陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

22年ぶり全日本大学女子駅伝出場の亜細亜大学! 自ら「挑戦」してつかんだ杜の都 

22年ぶり8回目の全日本大学女子駅伝出場を決めた亜細亜大学女子陸上競技部。前列左が岡田晃監督(2枚目を除いてすべて写真提供・亜細亜大学女子陸上競技部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は、10月30日にある全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)に、22年ぶり8回目の出場を決めた亜細亜大学女子陸上競技部のお話です。

22年ぶりということで、前回出場したのは現4年生が生まれた年! 当時は短大の陸上部として出場し、全日本大学女子駅伝では6位という最高成績を残しています。2001年に休部となり、2018年から4年制の大学として新体制でリスタートを切りました。

22年前は、まだ大阪での開催だったため、杜の都・仙台での開催となってからは初めての出場となります。昨年末の富士山女子駅伝初出場に続いて、杜の都駅伝出場を決めた亜細亜大学の皆さんを取材しました。

1人あたりわずか0.08秒差と大激戦

杜の都駅伝に出場するためには「前回大会のシード校(8位以内)」のほか、各地区に振り分けられた各地区の代表校(今年は北海道1、東北1、関東1、東海1、関西5、中国四国1、九州1)の12校に加えて、6人の5000mシーズンベスト(4月以降の記録でエントリー前日まで)の合計タイム上位6校が出場できます。

各地区の予選で選ばれなかった大学は、このアディショナル枠となる上位6校の座をかけて、熾烈(しれつ)な出場権争いとなりました。

それまで6番目につけていた亜細亜大学と、7番目につけていた神戸学院大学が僅差(きんさ)の争いに。エントリー前日に、それぞれ関東と関西で行われた別々の記録会に出場。神戸学院大が一気にタイムを縮める激走を見せますが、亜細亜大もさらに記録を縮めて、終わってみれば6人合計のタイムで0秒49差!(6位の亜細亜大が1時間42分19秒81、7位の神戸学院大が1時間42分20秒30)1人あたりわずか0.08秒差という、まるで短距離種目のような大接戦の末、亜細亜大学が杜の都出場を決めました。

指導しているのは岡田晃監督です。自身も亜細亜大学OBで、学生時代は箱根駅伝総合優勝や主将も経験。実業団を経て、母校の男子部コーチに戻ってきた後、2018年から女子陸上競技部の監督として指導し、今年で5年目になります。

就任4年目だった昨年は、まず富士山女子駅伝出場を掲げ、見事に初出場を決めました。

「今年は杜の都と富士山の両方に出場することを目標に、新チームになってから取り組んできました。富士山が終わってから順風満帆ではありませんでしたが、関東インカレでは(就任以降)一番多くの種目で一番多くの人数を出すことができました」

4学年がそろった昨年の富士山女子駅伝に初出場(撮影・M高史)

「自分たちで出場権をつかみ取りにいこう!」

夏合宿を経て、9月の日体大記録会をメインの目標にしていましたが、夏に体調不良者が出たことや記録会当日が高温多湿だったこともあり、思うような結果が残せませんでした。24日の関東大学女子駅伝では、シード校も含めて10位でした。

駅伝の後、チームのミーティングで「亜細亜大学はまだまだ力があるチームではない。だからこそただ結果を待っているだけではなく(記録会に出て)挑戦していこう。自分達で出場権をつかみ取りにいこう!」と岡田監督は選手に伝えたそうです。さらに「大会の前の過ごし方、フリーの時の行動、もっともっと改善の余地があったし、そこを正していけば、みんなには伸びしろがあるから、まだ杜の都に手の届く位置にあるから頑張ろう」と岡田監督は選手を鼓舞しました。

急きょ出場した9月29日の筑波大学競技会は、杜の都エントリー期限の前日。杜の都出場権をかけたラストチャンスとなりました。

チームの仲の良さも亜細亜大学女子陸上競技部の魅力です

菅谷茉生選手(2年、常葉大菊川)が5000mでシーズンベストを約3秒更新する17分03秒56をマーク。同日に関西学連記録会に出場し、上位6人合計で約46秒縮めた神戸学院大の猛追をわずかに振り切って、杜の都出場権を決めました。

「菅谷が頑張ってくれたのはもちろんですが、金井(美凪海)と高橋(朱穂)がいいペースを刻んでくれましたし、他のメンバーも駅伝の疲れが残っている状態で最後の最後まで諦めない姿勢もあったので、みんなの力で最後のチャンスをつかめたと思います。関東の駅伝を経験してから、もっとやらなきゃ行けない、あとひと頑張りすれば杜の都に出られるというスイッチが入り始めたと思います」

「走った6人もサポートに回ったメンバーも、みんなが同じ方向を向いていました。今回出場できたのは指導者云々じゃなくて、学生が最後の最後まで諦めなかった結果が出場につながったと思いますし、選手が本当に頑張ってくれた結果です。杜の都では思い切って選手を走らせてあげたいと思います」と岡田監督は謙虚に意気込みをお話されました。

見ている人を感動させられる走りを!

