込む拓殖大学の皆さん(写真提供:拓殖大学陸上競技部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は夏合宿リポート後編です。前編に続いて、いろいろなチームの合宿に実際に参加いただき、体を張ってリポートします(笑)。合宿地によってはコースのバリエーションが本当にたくさんあって、全部行ききれなかったところもありますが、実際に練習で走ったコースをメインに、合宿地の魅力をご紹介します!

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夏合宿のメッカ・菅平!

夏合宿リポート後編、まず最初にご紹介するのは長野県の菅平です。菅平といえば陸上、ラグビー、サッカーなどスポーツの合宿で有名ですよね!

夏場に菅平に行けば、だいたいどこかしらの大学、高校のチームと遭遇します(笑)。今回は明治学院大学さんの合宿に参加させていただきました。

明治学院大学といえば、前回の箱根駅伝で榎本晃大選手(3年、日大三島)が関東学生連合チームで7区を走りました(当時、2年生)。第100回となる今大会では念願のチームでの初出場を目指しています。

菅平にはたくさんランニングができるコースがありますが、ロードコースではウエストランニングコースとイーストランニングコースがあります。ウエストランニングコースは3種類、6.28km、6.74km、3.91km。イーストランニングコースは片道5km、往復10kmのコースです。

今回はウエストランニングコースを走ってきました。1kmごとに表示があり、2周目以降も5kmごとにわかるようになっています。

学生時代、僕は駒澤大学でマネージャーとして菅平合宿にも帯同。当時は大八木弘明監督(現・総監督)のお隣で車に乗車してタイム計測や給水を行っていました。実際に自分の足で走ってみると、細かい起伏が続き、余裕がないとその起伏がじわじわ効いてきます。また、スタート地点の標高は1240mということもあってか、走っているとなんとなくキツさも感じます。

ウエストランニングコースで距離走をスタートする明治学院大学の皆さん(写真提供:明治学院大学陸上競技部)

今回はCチームの20km走に参加。同じペースでも菅平ではキツく感じます。序盤から余裕がなかったのですが、せっかく練習に参加させていただいているので、粘れる限り、粘りまくりました。16kmまではなんとか必死でついていたのですが、そこから離れてしまい、自分の力のなさと選手の皆さんの余裕度をまじまじと感じます。

ラスト3kmでCチームから離れてしまい、さらに時間差でスタートしたAチーム、Bチームにも追い抜かれ、必死で粘っていたところ、自転車で伴走されていたマネージャーさんから檄(げき)が! このままでは申し訳ないとラスト全力疾走で追いかけたところ、一度追い抜かれたAチーム、Bチームにギリギリで追いついて20kmを完走しました。走り終わった瞬間に手も足も痺(しび)れるような感覚があったので、やはり多少酸素の薄さもあったのかなと感じました。

選手の皆さんはそこから陣地まで走って戻って、さらに坂の上にある宿舎までダウンジョグで帰ります。こういうところもスタミナ、脚力、精神力も磨かれますね。

マネージャーさんも自転車で伴走。選手の走りを支えます(写真提供:明治学院大学陸上競技部)

ただ、僕の場合は20km走で限界を迎えてしまい、なんとかスタート地点である陣地まで辿(たど)り着いたのですが、帰り道、とぼとぼと歩いて宿舎に向かいました。

夏とはいえ、標高も高い菅平は夕方になると冷えてきます。おそらく、よほど顔色が悪かったのでしょう。道ゆく車の方が声をかけてくださいました! そして、なんと宿舎まで送っていただいたのです。息子さんのラグビーの試合で応援にいらしてたそうです。なんという優しさ! 直接、恩返しできなかったのですが、今度は僕が誰かのお役に立てることをしたり、誰かが困っている時や助けを必要としている時に、秒で飛んでいってお手伝いしようと心に誓いました!

やはり、菅平にはスポーツを愛する温かい人が集うんですね!

