陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

大学入学後「初の駅伝」という選手も 3年ぶり開催の関東大学女子駅伝をレポート!

3年ぶり開催となった関東大学女子駅伝を取材させていただきました(すべて撮影・M高史)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、9月25日に開催された関東大学女子駅伝のお話です。

新型コロナウイルスの感染拡大により一昨年、昨年は、大会そのものが中止となり、全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)に向けては、トラックで選考会が行われました。今回は、コースが以前から一部変更になったものの、3年ぶりとなる関東大学女子駅伝。待ちわびた公道での駅伝ということで、襷(たすき)をつなぐのが久しぶり、あるいは大学に入ってから初という選手も多い中、熱いレースが繰り広げられました。

今年はシード校を除き、関東から1枠

杜の都駅伝の出場に関するルールも変更となりました。昨年の杜の都で8位以内に入り、すでにシード権を獲得しているのが大東文化大学、拓殖大学、日本体育大学、城西大学の4校。今年は関東地区の枠が残り1枠で、さらに全国から5000m上位6人の記録(今年4月から9月30日正午までのシーズンベスト)で6校が選ばれるというものになりました。

関東大学女子駅伝の会場となったのは、千葉県印西市千葉ニュータウン周回コース。全6区間34.4kmで行われました。

1区4.3km

2区3.0km

3区8.6km

4区5.6km

5区7.3km

6区5.6km

ロードや起伏の適性、単独走でどれだけ走れるかといった、トラックの持ちタイムだけではわからない部分もあるため、各大学の監督さんによりますと、杜の都駅伝に向けて、長距離区間の適性や駅伝初出場の選手の力試しをするような区間配置が見受けられました。

杜の都駅伝や富士山女子駅伝出場経験のある選手以外は、大学に入って初めて襷をつなぐという選手も。中には、高校時代もコロナ禍の影響でトラック開催だった選手もいました。やはり、駅伝で襷をつなぐというのは特別な思いがありますよね!

M高史は4years.の報道で伺ってきました!

主催者、関係者の皆様のご尽力や地元の皆様のご協力で、開催に向けて準備している中、台風も接近して、どうなることかと心配されましたが、選手・関係者の皆さんの気持ちが届いたのか、台風も過ぎて良いお天気に! 日差しも強くて、会場にいるだけで(僕は走っていないのに)汗ばむくらいの気候でした。ここ数日、涼しいくらいだったのが、急に気温が上がったこともあり、結果的には選手の皆さんにとってやや厳しいコンディションで幕を開けました。

日体大が優勝、2位には不破選手を温存した拓大

レースは日本体育大学が1区・尾方唯莉選手(2年、東海大熊本星翔)、2区・赤堀かりん選手(4年、浜松市立)の連続区間賞でトップに立ちますが、今度は城西大学が3区・高橋葵選手(1年、日体大柏)、4区・伊藤柚葉選手(3年、新潟明訓)の連続区間賞で逆転し、差を広げます。ところが5区で、城西大が脱水症状により途中棄権となるアクシデント。日体大が5区・嶋田桃子選手(2年、九州国際大付)で区間賞を獲得し、6区・保坂晴子選手(3年、錦城学園)が逃げ切り、1時間55分03秒で優勝を飾りました。

日体大の佐藤洋平駅伝監督は、「課題が多く、駅伝の難しさを感じました。練習はできているので、課題を修正して全日本に臨みたいです。トラックで記録は出せているので、駅伝で力を発揮する駅伝力ですね」とレース後は優勝の喜びに浸ることなく、すでに杜の都に目を向けていらっしゃいました。

優勝した日本体育大学。1区・尾方選手、2区・赤堀選手の区間賞リレー

日体大と30秒差で2位となったのは拓殖大学は、日本インカレの10000mで故障からの復活となる優勝を飾った大エース・不破聖衣来選手(2年、健大高崎)を温存。レース前に、五十嵐利治監督は「長距離区間と駅伝初出場の選手の走りをみたいですね」とお話しされていました。

五十嵐監督の期待に応えるかのように、長距離区間では3区・牛佳慧選手(4年、浜松開誠館)が区間4位、5区・新井沙希選手(1年、秦野)も区間4位でつなぎ、アンカーの6区・片桐紫音選手(2年、川口市立)が区間2位の走りを見せ、2位でフィニッシュ。「エースに頼らない走り」で粘り強く襷をつなぎ、大学駅伝初出場メンバーが力を発揮。杜の都に弾みをつけました。杜の都で満を持して不破選手が登場すれば、仙台に再びオレンジの旋風が吹くことでしょう!

大エースの不破選手を温存しながら2位となった拓殖大学。杜の都でも注目です!

