陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

0秒49差で杜の都を逃した神戸学院大学 「0.1秒の重み」を感じ、襷を富士山へ!

杜の都駅伝にはわずかに届きませんでしたが、富士山女子駅伝出場を目指す神戸学院大学の皆さん(すべて写真提供・神戸学院大学女子駅伝競走部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、神戸学院大学女子駅伝競走部のお話です。全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)は関西地区予選、アディショナル枠とも次点と、悔しい結果となりましたが、富士山女子駅伝出場に向けてスタートをきりました。

関西枠、アディショナル枠ともあと1歩届かず

杜の都駅伝に出場するのは「前回大会のシード校(8位以内)」のほか、各地区に振り分けられた各地区の代表校(今年は北海道1、東北1、関東1、東海1、関西5、中国四国1、九州1)の12校。加えて、6人の5000mシーズンベスト(4月以降の記録でエントリー日である9月30日正午まで)の合計タイムで争う「アディショナル枠」の上位6校となります。

関西からはシード校の立命館大学と大阪学院大学の2校に加えて、9月23日に行われた関西学生女子駅伝で残りの関西地区の5枠を争うことになりました。7位となった京都光華女子大学までが、杜の都駅伝に出場。神戸学院大学は次点となる8位でした。そのため、アディショナル枠での杜の都駅伝の出場を目指して、翌24日、29日と記録会に出場し、ラストチャンスに懸けました。

9月24日の記録会出場前の時点で、アディショナル枠の7番目だった神戸学院大学は、二つの記録会で6人合計約1分40秒(1人約16秒)も記録を短縮。怒濤(どとう)の追い上げを見せましたが、6番目で杜の都駅伝への出場を決めた亜細亜大学に、6人の合計で0秒49という僅差(きんさ)で及ばず。5000mの平均タイムでいうと亜細亜大学が17分03秒30、神戸学院大学が17分03秒38、なんと1人あたり0.08秒差という大接戦の末、わずかに杜の都には届きませんでした。

指導者の方々にお話を伺いました

まずは、指導されている大江秀和監督、森田陽子副監督にお話を伺いました。

丁寧できめ細かく、そして熱いご指導をされる大江秀和監督(右)と森田陽子副監督(左)

大江秀和監督
「アディショナル枠に向けて、残り2レース残していて、予選会(関西学生女子駅伝)の翌日、奈良の記録会でタイムも縮めてきました。29日の尼崎のレースで(6人合計)47秒を縮めれば大逆転できるという速報でしたが、0秒49及びませんでした。『1秒を大事に』『1秒にこだわろう』と伝えていたのですが、終わってから選手に謝りました。フィニッシュで時計を押さないとか、短距離のようにトルソーでグッと突き出すといったことまで徹底できていませんでした」

「ただ、結果論ですが、負けは負けですごく悔しいものの、考えたら選手たちはよくこの2レースで(6人合計)1分40秒以上縮めてきたと思います。指導者も含めて学ぶことができました。不調だった4年生が3年ぶりに自己ベストを出したり、ムードも良くなってきています。富士山は行くだけではなく戦えるようにしたいです。出場権は熾烈(しれつ)な争いですが、例年よりも上のレベルを想定しています」

9月29日の記録会の後は、全体練習を3日間オフにしたそうですが、ほとんどの選手がグラウンドに走りにきていたそうで、チームの雰囲気も高まっているそうです。

森田陽子副監督兼コンディショニングコーチ
柔道整復師、栄養士の資格も持ち、選手の皆さんのコンディショニングも支える森田副監督。

「連戦の疲労感もあって、大変な時期もありました。いかに疲れを抜くか、しっかり動く状況にしていくか、日頃よりも長めにケアしたり、走れる体作り、コンディショニング、疲労回復を最大のテーマに、順番にケアしてきました。毎日の日誌で疲労度などを確認して、選手全員とコミュニケーションをとっています。富士山に向けては、出場するだけでなく高い目標を掲げるようですが、8位入賞に向かって行きたいです」

森田副監督は選手20人のケアをしながら、選手とのコミュニケーションも大切にされています。

選手はどう切り替えているのでしょうか

続いて、選手の皆さんにお話を伺いました。

主将・広内来幸選手(4年、須磨学園)
「仙台へ行けず悔しかったです。主将としても雰囲気を作れず、申し訳なかったという思いが自分の中で強いですね。関西では、誰が悪かったとかではなくて、みんなが頑張ってくれた結果、今の神戸学院のチームの総合力を出した結果なので、やりきったという気持ちです。アディショナル枠に向けて、他人に任せるのではなく、自分がタイムを伸ばさないといけないと思っていました。29日のレースで今季ベスト(17分07秒)を出せていたら、17分06秒で走った選手がいて、その子に意地でもついていたら、(杜の都に)行けたのにと思うと、悔しかったです。富士山に向けて、周りの選手一人ひとりにも気を配り、コミュニケーションをとっていきたいです。どの大学よりも悔しい思いをしたので、みんなで笑顔で終われるようにしたいです!」