ロード以外でも、湿原2.1kmコース、ダボスの丘クロスカントリーコース、アテネオリンピック金メダリストの野口みずきさんが現役時代に練習されていたという野口みずきクロスカントリーコース、菅平高原スポーツランド・サニアパーク菅平の陸上競技場などトラック、ロード、クロカンもあって、たっぷり走り込むことができます!

クロカンも全天候型も! 峰の原で走り込み!

夏合宿のメッカ、菅平から少し山道を上がって行きますと峰の原に着きます。菅平で合宿をするチームは、車で移動して峰の原で練習をすることも多いです。

峰の原といえば、峰の原クロスカントリーコース。芝生コースで起伏のある2km、1.5km、1kmのコース。平坦(へいたん)な500mのコースがあります。全天候型で2kmと400mのコースもあるので、練習メニューのバリエーションも豊富に組むことができますね。

夜中に雨が降っていても、水はけがとてもよく、朝練の時には芝生も走れるんです。

峰の原クロカンコースで朝練習を行う神戸学院大学の皆さん(写真提供:神戸学院大学女子駅伝競走部)

朝6時前に到着した時には、もうたくさんのチームや選手が汗を流しています。発汗量や息づかいを見ていると、もう練習の終盤のようです。いったい何時から走っているのでしょうか!? 暑くなる前に、早朝からポイント練習を行うチームもあります。

峰の原では神戸学院大学さんの練習に参加させていただきました。神戸学院大学さんの練習では、朝練習で1kmコースの周回で集団走。午後の練習では全天候型2kmコースを使ってのスピード練習を行いました。

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峰の原クロカンの標高は最低ポイント1494m、最高ポイントが1534mとなっています。基本的には上りが続いて、最高点まで行って、後半は下りが続いて最低点まで行きます。そこを何周もしますので、メンタルも鍛えられますね!

昨年、5000m6人の合計タイムで0秒49(1人あたり0秒08)と僅(わず)かな差で全日本大学女子駅伝出場に届かなかった神戸学院大学さんですが、悔しさをバネに互いに声をかけ合いながら、練習から熱い走りをされていました!

全天候型2kmのコースでスピード練習も行いました(写真提供:神戸学院大学女子駅伝競走部)

峰の原周辺にはペンションがたくさんあり、陸上の合宿への理解や応援も本当に素晴らしいです。食事、栄養面も考えてくださるお宿もあって、ありがたいですね!

スキーだけじゃない! 白馬の魅力!

長野県内には合宿スポットがたくさんありますが、続いて、長野県の白馬村をご紹介します。

白馬! といえば、スキーのイメージがありますが、走れるコースもたくさんあります。

今回は松蔭大学さんとクラブチームのCRESTさんの合同合宿へ伺ってきました。白馬とご紹介して、いきなり恐縮ですが……白馬村との境にある小谷村の栂池(つがいけ)クロスカントリーコースを走ってきました。

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栂池クロカンのウッドチップはやや大きめ!ザクザク走れます!(写真提供:松蔭大学女子駅伝部)

栂池クロスカントリーは1.5kmと1km の2種類コースがあります。1.5kmの方は1kmコースよりも起伏があります。ウッドチップでできたコースで、通常のウッドチップよりもやや大きめなのが特徴。ザクザク走れます(笑)。ペース走などもできますし、ジョグだけでも鍛えられそうなコースです!

また、白馬村でもクロスカントリーやトレイルランニングの大会が開催されているので、走れるコースは他にもありそうです。車通りが少ないロードを利用して、周回コースや折り返しコースでロード走やスピード練習もできます。

ロードでスピード練習や距離走も行うことができます(写真提供:松蔭大学女子駅伝部)

ロードの直線や細かい起伏も利用して、松蔭大学さんCRESTさんもスピード練習や距離走も行っていました。標高は約850mほどで、そこまで高くありませんが、朝晩は涼しくて過ごしやすいです。雄大な北アルプスに囲まれて景色も最高です!