選手の皆さんにもお話を伺いました。

金井美凪海(みなも)選手(3年、錦城学園)

「(亜細亜大にとって22年ぶりの全日本ということで)生まれる前のことなので、どんな感じだったか想像できないですが、(当時の亜細亜大が)強かったと思うので少しでも近づけるようにしたいですね。(杜の都では)25チーム中、一番下かもしれないですが、一つでも順位を上げられたらと思います。駅伝では1人で走るときが多いので、1人でもペースを作って安定した走りができるようにしたいですね」と意気込みを教えていただきました。

金井選手から見た亜細亜大学女子陸上競技部の魅力は?

「チームの雰囲気は明るいですね。寮ではみんなわいわい、にぎやかです(笑)」。なんだか楽しそうですね! 金井選手の趣味は、漫画を読むことで、競技に集中しながらもオフはリラックスして過ごしているのが伝わってきますね。

9月の関東大学女子駅伝では最長区間の3区を走った金井選手

高橋朱穂選手(2年、本庄第一)

「富士山女子駅伝を経験して、全国のすごさを実感しました。普段はけがをしないように、なるべく芝生で走るようにしています。杜の都では自分らしく、スピードがない分、淡々と走れたらと思います。ロードの方が好きなので。今後は人を感動させるような走りをしたいです。テレビで出雲駅伝を見ていても、人をこんなに感動させるスポーツってなかなかないなと思いました。見ている人に『頑張ろう』と思ってもらえたらうれしいですね」と心を揺さぶる走りを目指しています。

高橋選手のリラックス方法は?

「好きなのは、基本食べることです(笑)。あとはドラマ、映画などいろいろなジャンルのものを見ますね」。うまく気分転換できているんですね!

ロードの方が好きという高橋選手。関東大学女子駅伝では5区で区間5位の走り

救われた「走るのが全てじゃない」

続いて、選手をサポートする主将、主務にも伺いました。

平松琴美主将は選手として走ってきましたが、病気もあって、7月から選手をサポートする側に回っています。

平松琴美主将(4年、豊川工)

「キャプテンとして、走りで引っ張りたかったのですが、サポートでどうやって引っ張っていくかと思っていたところ、監督からの『走るのが全てじゃないよ。行動でも言葉でも引っ張れることがあるから』という言葉に救われました。寮でも積極的に、みんなが過ごしやすいように動けるように、特に他学年とのコミュニケーション大事にしています」

たとえば、ポイント練習ができなくて落ち込んでいる選手がいても「でも今日の走りはあそこが良かったよ」と気づいて声をかけるようにしているそうです。

練習中の声かけはもちろん、寮での生活、体調管理、サポートなど、主将でもありながらも寮長のような働きぶりで選手を支えています。

選手をサポートし、チームを支える平松キャプテン

白椛みずき主務(4年、不来方)

「(杜の都出場が決まる前)ミーティングで『このままじゃまずい、最後まで諦めない』という空気になり、選手の変化を感じました。『よしやるぞ!』といい意味での緊張感が出てきましたし、声に出す選手もいれば、内に秘めている選手もいました。出場が決まって、うれしかったですね」と白椛さん。マネージャーのお仕事は大会エントリー、宿泊の手配、メディア対応など多岐にわたります。

「大学のマネージャーは、部全体を見たときに俯瞰的に見られるかどうか、周りを見る力が養えますね。そういうチームが成果を出すと思います。スタッフも一緒に大会の緊張感を味わいます。レース前、選手を送り出したら、もう頑張ってくれるしかないです(笑)。いい緊張感で、そういった意味での面白さ、やりがいがありますね」

選手を支えるマネージャーの皆さん。左から1年生の塩川菜穂さん、主務の白椛みずきさん、2年生の小野木日和さん

選手の皆さんはもちろん、選手を支える主将やマネージャーの皆さんが心強く支えてくれるからこそ、チーム一丸となって現状打破できるんですね!

22年ぶりの全日本大学女子駅伝、仙台開催の大会としては初となる杜の都へ! 亜細亜大学の襷(たすき)リレーに注目です!

M高史の陸上まるかじり

in Additionあわせて読みたい