競技は大学までという広内選手。大学1年生以来の富士山女子駅伝出場に向けて、チームメートにも気を配りながら、ラストイヤーに懸けています。

主将の広内来幸選手。1年生以来の富士山女子駅伝出場を目指します

副将・堀綾花選手(3年、日体大柏)
「関西では1区を任せていただいて流れを作る役割でしたが、少し差が開いてしまい、他大学の強さを感じました(区間9位)。今まで1秒を大事にと思っていましたが、0秒49差ということで、0.1秒の重さを感じました。もっと成長しなければと思いますし、まずは練習でもチームを引っ張っていきたいです。今回の悔しさを、富士山ではもっと余裕を持って通過できるように、みんなで平均タイムを上げて、みんなで笑って終われるようにしたいです」

今年の関西インカレ1500mで9位に入っているスピードランナーの堀選手。5000mや駅伝の走りにも注目です。

副将・堀綾花選手(ゼッケン396)。持ち前のスピードを生かして駅伝での活躍にも期待です

古川天音選手(2年、大垣日大)
「坂が試走の時よりも本番の方がキツく感じました。チームとしては目標としていた順位と違ったのですが、みんな精いっぱい走った結果です。個人としてはよくなかったですが、初めての駅伝だったので、楽しみながら走ることができました。記録会で更新して、上がってきているので、もっとチームに貢献したいです。(富士山に向けては)一生忘れない悔しい思いをしたので、切り替えて絶対に行きたいです!」

高校時代は3000m10分19秒がベストだった古川選手。大学入学後、コツコツと力を積み上げてきました。関西予選ではアンカー6区を務め、区間7位。さらなる高みを目指します。

関西予選ではアンカーを務めた古川天音選手。コツコツ地道に力をつけてきました

桑田渚選手(1年、桜宮)
「関西予選を走ってみて他の大学のレベルの高さを知りました。関西のコースはアップダウンがありましたが、合宿でアップダウンを走ってきて準備してきました。駅伝の翌日も記録会があって、そこでも記録を更新することができました。(0.49秒差で悔しい思いをして)練習でも試合でも、0.1秒にこだわるようになりました。今後の目標は、まず個人では富士山に出るためのタイムを出すことですね。全員で富士山に行きたいです!」

高校時代は3000m10分14秒96がベストだった桑田選手。神戸学院大学入学後、着実に力をつけて、関西予選では2区で順位を三つ上げる区間7位と流れを作りました。

主将の広内選手(右)とジョグをする1年生の桑田渚選手(左)

チームを支える縁の下の力持ちたちは

さらに、選手の皆さんを支えるマネージャーさん、ランニングコーチにもお話を伺いました。

主務・臼野友実子さん(3年、田辺)
「高校まで長距離と競歩をしていましたが、大学からマネージャーになりました。練習のサポート、試合のエントリー、学校に出す書類、学連とのやりとりなどが主な仕事です。(マネージャーのやりがいは?)みんなが結果が出た時、うれしそうにしている姿を見る時ですね。富士山に向けて、自分のできることを考えて精いっぱいしていくことが大事だと思います」

マネージャー・湯元七海さん(3年、出水中央)
「大学1年までは選手で、2年生からマネージャーに転向しました。最初は、選手の時に裏ではこんなことしてくれていたんだと気づきました。たくさんやることがあって大変なときも、選手が自己ベストを出すとうれしくなります。富士山に向けて5000mの記録を出さなければいけないので、これからレースも重なると思いますが、選手のサポート、ケアをしてあげつつ、全部の大会でいいコンディションで臨めるように、自分たちも準備したいと思います」

チームを支えるマネージャーの臼野友実子さん(左)と湯元七海さん(右)

学生でランニングコーチを務めているのが、辻井冬和さん(2年、報徳学園)です。

辻井冬和ランニングコーチ
「駅伝部の練習を引っ張り、自身の練習もしていて、自分の記録も伸ばしました。ペース感覚がつかめてきて、自分の練習にも生かせてます。自分の走力向上につながっていますね。(ランニングコーチのやりがいは?)引っ張っていて手応えがあったとき、選手がベストを出したときはうれしいです。今後は、女子駅伝部は富士山、男子は関西学生駅伝でシードを目指すのが男女の目標です」

兵庫の報徳学園出身で、高校時代は5000mのタイムが14分56秒でしたが、大学ではランニングコーチをしながら14分31秒まで記録を更新。全国大学男女混合駅伝では1区を走り、普段ペースメイクをしている選手たちと襷(たすき)をつなぎました。

練習を引っ張る辻井冬和ランニングコーチ。自身の走力も高めてきました。

杜の都駅伝出場まであと一歩、いや、あと半歩のところで逃した神戸学院大学の皆さんですが、気持ちを切り替えて、富士山女子駅伝に出るだけではなく、勝負するんだという気迫が伝わってきました。富士山女子駅伝出場には、7人の5000mシーズンベスト記録が必要になります。期限は12月4日。一つひとつのレースで、0.1秒にまでこだわり、現状を打破する神戸学院大学の選手の皆さんに注目ですね!

M高史の陸上まるかじり

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