大観峰クロカン、あぴか、阿蘇が熱い!

最後にご紹介するのは熊本県の阿蘇です!ここまで長野県の合宿スポットをご紹介してきましたが、今度は一気に九州に飛びます!

火の国・熊本といえば、夏は暑いのかなと思いきや……阿蘇は山に囲まれて、朝晩はとても過ごしやすいですし、日中も空気のジメジメ感もなく、カラッとしています。

今回は拓殖大学さんの合宿に伺ってきました。拓殖大学は男子・女子とも阿蘇で合宿をしていますが、今回は箱根復活を目指す男子の合宿に参加させていただきました。内牧温泉が有名で、温泉付きの宿もたくさんあります。僕が泊まった民宿・金時さんも温泉が付いていて、練習後には汗を流し、体もリフレッシュできました!

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拓殖大学さんの阿蘇合宿に参加させていただきました(写真提供:拓殖大学陸上競技部)

阿蘇といえば、阿蘇山の大観峰クロスカントリーコース。数多くの名ランナーが駆け抜けてきたこのコース。九州出身の選手は何度も走ったことがあるのではないでしょうか?

1周するとちょうど3km。起伏もあって、コースのほとんどが芝生です。一部、砂や土の箇所もあります。そういったところも体幹や脚力強化につながりますね。

累積標高は1周3kmで約40mですが、上って下って上って下ってを繰り返し、ラスト約400mがずっと上がりますし、路面は芝生なので、数字で聞く以上にキツいコースです。坂の傾斜が急すぎないので、ペースを落とさずに攻めていけるところがこのコースの特徴でしょうか。ほどよい起伏がずっと続くので、周回を重ねるとボディブローのように効いてきます。

合宿最終日の前日。拓殖大学さんの30km走が行われました。3kmコースを10周する距離走ですが、僕にとってはキツすぎるペースなので、M高史はBチームで1周おきに3kmを5本という形で参加させていただきました。

阿蘇・大観峰の大自然をたっぷり堪能……いやぁ、キツかったです(笑)(写真提供:拓殖大学陸上競技部)

1周ずつ休みをいただいたのにもかかわらず、3本まではつけたものの、4本目で少し遅れをとってしまい、5本目は完全に撃沈してしまいました。起伏や不整地にフォームも乱れず、30kmを走りきった選手の皆さん、本当にすごいです。やはり箱根を目指す選手は全然違いますね!

Aチームではロンギサ選手が後半に1人で軽々とペースアップ。今年ケニアから日本に来たばかりのロンギサ選手。食事の席も近かったのですが、もう箸の使い方も上手でしたし、朝食では納豆もきれいに食べていました!

納豆もきれいに食べるロンギサ選手(写真提供:拓殖大学陸上競技部)

阿蘇は大観峰のクロスカントリーコース以外にも、「阿蘇農村公園あぴか」の陸上競技場、外周のランニングコース、芝生コースなどがあります。

朝練習では集団走で、あぴかのランニングコースを12kmを走って「よし、終わった!」と思ったら、そのまま宿舎まで走って帰るのでした! あぴかから宿舎まで4kmなので、トータル16km! この宿舎までの4kmが地味に効きました。朝練で現状打破した後の朝食って本当においしいですよね(笑)

ちなみに、先ほどご紹介したクロカン30kmはこの日の午後です。つまり、朝から16km走って、午後は30km走をやってということで、ウォーミングアップやクールダウンを含めると「いったい何km走るの!?」というほど、とにかく皆さん走って走って走り込みます!

10月14日の箱根駅伝予選会では阿蘇で鍛え抜いた拓殖大学さんのスタミナ、粘りに注目したいと思います。

というわけで、夏合宿リポート記事後編をお送りいたしました。この夏、心身ともに鍛え上げられた皆さん! 秋シーズンの活躍も応援しています! 現状打破!

M高史の陸上まるかじり

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