3位は大東文化大学。アンカー6区で区間賞を獲得したのは山賀瑞穂選手(4年、埼玉栄)です。ワールドユニバーシティゲームズ日本代表に決まっていたものの、大会が延期に。この夏はやや調整が遅れていたところもあったそうですが、富士山女子駅伝で上り坂区間の7区を駆け上ってきた山賀選手の強さが光った走りとなりました。

今大会で外園隆監督は、「1年生を起用して、どこまで成長しているか確認しました」。杜の都や富士山を含めて、大学女子駅伝で全国2位に何度も位置してきたライトグリーンの襷に注目です。

大東大はアンカー6区で区間賞を獲得した山賀瑞穂選手を中心に、杜の都に挑みます

関東1枠を決めたのは中大!

シード校以外の争いを制したのは、中央大学でした。4位で関東の1枠を勝ち取り、杜の都駅伝出場を決めました。

2019年から、母校の中央大学で指導をされている鈴木智香子駅伝監督にお話を伺いました。「今年はルールも変わり、関東枠が1枠となり、かなりプレッシャーもありましたが、強気で取りにいきました。学生はみんなよく頑張ってくれました。3年目の挑戦、学生一人ひとりの成長の兆しも見えてきているので、杜の都駅伝では、今年最大目標のシード権をしっかり狙って、チャレンジしたいと思います」。直前に予定していた選手変更もあったそうですが、全員駅伝で乗り越えました。

4区まで4位につけ、5区・浜野光選手(1年、本庄一)が区間2位の走りで三つ順位を上げ、2位まで浮上。浜野光選手の父・浜野健さん(現・デンソー陸上部コーチ)はマラソンや駅伝で活躍されました。浜野光選手の軸が安定して体幹がブレない走りは、まさに父・健さんの現役時代を彷彿(ほうふつ)とさせる走りで、とても印象的でした!

5区区間2位の走りで2位まで押し上げた中央大の浜野光選手。父は元マラソン選手の浜野健さん

1区を務めた南日向選手(1年、順天)は船橋葛飾中学時代に、全中で1500m2位、都道府県女子駅伝3区で区間タイ記録をマークするなど、中学時代から全国区で活躍しています。高校時代は故障に苦しんだ時期もあったそうですが、大学入学後は今年の日本学生個人選手権1500m8位入賞など、トラックでも力を発揮されていて、駅伝でも注目です!

杜の都へ向けて、注目チームをご紹介

関東の1枠には入れませんでしたが、5000m6人の記録から杜の都駅伝出場が濃厚なチームにもお話を伺いました。

5位、東洋大学

シード校以外では中大に次ぐ順位に永井聡監督は「思ったより収穫がありました。エース3人が不在の中で、特に1区、2区で出だしが良かったです」。2区を走った渋谷菜絵選手(1年)は駒大高校出身。僕もよく駒大高校の練習に伺っていたので、渋谷選手の高校時代3年間、よく練習をご一緒させていただきました。当時から本番に強く、とても集中力のある選手でした。この日も大学駅伝デビュー戦で2区区間3位でチームの順位を押し上げる走り。杜の都に向けて、鉄紺は女子も熱いです!

東洋大学の1区・杉本選手から、2区・渋谷選手への襷リレー

7位、東京農業大学

長田千治監督は「スタートからつまずきましたが、まずは駅伝ができたのでいい経験ができました。初駅伝で緊張する選手もいましたね。全日本に向けて作り直しです」。杜の都駅伝の常連だった東京農業大学も一昨年、昨年と不出場。今シーズン、ホクレンディスタンスで好走した幸田萌選手(2年、東農大三から埼玉医科大グループ)、今回3区を走った川田愛佳選手(3年、東海大山形)を中心に、3年ぶりに仙台で松葉緑の襷をつなぎます!

「初駅伝で緊張した選手もいた」という東農大

9位、順天堂大学

レース後、鯉川なつえ監督は「(駅伝の)流れがなかったですね。計算通りにいかなかったです。杜の都に向けてコンディションを整えていきたいです」とお話しされました。

日本インカレ1500m優勝の小野汐音選手(4年、八千代松陰)、今回4区2位の走りで順位を上げ日本インカレ1500mで5位に入った小暮真緒選手(2年、所沢西)を中心に、杜の都では順天堂大学の「駅伝の流れ」に注目ですね!

順天堂大の1区・小野選手から2区・境選手への襷リレー

現在、5000m6人の記録で6校目による出場をかけて、関東地区の亜細亜大学と関西地区の神戸学院大学が競い合っているところです。見えない相手との記録勝負ということで、さまざまなプレッシャーもあると思いますが、悔いなく現状打破してほしいですね!

記録は今年4月1日以降で、9月30日正午までが対象ということで、29日に開催される記録会の行方も気になります。

というわけで、今回は杜の都駅伝に向けて熱戦が繰り広げられた関東大学女子駅伝のお話でした。10月30日の全日本大学女子駅伝、12月30日の富士山女子駅伝に向けて、男子の学生3大駅伝とともに大学女子駅伝にも注目ですね!

10位の亜細亜大3区は金井選手。昨年の富士山女子駅伝に続いて、杜の都駅伝出場なるか、注目です!

M高史の陸上まるかじり

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